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Legend , named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 7 Decide (4/4)

 サチの途切れがちな声に和也は
 「自分が何なのか……だと……馬鹿な、そんな者が……」
 と言いつつ、不意にその顔を強ばらせる。
 「自分が何か……だと?」
 自分の発した言葉であるにも関わらず、和也は呆然として暫し立ち尽くす。
 「俺は……何だ?」
 口にしてから、和也は大きくかぶりを振る。
 「十三号、お前だ……お前がいなければ……」
 和也は再度倒れ込んだままのサチを睨み据えたまま、その腕を伸ばす。すると、そこには
 「物質生成?」
 ゆかりやひずるを始めとした非戦闘員の集団を背後にして改造人間達の襲来に対応するマリ、そしてナタクが思わず呻いた。
 和也の伸ばした右腕、そこには……。
 「スクリーマーですって!?いま見ただけで複製したというの?」
 マリが呻いたとおり、彼女の愛銃スクリーマーと同型の大型ハンドガンが形成されていた。
 「お前が何かなど……消えてしまえば、何も考えなくて済む……」
 スクリーマーでの全力斉射の際、マリが見せるのと同様の電流火花が和也の周囲に生じ、蒼い火花が周囲の空間を焦がす。
 その様を、サチはぼんやりとした目で見つめるのみ。口元には微笑みすら浮かんでいる。
 「ダメ!避けて!」
 和也がレールガンモードに移行したスクリーマーの複製を構える姿、それを抵抗せず受け入れているサチの姿、二人の姿を見て、マリが悲痛な声を上げる。
 「十三号!……サチ!動いて!!」
 悲鳴と言ってもいい叫び声を上げるマリが、とうとう堪えきれずに自身のスクリーマーの銃口を和也に向け、二人のいる方向へ一歩踏み出したその瞬間、彼女にしては珍しく隙が生じ、同時にゆかりやひずるに対しての注意が逸れてしまった。
 「しまった!?」
 マリが声をあげたその時には、スクリーマーを持つ彼女の手は先ほど倒した白い改造人間、イカを思わせる姿の改造人間の触手によって打たれ、その大型ハンドガンを取り落としてしまっていた。スクリーマーをマリから奪い取ったその触手は、さらにマリの体をも取り巻き締めあげる。
 「くっ!?」
 マリの自由が奪われたその瞬間、狙い澄ましたように立ち上る水柱。
 その水柱から声とともに姿を現したのは……。
 「ラッキー!」
 青き姿と巨大な口、背中には鋭角なヒレを持つ改造人間。恐らくはサメを模した姿の改造人間だった。
 そして、そのサメ型改造人間は位置的にマリとゆかり達を間に挟む場所に降り立った。
 「おい、クラーケン!ゼロをしっかり押さえていろよ。くっくっ……十三号も動けない。ナタクは他方面の迎撃で身動きとれず……やりたい放題じゃねえかよ。このゴルゴナ様の、な。」
 ゴルゴナと名乗ったそのサメ型の改造人間は、言いつつ、鋭い眼光でゆかり達をねめあげる。
 「さあ、乙女の生け贄とやらで幕をあけようか?」
 ゲラゲラと大声をあげて笑うゴルゴナ。
 その哄笑と対象となったゆかりとひずるは……。
 互いが互いをかばい合うかのように抱き合いつつ……それでも二人の目は、しっかりとサメ型の改造人間ゴルゴナを睨み据えていた。
 「ほう。」その様にゴルゴナは感心したように笑う。「この場において、悲鳴一つあげないとはな。二人揃ってなかなか肝が据わっているじゃないか。気にいったぜ。最初の生け贄としては……な。」
 言いつつ腕を振り上げたその時
 「ひずる!ゆかり!……やめろー!!」
 マリの悲鳴が
 そして……
 「サチ……」
 小さく漏れたゆかりの声が――
 サチの耳に届いた。
 その瞬間、和也の手にしたスクリーマーが火を噴き、レールガン効果によって加速された弾丸がサチの倒れ込んだ壁を破壊した。
 が……。
 サチの姿そのものは、腕を振り上げたゴルゴナの眼前にあった。
 蒼いセカンドスキンを纏った状態で。
 「何だ!?」
 ゴルゴナは事態の変化が理解出来ない。何が起こったのか、全く認識できなかったのだ。それも当然で、おそらくではあるが、いまこの場で何が起こったのか認識しているのは、マリと和也だけだろう。
 加速状態のサチを認識できる二人だけ。
 マリとゆかりの声を耳にしたサチは、ほとんど無意識といって良い状態ながら加速状態に突入。さらにそこからケルビム達の言うところのファントムドライブ、物体すり抜けで、マリや敵改造人間、ゆかりやひずるすらも通り抜け、ゴルゴナの眼前に達したところで、一気に変身……セカンドスキンを加速状態の中で生成したのだった。
 「ゆかりさん、ひずるさん、二人とも伏せて!」
 叫びつつサチは、振り下ろされたゴルゴナの腕を取るや、そこから一気に一本背負いの体勢に。
 「馬鹿な!体格差が!」
 ゴルゴナが呻くが、サチはお構いなしに、彼女からみれば巨体といっていいその青い体を宙に舞わせる。
 サチとゴルゴナの体が離れたと思えたその瞬間、サチの体がまたしても皆の視界から消えた。
 次いで虚空に響き渡るサチの叫び声。


 「アタック!」


 衝撃波が周囲の気流を激しく変化させ、サチの言うがままに床に伏せたゆかりとひずるの髪を揺らす。
 叫び声とともに再び空中に出現したサチは、飛び蹴りの体勢。
 再度の加速状態から、一気に飛び蹴りと衝撃波をゴルゴナの巨体に見舞っていた。
 たまらず吹き飛ぶゴルゴナ。
 その方向には、クラーケンと呼ばれた改造人間に束縛されたマリがいた。
 「うぉぉ!」
 状況の変化を察知するや、マリは触手に縛られたままクラーケンを引きずりつつ前進。
 「な、何だ!?このパワーは?」
 クラーケンの戸惑いと呻き声などお構いなしに、その白い巨体を引きずったまま、マリはジャンプ。そのジャンプのさなかにも、彼女の周囲には青い電流火花が飛び散った。
 「ぎゃっ!?」
 突如として発生した高圧電流にクラーケンはたまらずその触手を離し、空中で解放された形になったマリはそのままゴルゴナに向けて飛び蹴りの体勢。


 「ライトニング!」


 マリ渾身の蹴りが数億ボルトの超高圧電流を伴ってゴルゴナにヒット。
 空中でひときわ激しい火花が飛び散り、ゴルゴナはその青い体から火花を散らせつつ、元来た海の方向へと吹き飛んで行った。その間にも、サチは三度目の加速状態に突入。加速したままでクラーケンに突進し


 「スラッシュ!」


 恐らくは技を受けた側にすら認識されることなく発動した高周波の蹴りは、触手ごとクラーケンの白い体を寸断。悲鳴も呻き声も上げることなく、クラーケンはその場に倒れ、後には分解酵素によって崩れていくその骸のみ。
 ほぼ一瞬にして二体の改造人間を倒したサチとマリは、一瞬のみ互いに視線を交わし、次いで二人揃っていまはキングと名乗る立花和也を見た。
 「立花君……」
 「十三号、この俺に殺されたいのではなかったか?」
 サチが口を開くのに、和也は冷たく言い放つ。
 「色々言っても、生に執着するか?」
 その問いに、サチは首を振る。
 「立花君、ごめんなさい……」
 果たして何度目か?サチの口からついて出た謝罪に、再び和也の顔はゆがむ。
 「殺されたかったのは本当……でも、いまじゃないみたい……」
 「十三号、あんた、何を……」
 言っているのか?そのマリの問いを、サチは微笑みつつ、手で制した。
 「いま立花君に殺されたら、ゆかりさんやひずるさん、母さんや清崎さん、監督やハルミさん……皆が危険な目にあってしまう……だから……」
 ここでサチはいったん言葉を区切り、下を向く。
 そして、再び顔をあげたサチの口元はキッと締まり、その瞳には強い意志の光が宿っていた。
 「ケルビムも、村上さくらも、パールバディも……改造人間全てをこの世から消し去ることにする。」
 「それは、俺に対しての宣戦布告のつもりか?」
 対して和也も一歩も引く様子を見せずに問うが、サチはそれに対しては首を振る。
 「違うの……わたしも消えるから……」
 意を汲みかね、首をひねる和也。
 「全てを消し去った後、わたしも消えるの……立花君、最後まで勝手でごめんね……」
 「十三号、お前が何を言っているのか、分からない……」
 「立花君……」
 困惑する立花和也に構わず、言葉を続けるサチ。隣に立つマリも和也同様、困惑したままサチを見つめることしかできない。
 「全ての改造人間を消し去った後……わたしは立花君に殺されるの……」
 和也も、そしてマリやゆかり、ひずるが驚く中、サチは寂しげに微笑んだ。
 「本当……勝手なことばかり言ってごめんなさい……でも、それで全て終わりだから……」
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