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Legend , named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 7 Decide (2/4)

 「立花君、どうして?」
 震える声で問うサチに和也は答える。顔色ひとつ変えることなく
 「どうして?必要ないからだ。人でなくなった者にどうして人の名が必要だというのだ?人の名に拘るお前の存在の方が、この俺には理解できんぞ、十三号。」
 「そういう言い方はないんじゃないかな?」
 サチと和也のやりとりに割り込む声。
 「わたし、これでも結構気に入っているのよ、光明寺マリって名前。」
 そこにはすでにセカンドスキンを纏ったマリの姿。
 「ゼロか?」
 「マリ?」
 サチと和也の声が交錯する中、姿を見せたマリ。既に愛銃であるスクリーマーと可変装備であるカルケオンがアタッチメントにセットしている。
 「ほう、臨戦態勢だな、ゼロ。」
 彼女の装備に着目した和也が、以前の彼ならば浮かべなかったであろう凄みを利かせた笑みを浮かべるのに対し、マリの表情は固い。
 「メレンゲがやたらとわたしを起こそうとするから、何事かと思ったんだけどね……まさか、いきなり直々に出張ってくるとは思わなかったわ。」
 「自ら戦地に赴く、そうしたキングがいても悪くはあるまい。」
 「血気盛んなことで……」和也に応じつつ、マリの視線はサチとナタクに。「それはそうと、あんた達はどうして?まさか、デートというわけじゃないでしょうに。」
 「違うわよ!」とサチ。「わたしは寝付けなかったから……ナタクは……ここで詩の制作。」
 途端に、ナタクの表情が歪む。暗に「余計な事を……」と表情が語っていた。
 「詩?ナタクが、詩?」
 応じず顔をそむけるナタクであるが・・・
 「詩って、文章の詩?」
 マリはお構いなし。
 「そうだ。というより、何故十三号と同じ反応を……」
 重ねられた問いに対し、さすがにナタクが苦々しく答えるのに、さらにマリが首を傾げ
 「ポエム?」
 と問うと
 「だから、不思議そうな顔をするな!お前達、二人揃って、どうしてそう失礼なんだ。」
 ナタクはたまらず声を荒げる。
 もっとも、そうした言い合いを演じつつも、マリもナタクも和也からは目を離さない。サチに至っては、マリに一言二言返してからは、マリとナタクのやりとりにも耳を貸さず、じっと和也を見つめているだけ。
 「十三号、ゼロ、ナタク……役者は揃ったようだが、一応聞いておこう。ここにいる“長”を含めた古い“人間”達と心中するか?それとも、俺の軍門に下り、新世界に旅立つか?いま、ここで選ばせてやろう。」
 「それは、随分と乱暴な勧誘だな。」とはナタク。
 「お前達三人には、ケルビムも多大な関心を寄せている。ことに、十三号、お前に対してな。」
 「わたし……?」とサチ。
 「そうだ。」と和也は大きく頷く。「どうだ、十三号、俺と一緒に来ないか?」
 「立花君と……」
 「そうだ。お前は俺とあることを望んでいるのだろう?だから、その身が限界に達するまで、ネオやパールバディを追い続けていた。いま、その望みを叶えてやろうというのだ。」
 「立花君と一緒に……」口にしつつも、サチは視線を和也から逸らした。そして、その視線は和也のいる方向とは反対側の舷側に。「でも……ダメ。いまの立花君にはついて行けない。」
 「何故だ?」
 「立花君は、わたしがどう答えたとしても、この船を攻撃する積りなんでしょう?」
 「当然だ。」
 「どうして当然だなんて言えるの?この船には、組織とは直接関係のない人達が大勢乗っている。ゆかりさんやひずるさん……佐久間君や……立花君のご両親だって……」
 「人を捨てた身に、そうしたものは必要ない。」
 「だからなの?わたし達をここに集めて、目を逸らさせたのは?」
 この瞬間、和也の表情に初めてと言っていい焦りの色が浮かんだ。そして、その表情を合図にしたかのように、マリはセカンドスキンのアタッチメントから愛銃であるスクリーマーを抜き出すと
 「蝶の模様が消えても、まだ幻覚は有効という訳ね!」
 叫びつつ、その銃口をサチの視線の方向と重ね、数発、引き金を引いた。
 途端に、まだ薄暗い虚空に轟音が響き渡るとともに、いくつもの悲鳴と血しぶきが上がった。次いで、その悲鳴の主達が海面に落下したことで生じたであろう水柱。
 和也が陽動役として、サチ、マリ、ナタクの目を引きつけ、その間に反対側から改造人間の部隊を船体に取り付かせる……それが、和也とパールバディの狙いだったようだ。
 その狙いをサチとマリの行動により、一瞬にして理解したナタクは、再度レシーバーを手に取ると
 「防衛システムをいますぐ全解放しろ。狙いなど考えなくて良い。自動照準もオフだ。マニュアルでも何でも良い。とにかく、撃ちまくれ!」
 ナタクのその声が合図となって、ランファ号の両舷側の装甲各部が機械音を立てながら、次々にスライドしていき、その奥より黒い大型機銃の砲身が姿を見せる。その間、一分とかかっていないだろう。純白の船体を誇るランファ号の側面が、黒く染まっていく。そして、その黒い舷側から放たれるのは、無数の火花と銃弾。
 先ほどのマリによるスクリーマー発射を更に上回る轟音が、船内に響き渡り、次いで無数の悲鳴があがり、血しぶきが虚空に舞う。
 ランファ号による銃弾の嵐は、まるでパールバディによる呪縛を払うかの如く、ランファ号の周囲の海面から船体に取り付かんとする改造人間とロボット達の群れ、その姿をさらけだした。
 「くっ!こちらでも防衛戦を張る!十三号、ゼロ、立花和也のことはお前達に任せる!」
 言いつつナタクは、サチ達に背を向ける。振り向いたその手には、またしてもどこから出したのか大型の機関砲。
 「ナタクのあの能力、やはりアポート(物体引き寄せ)か?」
 ナタクが見せた一瞬にしての装備切り替えを興味深げに見ていた和也だったが
 「そろそろ俺もランファ号にお邪魔するとしようか。」
 言うなりジャンプ一閃。
 闇雲と言っていい銃撃が展開されるランファ号の舷側。当然ながら、宙を舞う和也にもその銃弾の雨は注がれるのであるが……。
 「すり抜けた……ですって?」
 マリが呆然と呟くとおり、銃弾の雨は和也の体を捉えていながら、その身に着弾することはなく、ランファ号から放たれた銃弾は、全て彼の体をすり抜けていった。まるで、雲や霞を相手にするが如く。
 「ファントムドライブ……と言うのだそうだ。ケルビムに言わせるとな。十三号、お前も同じ能力が使えたのだったな。」
 言いつつ、まるで重力など存在しないかの如く、ふわりと着地した和也は相変わらず淡々とした口調。
 「さて、ところでゼロ。そのスクリーマーとやらは、まだ手放さないのか?」
 「こんな状況で手放せるわけがないでしょう?」
 「ふむ、ならば、俺とは敵対関係にあるわけだな。なら、早く俺を撃ったらどうだ?まぁ、撃ったところで効果はないと思うがな。」
 マリはそれには応えず、かといって、スクリーマーの銃口を和也に合わせると言うこともしない。向けたところで意味がないという思い、そして、心情的に向けたくないという思いが彼女の中で交錯しているのだろう。
 「まぁ、いい……。」そんな葛藤を知ってか知らずか、和也は興味をなくしたかのようにマリから視線を逸らすと、再びサチに向き直る。「十三号、お前はどうだ。」
 「どうだ……って?」
 「俺とともに来るか?人の世を捨てて。」
 「立花君……」
 「お前は、もう元の場所には戻れまい?学校も家も、もう存在しない。第一、お前が異能の持ち主であること。人間でないことは既に知れ渡ってしまった。お前の行き先は、もう俺のところしか存在しないのだ。」
 サチは、それに対し応えられない。
 「だから……だ。俺とともに来い。お前も望んでいたはずだ。俺とともにあることを。違うか?そして、それは俺の望みでもある。」
 「立花君と一緒に……」
 「そうだ。それは俺の望みでもある。」
 「立花君の……」
 「だから、十三号、もう一度言う。俺とともに来い。」
 和也の再度の誘いに対し、顔を伏せてしまったサチ。
 いくばくかの間を置いて再びあげられたその顔は……。
 「ゴメンね……立花君……」
 泣いていた。
 「わたし、あなたが何を言っているのか、分らない……」
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