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Legend , named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 17 Versus (2/4)

 ケルビムの表面は、実際にその上部に立ってみて分ったことだが、表面はごつごつとして、およそ人工物としての“宇宙船”のイメージとはほど遠い。決して金属質の滑らかかつ平坦なものではなく、色の黒さも手伝ってか、触った印象としてはむしろ岩礁に近い。
 故にその決して平坦とは言えないこの場所に於いては、サチもマリも、その立っている姿勢は必ずしもまっすぐというわけにはいかないのだが……


 ケルビム上部に立つ立花和也には、そうした場所に立っているが故の姿勢のゆがみは一切見受けられなかった。
 まるで、立体映像を見ているようだ……とは、少し後になってサチとマリが感じることなのであるが、いまの彼女達は、和也の姿に対しての違和感をうまく表現する言葉を有していなかった。
 二人から見れば、いささか現実離れして見えるその和也は、一旦二人の姿を認めると――
 軽く、視線を二人それぞれに走らせると、以後まるで関心がなくなったかのように、上空だけをじっと見つめ始めた。
 「立花君!」
 一方、和也の姿を目の当たりにしたサチは、叫びつつヘルメットを脱ぎ、自らの顔をさらす。
 「立花君!わたしよ!目を醒まして!」
 強風にその髪を激しく乱しながらも、和也の名を二度叫ぶサチだったが……
 和也は、その声に応える様子は一切見せないまま、上空に向けてその右腕を掲げた。
 すると――
 一瞬にして、世界は色を変えた。


 「何!?」
 期せずして、サチとマリの声が重なる中、彼女達の周囲の空間が真っ赤に染まり、同時に叩きつけられるような衝撃破がプレッシャーとなって彼女達の身にのしかかった。
 「一体、何が?」
 強烈な閃光と我が身にのしかかるプレッシャーにさいなまれつつ呟くサチは、いま現在自分達の身に何が起きているのか、想像することすら出来なかった。


 サチとマリの身に、周囲に何が起きているか?
 当事者たる立花和也を別にすれば、ランファ号に身を置くペンドラゴンこそが、その状況を一番理解していたかもしれない。
 「ケルビム本体の座標に強力な力場の発生を確認。光の屈折率から、空間の歪曲が生じていると思われますが……その力場周囲にあるこの高エネルギーは一体?」
 困惑の広がるランファ号ブリッジ。そうした状況下、ランファ号自体が持つ観測機器と、ヴァルキリーと戦闘機編隊から送られるデータに加えて、複数の軍事衛星から送られてくるデータ、これらを基にして戦術コンピューターとスタッフが出した答え。それは――
 「ケルビムの周囲に強力な空間障壁と思われるものを確認。ただ、その障壁の周囲にある高エネルギーの正体が掴めません。宇宙高度からのものには違いないのでしょうが」
 オペレーターの報告とペンドラゴンの認識をあわせると、要は、衛星からの高出力荷電粒子砲の攻撃を、ケルビムがバリアーによって凌いだということになる。オペレーターが荷電粒子砲のことを知らないのは、ペンドラゴンがその存在も使用も秘匿していたからなのだが。ただ、そのペンドラゴンにしても、彼の切り札だった荷電粒子砲による攻撃を防いだのが、ケルビム自身でなく、キング=立花和也によるものなのは不可知の領域ではある。
 「そうか……」
 オペレーターの報告を聞いたペンドラゴンは、力なくその身を司令官席の背もたれに預けた。
 立花和也のことは知らないにしても、彼のしかけた戦術は悉く、十三号=緑川サチとケルビムサイド、双方の手により無効化された。いまの彼の手元には、もう切るべき手札は残っていない。つまり
 (もう、全ては“人”の手を離れてしまったと言うことか……)
 ということであり、以後の状況は、十三号とゼロ=光明寺マリの手に委ねざるを得ない。
 (ケルビムという旧き神と十三号、ゼロという新しき神、この三柱の神が世界の行く末を決めると言うこと……なのだろうな)
 それは決して口にしない、組織の“長”の一人として、口には出来ない彼の思いであった筈なのだが……
 「新しい神は、十三号とゼロだけじゃないよ。おじいちゃん」
 不意に子供の声がした。
 組織の中でも幹部クラスか専門職の人間しかいない筈のランファ号ブリッジ、そこでは聞こえる筈のない子供の声。
 ふと視線を動かすと、そこには白い布を全身に巻き付けた幼い少女と、ブロンドの髪をなびかせた美女。
 「もしや、パールバディか?」
 ペンドラゴンが、美女の方にそう問いかけると
 「はい、お初にお目にかかります。ペンドラゴン卿」
 とパールバディは、その傷一つない顔に笑みを浮かべて会釈した。そして、少女とともに、その足を一歩進める。
 「本日は、ご挨拶に……。わたくし、故あって主(あるじ)を変えましたので、それとわたくしの新しき主(あるじ)が、ペンドラゴン卿にお願いの儀があるとのこと」
 「新しき主?ケルビムでなく?……まさか」
 ペンドラゴンの目は、パールバディの前に立つ少女に吸い寄せられた。
 その目――子供とも思えぬ虚無の光をたたえた瞳と、自分以外の全てのものに対して向けられた侮蔑の微笑みを浮かべたその表情……
 「君は……何ものだ?」
 「はじめまして、おじいちゃん」
 音としての幼さと相反した冷たさの漂う声がブリッジに響くが、この段になって、ようやくブリッジクルーもいま目の前にある状況の異常さに気がつき、それぞれ腰の銃に手を伸ばすが――
 「邪魔……」
 少女は、一瞬だけその整った眉をつり上げると、布に覆われた細い腕をブリッジクルー達にかざす。すると――
 「ぐわっ!?」
 銃を構えんとしたクルーの悉くが、その場に倒れ込む。
 「何だ!?」
「局所的に高重力をかけたの。骨の一本くらい折れているかも」
 ペンドラゴンの問いに、少女はくすくすと笑いながら答え、次いでその人形のように整った顔を音もなく近づけ、細い指を彼の額に押し当てた。
 「あれ?おじいちゃん、今度のことを最後に引退するつもりだったんだ」
 「なぜ、それを……」
 ペンドラゴンのこの問いには答えず、
 「でも、引退する前に少しだけあたしに力を貸して欲しいんだけどな……。そう、おじいちゃんの仲のいいエライ人っていうと……」
 少女の細い目がさらに細められ
 「ふーん……シカゴのガイアって人、女の人なんだね」
 と囁きは耳元に。
 愕然とするペンドラゴンは、ここに至って
 「私の思考を読み取っているのか?」
 と目の前の少女の異能に思いが及ぶ。
 「それだけじゃないけどね……」
 対して少女は、ペンドラゴンの感慨になど興味がなさそうなに呟いて
 「ねえ、ちょっとガイアって人のところ、連絡とってくれないかな?あともうひとつ……」
 と自身をくるむ布の端をつまみ、こう言った。
 「何か着る物を用意して欲しいんだけど。出来る限り、可愛いのがいいな……言うこと聞いてくれなかったら、この船沈めちゃうから」
 実に屈託のない笑顔で告げられたのは、選択の余地など与える気が一切ない要求だった。
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