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Legend named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 17 Versus (1/4)

 ハーブーン、衛星ともにロスト。
 情報は全てランファ号の方でも掴んでいたが・・・・・・
 「まさか、十三号とゼロがあれらを阻止できるとはな……しかし、まだ切り札は残っている」
 そう呟くペンドラゴンの表情には、焦りの色はなかった。
 その冷静さを支える答えは、高度三万キロ上空にあった。


 その衛星の存在は、決して公表されることはない。
 仮にアマチュアの天文家がその軌道を正確に割り出したとしても同じことだ。公的な機関は、その演算結果を決して認めようとはしないだろう。
 常にそのコンディションは細かくチェックされているにも関わらず。
 定期的なシャトル便が、メンテナンスに赴いているにも関わらず。
 数多くの研究機関、重工業企業が、その開発に携わっているにも関わらず。
 かつて、大国による核の脅威が世界を覆っていた時代より、それは息を潜め、力を蓄え、大地に雷土を放つ機会をうかがい続けていた。
 いまとはなっては大仰としか言いようのない規模の蓄電池と、それに反して現代の水準を以てしても驚異的と言えるコンパクトさを誇る粒子加速器。
 ふたつの技術のアンバランスさが、異形を際だたせる。
 その異形の衛星から、実にささやかな炎が上がった。
 スラスターが火を噴き、その異形をある一点へと推し進める。
 ささやかな炎も、真空の宇宙では秒速にして三キロを越える速度を衛星に与えるのだが、音のない世界ではそれは実感しづらい速度ではある。
 そして、その信じがたい速度を以て、目的の座標に辿り着いた衛星は、また細かくスラスターを調節し、その異形から突き出た砲口を青い星に向ける。
 荷電粒子砲・・・・・・かつて、核の脅威から自国を守るためという「名目」で宇宙に置かれた、まさに天空の砲台は、神ならぬ身の人間の裁量により、その圧倒的な力を振るわんと地上に向け、この世に生み出されて後、初めての裁きの雷土を放った。


 緑川サチと光明寺マリは、ペンドラゴンの打った手を“五段構え”と評したが、それは間違いである。
 ランファ号からのミサイル攻撃
 戦闘機隊による近接攻撃
 サチとマリの降下作戦
 潜水艦よりのハーブーン
 人工衛星の落下による宇宙高度の爆撃
 それに加えて・・・・・・
 宇宙高度よりの荷電粒子砲による迎撃不能な超長距離狙撃
 という”六段構え”の作戦。
 それこそが”オペレーション・バルムンク”の実態だったのである。
 しかし、実態を知ったとしても、第六の手段。
 高々度から繰り出される亜光速の雷土、街一つ簡単に吹き飛ばせる威力を有する荷電粒子砲に対し、いかなる迎撃手段があるのか?
 速度、火力ともに、まさにペンドラゴン、いやこの場合発射シークエンスを行ったのはシカゴに身を置くガイアであることからすれば、“組織”がケルビムとその一派に対して放ちうる最大にして、最後の切り札。この切り札を前にしては、いかにサチのアニヒレーターズシャウトを以てしても、まず速度の面で対応出来ない。マリのレーザーも出力の点で対抗し得ない上に、亜光速の弾丸の前では発射態勢を整えることもままならないだろう。防御に専念するにしても、彼女達のバリアも、荷電粒子砲相手では、出力的に受け止められるエネルギー量の限界を超えているだろう。
 そして、さらに厄介なことには、サチもマリも、自分達の遙か頭上で起こっている異形の衛星の暗躍に全く気がついていない。
 異形の衛星は、その表面に徹底したステルス処理が施されており、制御系も他の軍事衛星とは完全に切り離されて運用されている。その為、偵察衛星にもその存在は察知されない為に、それ経由で情報を得ているマシン・ギルバートには、動きどころか存在そのものさえ気づかれていなかった。また、この最終ミッションは、ペンドラゴンとガイア、二人のトップ間合意のみで決行されている為、現在の司令基地たるランファ号にも知らされていない。なので、ランファ号の戦術システムから情報を得ているマシン・シルフィード、ビーにも情報は掴めていない。
 街一つ消し去る荷電粒子砲が、このタイミングで振り下ろされれば、いまだ周辺空域を飛行している味方の戦闘機隊は無論、ランファ号にすら破壊の余波が訪れる可能性がある。それが分っていても、その場に我が身があっても、なお拳を振り下ろすのがペンドラゴンのやり方だった。
 その振り下ろされた拳が繰り出す無慈悲な鉄槌。
 それが下される間際――
 ケルビム上部に姿を見せた者があった。
 人間だった頃の名を、立花和也という。


 マシン・シルフィード最大出力でのホバー。
 それを以てしても・・・・・・
 「サチ、済まない。届くかどうかというところだ」
 シルフィードの頭脳ビーが、珍しく弱気な発言。
 「出撃前に、エンジン、ホバーともにギリギリのチューンを施してもらったんだが、先程のミサイル迎撃のための降下、やはり無理をしすぎた」
 「そんな……」
 ケルビムはすぐ目の前にある。ここで上昇力が落ちてしまうと言うのは、サチにとっては無念にもほどがある。
 「何とかならない?」
 「君一人でなら、ここからのジャンプで辿り着けるだろう。シスターと戦った時と同じだ。私は私でなんとかする。何、仮に落下して壊れたとしてもドクターと監督が何とかしてくれるだろうし、またマリが拾ってくれる」
 サチの問いへの答えとしては、これが精一杯なのだろう。
 「ああ、ジャンプの前にナタクがくれたという斬馬刀、持って行けよ。何かの役には立つだろうからな」
 「ビー……」
 確かにビーの言う通り、シルフィードのシートを踏み台として最大ジャンプをかければ、サチだけならケルビムに取り付けるだろう。しかし、その後のビーに地上への落下に安全なブレーキをかけられる推力が残っているとは思えない。
 いや、そこまで考えなくとも、ビーを搭載したシルフィードは、サチにとってかけがえのないパートナーなのだ。ここで見捨ててしまうには、あまりにも忍びない。かといって、ケルビムに再びとりつくことは、サチの目的遂行のためには絶対必要なことだ。
 そうした葛藤が、サチの胸中をかき乱す、その間にも時間は無情に経過し――
 「サチ、上昇限界が見えた。カウントダウンを開始する。斬馬刀、そろそろ車体から外しておいてくれ」
 「こんな時ばかり、カウントダウン?」
 やや非難がましく呟くサチであるが、呟きの持つ皮肉の意はそのまま彼女自身にも跳ね返る。
 「10,9……」
 カウントダウンが開始されるが、サチはビーの言う「斬馬刀の取り外し」が出来ない。それをする時は、明確にビーを乗り捨てる時となるからだ。
 逡巡するサチの耳に、ヘルメット内の通信機を通したビーのカウントダウンが容赦なく響いていくが、突然――
 「サチ!」
 マリの声が飛び込んできた。
 「上を!上を見て!」
 言われるまま見上げたサチの視界に映ったのは……
 「ロープ?紐?」
 まっすぐ彼女に向けておろされた銀色のロープ。それが細く細くなりながら、サチのいる方へと垂れてくる様とその先に見える青い車体。
 「カルケオンを限界まで伸ばしている。こっちもこれ以上高度を落とせない。何とか、掴んでちょうだい!」
 マリの持つ万能武器カルケオン。ナノマシン集合体であるそれは、マリの放つ電気信号に応じて、自在に形状を変えることが出来る。マリは、自らのその装備を限界ギリギリまで細め、ロープ状にしてサチの方へと垂らしているのだった。そして、マリ自身は――
 マシン・ギルバートに跨り、その身を空中に置いていた。
 いまサチの視界に映るのは、マリ曰く「限界ギリギリまで高度を落としたマシン・ギルバート」。
 おそらく、いまいる高度以上に降下しては、ギルバートとマリといえども、自力でケルビムに再接近することは叶わないと言うことなのだろう。
 カルケオンが形成したロープが、強風にあおられて激しく左右に揺れるのを、サチは何度も空を掴みながらもその手を伸ばし、そして――
 「4,3……」
 ビーのカウントが残り三秒を切ったところで、何とかマリの垂らしたロープを掴むことに成功。
 手応えを感じたマリは――
 「ギルバート!出力最大!ケルビムのところまで一気に上昇して!」
 「イエス、マリ!」
 ギルバートの発するイオノクラフト力場が、肉眼で確認できるほどの輝きを以て活性化し、ロープ越しにサチをぶら下げたまま、一気にその高度を上げた。
 当然、その動きによって、サチの体も引き上げられるのだが
 「マリ、ゴメンなさい。少しだけ無理をお願い……」そう語るサチの空いている方の手は、マシン・シルフィードのハンドルグリップにかけられたまま。
 「ビー、もう少しつきあってもらうわよ」
 結果として、サチはマリのおろしてくれたロープによってぶら下げられるとともに、片腕でマシン・シルフィードの車体をぶら下げる形になった。
 「ギルバート!あと少し!」
 「イエス、マリ!」
 ギルバートの発するイオノクラフト、イオン臭をまき散らせつつ、マリを乗せたまま、サチを、マシン・ギルバートをつり下げた状態で、一気呵成にケルビム直上、わずかながらも上の高度をとった後、横方向にスライドして、ケルビム上部で横転せんばかりの勢いを以て、タイヤの悲鳴とともに着地。
 一瞬、安堵の表情を浮かべたものの、マリはまた顔を引き締めるとその手になるロープ、カルケオンを伸ばして作り出した金属製のロープをぐいと強く引く。
 すると――
 マリの力を利しつつも、ホバーを噴かせながら、その白い車体を見せるマシン・シルフィードとそれを片腕で掴んだままのサチの蒼いセカンドスキンが、マリとマシン・ギルバートを追うようにケルビム上部に姿を見せる。
 ケルビム上部という着地すべき場所まで辿り着いたサチは、そのままシルフィードのハンドルから手を離し、くるりと空中で一回転して後、ギルバートに跨るマリの横に立った。一方、シルフィードは、その前後サスペンションを大きく沈み込ませながらも、ホバーによる空中制動を効かせつつ着地。
 「マリ、ありがとう」着地してのサチの第一声。「おかげで助かった……」
 「まぁね」とサチの謝辞を受けたマリ。「これ、西王母流に言えば、“蒼い女神”に貸しひとつ……というところかな?」
 「その言い方、気にいっているの?」
 「まさか」と答えるマリの声は、通信機越しでも苦笑混じりなのが分る。「柄じゃないでしょ?“女神”だなんて……お互いに」
 「確かに、ね」応じるサチの声にも、苦笑が混じる。
 「あー、それにしても……」マリは、言いつつ、大仰な仕草で自分の肩を軽く叩く。「さすがにいまのは疲れたわ……“釣り”なんかに興じる人の気持ち、絶対に理解出来ないわね」
 「何、人のこと、魚みたいに……」
 「いや、カジキ相手の方が、楽だと思うけど」
 「そんなに重くないわよ」
 そうした言い合いをした後、サチ、マリ、どちらともなく笑い声を上げ始めたが、その笑いもすぐにやむことになった。
 忽然と……
 そう、まさに何の前触れもなく、二人が立つケルビム上部に、一人の男が姿を見せたからだった。


 男の名は、立花和也という。
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