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Legend , named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 16 Valkyrie (4/4)

 サチのハンドガン、スクリーマーと同型のそれが火花を散らしながら発射した強化弾は、敵ロボットの装甲をえぐり、命中した何体かのロボットは動きを停止。即座に金属製の骸と化すが、そうでない相手には


 「インパクト!」


 数体のロボットが停止したことによって出来た敵陣営の隙を突く形で、重力子を集約した大質量の攻撃。
 決して深追いをすることなく、中短距離の攻撃をまじえつつ、サチはマリの狙撃のサポートに専念する。
 「マリ、ターゲットの軌道予測完了だ!」
 その間にもマリの愛機マシン・ギルバートは、落下してくる人工衛星の軌道解析を終え、マリへ状況を報告する。
 ギルバートの報告を受けたマリは、弾かれるようにしてその車体に飛びつき、ムルガンのグリップを握り、サチはサチで素早く敵に背中を向ける形になったマリの背後に回り込み、その盾となる。
 「ギルバート、ヘルメットのバイザーにターゲットの照準を映すことは出来るわよね」
 二人が被っているヘルメットは、かつてサチがF市立高校に立てこもったネイビー、ブリースト、シェリフ、三体の改造人間との戦闘に使用したものと基本的には同じものだ。故に、愛機の人工知能からのデータ受信と投影も可能なのである。
 「了解だ。いま同期したデータを送った」
 ギルバートの声とともに、バイザー内部に映し出される映像。それは、レーダーのモニターにも似た点と線のみで構成されたシンプルな構成のもの。それでも、描かれる曲線が人工衛星の予想軌道であり、点滅する光点が狙撃ポイント。マリの微かな動きに反応する同心円がムルガンの照準であることは即座に理解できた。
 「ムルガンの最大出力を以てしても、光点の指し示すポイントがターゲットの完全破壊が可能な距離になる。そこを逃せば、相手側の落下速度から考えて、もう狙撃のチャンスはない」
 「さらりとプレッシャーをかけてくれるじゃない・・・・・・」
 悪態をつくマリであるが、別にギルバートの発言に不快感を示しているというわけではない。
 「最大出力を出すのなら、チャージ時間を考えても確かにチャンスはないんだろうけどさ。ついでに待避時間も・・・・・・」
 ただ、いままで感じたことのないプレッシャーをマリが感じていることは確かだった。
 対してサチは、マリとギルバートの会話を耳にしつつも、その神経は眼前の敵ロボット群に集中。彼女にすれば、いまはマリとギルバートを信じることでしか、状況を打破する術は持ちえないのだ。
 サチの奮闘を背中で感じつつ、マリは息を整えつつ、照準をギルバートが指し示す光点に。
 「相手側の速度を計算に入れつつ、カウントダウンを開始する。ゼロになったところで狙撃ポイントに向けてムルガンのトリガーを引いてくれ」
 「了解・・・・・・」
 いつもの彼女とは異なり、かなり抑えがちな声で返答し、マリはそのタイミングを待つ。
 「10,9、8・・・・・・」
 カウントダウンが進む中、サチ一人、なおかつほぼ防御に専念している状況下では、敵ロボット群にじわじわと押し込まれていく。それでも、何とかサチはハンドガンと自身の能力を駆使し、マリに敵ロボットの攻撃が及ばないよう奮闘していたのだが――


 「スラッシュ!」


 被弾しつつも接近してきたロボットの一体を高周波の蹴りで寸断するが――
 「しまった!」
 寸断され、動きの止まったそのロボットの胴体が、マリの背に向かって倒れ込もうとしたのだった。
 (マリの体には指一本触れさせない、いまだけは!)
 その決意のままに、サチは必死でその細い腕を伸ばし


 「インパクト!」


 拳に重力子を集約させ、ロボットの骸にヒットさせた後、力の限りにその腕を振り抜いた。
 サチの細い腕がまるで野球のバットのように金属製のロボットの骸を打ち返したその瞬間――
 「ゼロ!」  ギルバートのカウントダウンが終了し、マリはムルガンのトリガーを引いた。
 ほぼ同時に、上空に小さな輝きが生じると――
 「目標の消失を確認。マリ、狙撃は成功だ」
 ギルバートが淡々とした声で、衛星への狙撃が成功したことを告げると、マリはようやく体を包む緊張から解放され、大きく息を吐き出した。ヘルメットのバイザーに映し出されていたターゲット情報も、いまは消えていた。
 しかし、衛星の落下を食い止めても、彼女達にはまだ休息は許されない。
 「サチ!」
 気を緩めたのも一瞬のこと、マリはスクリーマーだけでなく、空いている手にカルケオンを携えると
 「衛星の方は終わったけれど、まだミサイルが残っている。ここはわたしに任せて、早く!」
 と叫びつつ、今度は先程までとは逆にサチをかばうようにして彼女の前に立つ。
 「分っている!」
 サチも素早く応じると
 「シルフィード!」
 自身の愛機を呼びつつ、そのシートに飛び乗る。
 「ビー、ミサイルの軌道解析は?」
 「終わっている、当然のことだ」
 ビーの簡潔な答えに頷いたサチは、マシン・シルフィードのスロットルを開きつつ、一気にジャンプ。ホバーによる落下速度の減速をかけつつも、ケルビム上部から再び虚空に身を躍らせた。
 「ハーブーンは全部で四基。広範な範囲で展開しているだろうから、いままで以上の出力でアニヒレ−ターズシャウトを発動する必要がある。迎撃方法としては、君自身をミサイルに見立てて、わたしの計算した軌道に乗って、正確なポイントに飛び込むことも必須条件だ」
 サチは、一旦黙って頷き
 「その為の情報は?」
 と尋ねると
 「先程のマリとギルバートとの連携と同じだ。わたしが君のヘルメットに直接データを送り込む。タイミングの方、しっかりと合わせてくれればいい」
 「分ったわ」
 サチが答えると同時に、マリの時と同じく、バイザー内部に照準の同心円、さらには画面の隅に明滅しながら減っていく数字の表示。
 「え?カウントダウン、コールしないの?」
 「わたしは先程のパイロットやギルバートと違って、大仰なことは好きじゃないんだ」
 不審に思ったサチに応じるのは、ビーの素っ気ない声。
 「本当、面倒くさがりなんだから・・・・・・」
 苦笑しつつ、サチが言うと
 「カウントが10になったら、照準に自分を飛び込ませるイメージで下方向にジャンプ。ゼロになったところでアニヒレ−ターズシャウトの発動だ」
 サチの不平を全く意に介さずに淡々と告げるビーに、彼女はまたも苦笑しつつ
 「了解」
 と答えた。
 そうしたやりとりをしている間にも、カウントは10に近づき
 「サチ、行け!」
 ビーの号令とともに、サチはその身を躍らせた。
 足を伸ばし、自身をミサイル、或いは矢と化したイメージ。
 その状態で、落下していくと、今度はまたあったという間にカウントはゼロを刻み――


 「アニヒレイト!」


 力の限り叫ぶと同時に、彼女を中心とした巨大な光球が生じ、周囲の空間を瞬間的、そして広範囲に包み込む。
 サチの側からは、ミサイルは一基しか見えない。
 しかし、その周囲にもう三基のミサイルがあることを、直感が告げていた。
 光球の中――
 まるで鉛筆で書かれた文字を、消しゴムでかき消していくような感覚。或いは落書きを指でなぞって消していくイメージ。
 実に卑近的ではあるものの、そうしたイメージがサチの中に広がり、そのイメージのまま、光球内のありとあらゆる物質、いや「存在の情報」ごと全てが無に帰していく。その運動エネルギーでさえも情報に変換され、その存在を打ち消されていった。
 そうしたイメージとその具現化もほんの瞬間的な出来事、外側見ている限りは一瞬の内に、自らが生じさせた光球からサチは飛び出し、下方に回り込んだシルフィードが落下するその身を受け止めていた。
 サチが飛び出し、光球がかき消えたその空間には、もはや無という名の静寂が残るのみ。
 「サチ、成功だ。ハーブーンは全て消失した」
 ビーが、サチのアニヒレ−ターズシャウトの成功を伝えると、サチはただ黙って頷くのみ。
 一連の行動は、サチにかなりの疲労を与えていたのだった。
 「ホバー最大出力!サチ、ケルビムにまたしがみつくぞ」
 サチはこれにも黙って頷くのみだった。


 アニヒレ−ターズシャウトを発動して、ハーブーンミサイルを迎撃、消失させたのとほぼ同じタイミングで、シカゴのガイアが衛星を落下させたそれとは別の赤いボタンを押したこと。ケルビム内部で、立花和也が再び覚醒の時を得て、いままさに立ち上がらんとしていること。
 こうしたことは、まだサチも、そしてマリも、知り得ないことだった。
 そして、さらにもうひとつ・・・・・・二人が知り得ないことが、ケルビムの中で起こっていた。


 ずるずると引きずる音が、調整カプセルの並ぶケルビム本体の一室に響いていた。
 「おのれ・・・・・・おのれ、十三号、ゼロ・・・・・・このままでは終わらせない」
 それは、サチに破れたことにより、片方の複眼を失い、上半身のみとなったパールバディの姿だった。
 「何とか・・・・・・何とか、体を元通りにしないと・・・・・・このわたしの美しい体を・・・・・・」
 上半身の断面から青い体液をまき散らしながらも、妄執と言っていい執念で体を動かし、サチとマリに対しての呪詛の言葉を呟くパールバディ。
 「ねぇ、助けてあげようか?」
 苦しむパールバディの耳に、舌足らずな言葉が響いた。
 「あなた、あの“ネオ”とか言う小娘よりも見込みがありそう。あたしの下で働いてくれるというのなら、あなたを助けてあげるし、体だって元通りにしてあげられる。多分ケルビムにだって、あなたを元通りにすることは無理。あたしにしか出来ない」
 その声が発された方向、いまのパールバディでは見上げるしかないその視界の先に、声の主はいた。
 それは調整カプセルの上に座り、足をぶらぶらとさせている全裸の少女の姿。
 「小娘?あなたがネオを小娘呼ばわり?あなた、一体・・・・・・」
 声の主の姿を視界に捉えたパールバディは困惑を露わにした。
 無理もない。
 その全裸の少女は、どう見ても五,六歳。小学校就学前の幼い少女であり、ネオの実年齢からすると、娘であっても決して不思議ではない年齢なのだから。
 「あたしは、秋月志乃。コードネームなんて必要としない完全無欠な“魔女”となる者。見た目の年齢なんか関係ない」
 声こそ幼い少女のそれであるが、話している内容は断じて違う。生まれて初めてと言っていい底知れぬ恐怖を感じるパールバディを前に、秋月志乃と名乗った少女は、調整カプセルから飛び降りる。その動作は、重力の存在すら感じさせない軽やかなものだった。
 「そうね、まずはこの騒々しい場所から抜け出すことから考えましょうか?」
 カプセルから飛び降りた志乃は、不意にその右手を挙げる。すると――
 空間に黒い点が浮かんだかに見えたその直後、その黒点は大きく広がった。
 「これは?まさか、空間制御?ケルビム様にしか出来ないことだと思っていたけれど・・・・・・」
 その現象の意味を悟り、愕然とするパールバディ。その様を見て、志乃は不敵な笑みを浮かべる。
 「こんなの、全然大したことじゃない。さあ、いまここで決めて。その体を元通りにして、あたしの下で新しい仕事に就くか?それとも――」
 言いつつ、志乃はペロリと舌をだして自らの唇を舐め、細めたその目に凶暴な光を宿す。
 「この場で、あたしの糧となって消え去るか?」
 ケルビム本体にいる者、いない者、ケルビム自身すら含めたこの世のありとあらゆる者達の知り得ない新しい“何か”が、忌わしい産声をあげつつあった。
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episode 16 FIN
to be continued....
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