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Legend named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 16 Valkyrie (1/4)

 XB−70
 それが、ヴァルキリーの正式名称なのだと、ランファ号でのブリーフィングの際にペンドラゴンが教えてくれた。
 かつての冷戦時代に建造された核戦略ありきの超音速爆撃機であり、過去二機しか建造されることのなかった歴史に埋もれた機体である。
 「高速、高々度から十三号とゼロを降下させることの可能な機体、私としては、かつてのXB−70のような機体というオーダーを出していたのだが・・・・・・まさか、そのものを手配してくるとは思わなかった」とは、ブリーフィング中ペンドラゴンが苦笑まじりに漏らした弁。
 マシン・シルフィードとマシン・ギルバート、サチとマリそれぞれのパートナーたる愛機にヴァルキリーの位置データを読込ませた技術士官が言った。
 「シカゴのガイア卿は航空機マニアでもあるからな。陽動のF20も含め、恐らくは道楽にあかせて作らせたレプリカなんだろうな」
 ランファ号で二人と接した組織構成員、この場合は西王母の部下の一人が冗談めかしながらこうも言った。
 「俺達は必要悪だ。必要悪って言うのは、本当は必要じゃないものってことだ。だから、戦略構想で必要ないと判断されたこいつらを、俺達が使うのは必然な話なのさ」


 結局、目の前のXB-70がオリジナルであれ、レプリカであれ、それがどういう意図を持ってまだ密かに運用されていたのか。
 そういった悉くは、サチには分らない。
 ただ、確実に言えることは、いま目の前にあるデルタ翼を持つ白い機体こそが、サチとマリの二人をケルビム本体に、ひいては立花和也のもとへと赴くための唯一の手段であるということだけだ。
 いまサチとマリは、それぞれの愛機を決して広いとは言えないヴァルキリーのカーゴに固定していた。本来は爆弾を搭載するスペースであるのだが――
 「作戦を立案したペンドラゴンにとっては、わたし達も爆弾も大して変わらない扱いのシロモノってことよね」とはマリの弁。ただし、マリもこうも続けた。「爆弾みたいに使い捨てにされる気はないけれどね」
 ペンドラゴンにとっては、サチとマリをヴァルキリーで送り出す目的はケルビムの破壊なのだろうが、二人の目的は違う。あくまでも、ケルビム本体にいるであろう立花和也の救出が目的であり、ケルビムの破壊は結果として考え得る手段というに過ぎない。
 高々度での運用を想定したヴァルキリーのコックピットは与圧されており、安全のためにパイロット二名も与圧服を装着しているとのことだったが、サチとマリの装備はいつもと変わらない。
 セカンドスキンこそ、アポロとパールバディを相手にした戦闘で傷だらけだった為に、再生成したものを装着してはいるものの、与圧服無しでヴァルキリーによる高々度よりの降下作戦を実行できるというのは、改造人間である二人ならではであろう。ただ、これもセカンドスキンそのものが、二人の生体親和性に特化して設計されているとはいえ、もともとは次世代宇宙服の開発途上で生まれたもの、という側面を持っていることも関係してはいるのだろう。
 マシン・シルフィードとマシン・ギルバート、二台のマシンが所定の位置に固定されると、機体底部のハッチが閉じ、一旦暗闇がカーゴを支配することになる。二台のマシンともに損傷はないが、ただシルフィードのボディにはナタクの残した斬馬刀が、鞘におさまった状態でくくりつけられている。
 「お嬢さん方、準備は出来たかね?」
 しわがれた英語が、カーゴに響く。年配のパイロットが任務に就いているようだ。
 「準備完了、いつでもいいわ」
 サチがやや固い口調で応じると
 「では、発進する。目標ポイントまで大きく迂回して向かうことになるから、降下開始はおよそ二十分後というところか?こいつは足が速すぎて、直行ルートをとるには目標が近すぎるんだ。それまで、しっかり最終チェックの方、頼むぜ」
 「オーケー!ポイントに接近したら、降下開始までのカウントダウンもよろしく」
 マリが応じると
 「オーダーにはなかったことだが、お嬢ちゃん方、かわいいから特別にサービスしておくよ。あと、こいつもサービスだ」
 年配らしいパイロットの声の後、カーゴルームが揺れ、ジェットエンジンの甲高い音が支配する。ヴァルキリーが遂に離陸体勢に入ったのであるが、その離陸時特有の震動と音が支配する中、二人の耳は、その音の中に弦楽器と管楽器の響きを捉えた。
 「ワーグナーの“ニーベルングの指輪”から、“ワルキューレの騎行”だ。お嬢ちゃん達にはピッタリだろう?」
 「周りの音が凄くて、よく聞こえないわよ!」
 パイロットの笑い声に、マリが文句を言うが、あいにくと相手は気にとめなかったようである。
 「お嬢ちゃん達、“地獄の黙示録”は見たことあるかい?あれ、一度やってみたかったんだよな」
 「全く・・・・・・隠密作戦じゃなかったの?」
 マリの不平の声も、ジェットエンジンの轟音と風切り音にかき消されがちだった。


 サチとマリが、ヴァルキリーによって天上の高みへといざなわれていたその時――
 彼女達のいる位置とは上下正反対にあたる海中で、新しい動きが怒りつつあった。
 F市沖五キロ。
 全長百メートルを超える巨躯が、いま海面に向かい静かに浮上しつつあったのである。
 現在の潜水艦の位置関係からすれば、F市市街の側を正面とすれば、ちょうど背後、約二十五キロ後方に座す空母の護衛の為、ペンドラゴンが呼び寄せたものであったが、潜在的な戦闘能力の割にはいままで表に出てくることはなかった。オペレーションバルムンク発動以前のネプチューンことハザン公が、自身の巨大な分身とともに改造人間部隊を率いてランファ号に襲いかかった時ですら、ペンドラゴン自らの命令によりひたすら待機していたくらいである。
 その潜水艦、サイズからすると、シーウルフ級に相当する巨躯が、いまペンドラゴンの新たなる命令により、静かに動き始め、海面まであと少しというところにまで、その深度を上げている。
 全ての戦術システムは既に開放されており、あとはペンドラゴンの号令を待つだけでだった。
 サチとマリにもその存在を秘し、ランファ号の危機に於いてすら抜かれることのなかったペンドラゴンの隠した戦力、その秘めたる戦闘力が開放される時、サチとマリに、そしてケルビム達に何が起こるのか、いまはまだ誰にも分らない。
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