ねごとやTOP > のべるず@ねごとや > 13号ちゃんプロジェクト > Legend , named 13  > episode 14 1/4

Legend named 13 13号シルエット

プロジェクトの本丸!「Girl,called 13」Final Stage!!

episode 14 Apolo (1/4)

 装填されたのは、タングステン弾芯の強化弾。
 緑川サチと光明寺マリ、二人の少女が手にする大型ハンドガン、戦闘用改造人間たる彼女達のみが自在に使いこなせる特殊銃スクリーマーが揃って火を噴き、眼前の敵‐‐


 青き原身を晒すパールバディに。
 赤い仮面の上級改造兵士アポロに


 電磁レール効果によって加速と運動エネルギーを以て、その破壊力の全てを眼前の敵達に叩きつけんとしたが……
 「無駄ですわ」と青い肢体の女
 「無駄だ」と赤い仮面の男
 青い肢体の女に向かって放たれた弾丸の悉くは、その標的たる体をあっさりとすり抜ける。
 一方、赤い仮面の男に放たれた弾丸の軌道は、男が手に持つ円形の盾に悉く弾き返されてしまう。
 サチとマリはともに顔をしかめつつ、次に来る相手の一手に備え、その華奢な体を硬くするが、青い肢体の女も赤い仮面の男も二人の挙動など意に介せずにそれぞれの右腕を方の高さまで上げ、
 手にした銃剣から強化弾を
 開かれた掌から光弾を
 それぞれに放つ。
 「くっ!」咄嗟に飛び跳ねて回避しつつ、迎撃の弾丸を放つマリ。
 「レーザー?」戸惑いつつも瞬間的に加速し、それでもぎりぎりで何とか回避するサチ。
 この二人の動きに、パールバディとアポロの二人はタイミングを同じくして感嘆の声をあげる。
 「弾丸の軌道を瞬時に読み取って、迎撃射を行うか……あきれ果てたまでの演算能力だな」とは自分が撃った弾丸の何発かをマリの射撃によって撃ち落とされたアポロ。
 「あれをかわすとは……十三号、あなたの運動能力は既に改造人間の域すら越えていますね。そして、ゼロの演算能力も……」とはサチにレーザーをかわされたパールバディ。
 パールバディは、言いつつもアポロの側を見、さらにこうも語った。
 「アポロ、いまからそれぞれの標的に専念いたしましょう。その為のステージアップ……異議はありませんね?」
 そのパールバディの提案に、アポロは無言で頷く。
 「では……」
 答えつつ、パールバディは微笑んだ……ようにサチには思えた。
 実際には、姿を変えたパールバディの表情は複眼と線紋に覆われているため、その変化をうかがい知ることは難しい。しかし、サチの眼はその口元が僅かに緩んだのを見逃さない。サチがみるところの口元が緩んだその瞬間――
 パールバディの背後に金色の光の膜が広がり、それはやがて巨大な蝶の羽根を形作っていく。
 大きくそして広がった金色の羽根が完全に、蝶のそれとおなじ形状となったその瞬間、
 「何!?」
 サチとマリ、二人が思わず声を上げた。
 二人とパールバディ、アポロを取り囲む周囲の空間全てが、蝶の羽根に覆われたからだった。
 「ルナティックビートか……」
 羽根に覆われた視界の中でアポロの呟きが聞こえた。
 「これでは、十三号とゼロも共闘出来まいが……それは、俺達も同じか」
 「必要ですか?」
 パールバディの返答が、小さな笑い声とともに蝶の羽根に覆われた視界の中で響く。
 「いや、お互いにこれで専念できるというものだろう」
 「それは重畳」
 パールバディの声は、次にサチに向かった。
 「では十三号参ります」
 その声とともに、蝶の羽根に覆われた視界の中から、突然青い拳が見えたかと思った瞬間、それはサチのアゴを捉えた。
 堪らず後ろ向きに倒れ込むサチ。
 (全く見えなかった……)
 倒れながらもすぐに意識を切替えるが、衝撃は大きい。
 過去、様々な敵との戦闘の中でも、立ち会いの中で彼女の顔面を捉えた者はいない。その戦績を、パールバディはただの一撃で崩してみせたのだった。
 多少ふらつきながらも何とかすぐに立ち上がるが、その視界は蝶の羽根に覆われて、パールバディの姿はおろかその気配も感じ取ることは出来ない。
 「ビー!」
 焦燥の中でサチは、パートナーマシンたるビーの名を叫ぶ。
 「パールバディの場所を教えて!」
 しかし、返答は来ない。
 「無駄ですよ」
 かわりに届くのはパールバディの声。
 「ルナティックビートが狂わせるのは、人の感覚だけではありません。人も機械も私の生み出す旋律の中では、その感覚機能は正常ではいられなくなる。あなたのパートナーにもあなたの声が届くことはありません。人と機械、どちらにも有効なわたしのルナティックビート、改造人間をお相手にするには実に相応しい力……あなたもそう思うでしょう?十三号」
 声には出さないもののサチは、同意せざるを得ない。
 事実、こうしていても果たしてパールバディの声がどの方角から聞こえてくるのか全く分らないのだ。
 過去経験したことのない焦燥感に蝕まれる中、サチは五感を研ぎ澄まし、パールバディの出方を待つ。
 「いくら身構えても無駄ですよ」
 パールバディの声が背後からしたと思ったその瞬間、正面から再び青い拳がサチを捉えたが、これにはギリギリで何とか反応。
 咄嗟に右の掌で受け止めるが、それでもサチの体はよろけそうになる。
 これは、不意の攻撃で体が反応しきれなかった……というだけの理由ではなく、実際にパールバディの繰り出す突進力が強力だったという他ない。かつて、様々な敵を前にしても滅多なことではパワー負けしなかったサチが、である。
 何とか態勢を保ちつつ、掴んだ拳を頼りにしてさらに腕を掴んだサチは、そこから判断できるパールバディの位置に向け


 「ヒート!!」


 灼熱の回し蹴りを見舞わんとしたが、パールバディの姿を捉えたと思ったその瞬間……
 サチの蹴りはパールバディの青い肢体をすり抜け、空を切ったのみ。
 「ファントムドライブ?」
 唖然とするサチであるが、次いで彼女の口から飛び出したのは苦悶の声。
 「ぐっ!」
 何ものかに髪を強く引っ張られる痛みに呻くサチ。この場合、相手が誰なのか考えるまでもない。
 「気配だけでこちらの動きを瞬間とはいえ捉えるとは……本当に油断ならない方ですね、あなたは」
 パールバディの冷ややかな声が聞こえたかと思った次の瞬間には、サチの体は髪の毛を掴まれたまま高く持ち上げられ、そのままコンクリート製の地面にもの凄い勢いで叩きつけられた。
 「とはいえ、ルナティックビートの支配下にいることには変わりなし……わたしの腕を掴んだその感触、本当にあなたが感じたとおり、現実の感覚なのでしょうか?」
 苦痛と絶望感がさいなむサチの耳に、パールバディの声は容赦なく響く。
 「十三号、あなた、本来は格闘戦主体の改造人間なのですよね……では、そのお得意の格闘戦であなたには痛い目にあって頂きましょう。その上で絶望を味わったあなたを、ケルビム様に献上いたしましょう。ケルビム様も神々も、用があるのは“器”としてのあなただけなのですから」
 「何を言って……」
 苦悶に顔を歪めながらも何とか立ち上がろうとするサチ。その姿をどこかで見ている筈のパールバディの声が追い打ちをかける。
 「あなたの存在など、その程度のもの。言っておきますが、わたしにはファントムドライブは効きませんよ」
 言葉の追い打ちとともに、パールバディの攻撃はさらに続く。
 今度は、直上よりの雷撃。
 それに対し、サチはファントムドライブを発動。いままでのように相手の攻撃をすり抜けさせようとしたのだが……
 雷撃は物理法則そのままに、サチの体を直撃する。
 人間ならば、即座にショック死。
 しかし、強化されたサチの体は、その衝撃をそのまま受け止めてしまう。
 たまらず膝から崩れ落ちるサチ。周囲に焦げ臭い匂いを感じるが、これだけは錯覚でも幻覚でもないのだろう。
 「ふふふ……ファントムドライブは量子化能力。ただ、その空間波長の変化さえ読み取れれば、こちらの手も届く。もっとも、理屈が分っても実行できるのはわたしかケルビム様だけでしょうけどね。どうします?アニヒレ−ターズシャウトも使ってみますか?ただし、位置関係が見えない以上、ゼロを巻き込む可能性はかなり大きいですし、わたしならそれを狙いますけどね」
 コンクリートの地面に倒れているサチは、逆転の一手はおろか、攻撃の糸口さえ掴めない。
 蝶の羽根に覆われた視界の中、ジャリ……とパールバディが地面を踏みしめ、一歩一歩近づいている音が聞こえてくるが、それが果たしてどの方向からなのかさえ、いまのサチには判断がつかないでいた

next
back
index
Project 13th Girl © ねごとや
since 2008/06/29