「太陽の村」(朱川湊人)←電子書籍
このところ気に入っている朱川湊人作品。
ただ、太陽の村はいままで私が読んできた昭和を舞台にしたファンタジーとは趣が違います。
ネタバレ承知で言うのなら
誰が、シャマランの「ヴィレッジ」で、ジム・キャリーの「トゥルーマンショー」やねん!!
お話は、現代2010年。
父親の定年退職の記念にハワイを家族とともに訪れていた現代オタク青年坂木龍馬(デブ)が日本への帰路、飛行機事故にあい、鎌倉~室町時代の文明レベルの村に漂着するというもの。
まるでタイムスリップしたかのように異なる時代性の村、果たしてここはどこなのか?
龍馬は、無事現代日本に戻れるのか?
そんなお話。
「日本と言う国とその国民性は、大阪万博を境に大きく変わってしまった」という作品内で語られる主張。
分からなくもないが、悲観しすぎ、現代社会否定しすぎとも感じられる。
未来が不安だらけなのは、昔から。未来が輝いて見えていた高度成長期の方がむしろ時代としては珍しいのでは?
モダニズム批判、それはひょっとしたら、作者様の昭和を舞台にしたお話と「太陽の村」は描き方が違うだけで同根なのかもしれないが、少なくとも私はノレなかった。
いや、語り口など、「わくらば日記」あたりと違い、かなり砕けた文体であり、作家としての器用さは感じましたが。
「毒吐姫と星の石」(紅玉いづき)
以前のエントリの中で触れた「ミミズクと夜の王」の続編。
内容を主人公エルザ視点の時系列で掻い摘むと
(1)エルザ、占いで全てが決まる占の国「ヴィヨン」の王家に生まれる
(2)占いの結果、王家に災いをもたらすとして赤ん坊の頃に下町に捨てられる
(3)下町でたくましく生き延びて「毒吐姫」と呼ばれる←人生=ツン
(4)下町に彼女を捨てさせた占者達に拉致監禁される。国難に彼女が必要という理由。同盟国であるレッドアークへの嫁入り決定(本人意思関係なし)
(5)牢屋に閉じ込められ、無理やり姫様教育。
(6)品がないということで、言葉を魔術で奪われ、声が一切出なくなる ←絶望
(7)輿入れ。レッドアークの王子の手足に宿る魔力効果で声が出るようになる。←脱走画策
(8)魔力で操られ、自分の意志と無関係に王子暗殺を無理強いされる ←自我崩壊直前
(9)ヴィヨン内乱(エルザは囮)
(10)前作主人公ミミズク(真昼姫)と出会う。←転機?
(11)ヴィヨンへの出兵に同行。民衆説得。
(12)内乱平定。← 遂にデレる(笑)
こんな感じ。冷静に考えると、波乱万丈なんてものではないな。
前作での主人公ミミズク同様、このエルザもまた人の世に一度は絶望してしまう少女であります。
そして、ミミズクと違うのは、心が壊れない様「毒吐き」という武器を以て自分を守っていると。
で、毒吐の由来となる毒舌ですが
(デレ前)
「占いに頭のイカレた、不能の一生童貞どもが」
「魂のすべてをもって呪ってやる!」
「星よ堕ちろ、光よ消えろ、命よ絶えろ!!占い狂いのこの国は、業火に焼かれて生きた地獄になり果てればいい!!」
(デレ後)
「あんたは、頭がよくても、女心が何一つわかんないクソ男よ!!」
「(去ろうとしている自分を)引き留めなさいよ!!」
「この毒吐きでよければ」「あたしがあんたを幸せにしてあげる」
この前と後の違いというか、台詞の持つニュアンスの違いは、作品を読んだ人でなければ伝わるまい(笑)
ただ、デレ後のエルザは強烈だぞ(笑)デレ前も強烈だけど……
まぁ、これくらいの強キャラでなければ前作主人公のミミズク(真昼姫)には対抗出来ないか。