会社が地元北九州市から福岡市に引っ越しました。
いままでの通勤時間は15分程度でしたが、これからは2時間通勤です。心が折れそうですが、iPodとSony Readerを友にして何とか頑張ってみます。
プールの底に眠る(白河三兎)
白河作品二つ目。
以前読んだモノは、「私を知らないで」というミステリアスな少女キヨコこと新藤ひかり(中学生)と彼女に出会った転校生の少年を描いたミステリー仕立ての青春小説でした。
この作品は、作者様の長編第一作ということで、「私を知らないで」の原型と思しき特徴が見られます。
主人公がやはり少年(高校生)で、彼の一人称による語り口で物語が綴られているという点。
「セミ」というミステリアスな少女がヒロインであるという点。
「セミ」の正体については、ミステリーとしては割と定番とも言えるオチではありましたが、作品の文学性という点ではこの作品の方が強い気がします。
言い換えれば、まさにデビュー作らしい若さと言うべきか。
心を殺したい、そう願った少女が生み出したパーソナリティが「セミ」であり、彼女の「死」が一人の少女の再生となるというオチは実に逆説的。
そして、物語全体の着地点としては、「私を知らないで」とはある意味真逆のオチ。
私は、ハッピーエンドだと思っております。
それにしても・・・・・・「セミ」の年齢設定が「12才」というのはどうなのかな?とそれだけが引っかかった点。
早熟というのは、いささか老成しすぎている気もしますが・・・・・・まぁ、まんまガキんちょでは主人公も彼女に惚れてくれないか(笑)
女の子というのは、男の我々が思うよりもずっと成熟するのは早いのですが、内面的にはともかく外見的には主人公の高校生の年代の少年達からすれば「射程圏外」の子供じゃないのかな?と。
まぁ、そういった一般常識をぶっ飛ばすほどの美しさを「セミ」が持っていたのだと解釈するしかあるまい。
大人となった主人公が、自分の子供の名前候補として、「ひかり」を考えていたという終盤では、作者様の後の作品を知っているだけにニヤリと出来たのは、ファンとしての役得ではあった。
空蝉 ヒカルが地球にいたころ7(野村美月)
ヒカルシリーズも遂に7巻。
ラノベとしては標準的な巻数かもしれないが、さすがに長い。
つまりそれだけ支持者が多いのでしょう。
源氏物語という古典をベースに紡がれた物語は、いわゆる典型的なラノベのラブコメとはちょっと違った作風。
空蝉は原点では人妻だったわけだが、今作の空蝉=蝉ヶ谷空という少女は、天使の子を宿した女性。
毎回、幽霊となったヒカルの未練を晴らすために、人呼んでヤンキーキング(外見だけで中身は真面目な好少年)の是光が奔走するシリーズ。
今回は、妊娠した空がメインヒロインということで、全体を通して「母」がテーマ。
そして、この巻では遂に幼い日に是光を置いて家を出た彼の母親が登場。
主人公是光にとっては、空を通じ、さらには現実に母親と出会うことにより、「母」という存在について悩まされるいわゆるトラウマ回。
いつもと違い、へこたれた彼を、いままで彼に救われたヒロイン達が励ますというやや変則的なストーリー展開。
結果として、是光はトラウマを乗り越え、さらには空を救い出すことに成功するが、シリーズを通して彼が初めて泣きながらも笑顔を見せた相手というのが、自分を捨てた母親だったというのは、ストーリーとしてはまっとうな展開だったと思うが読んでいる側としては辛くもある。
これは私が「男」だからだろう。
マザコンと言われるだろうが、どうにも「母親」というものにある種の幻想を抱いてしまう。
勿論、世の母親である女性の方々が、母である前に一人の女性として、様々な葛藤を抱き、弱さ脆さも抱えているということは理解している積もり。
しかし、その認識とても、ある程度年齢を重ねているからこそ持てる認識で、主人公是光のような10代半ばの少年にそれを求めるのは少々酷な気もするのだ。
ストーリー上としては、彼の理解と笑顔によって、母親は確かに救われた部分もあったのだろうが・・・・・・ああいう展開は多分男性の若い作家さんでは無理な仕事かもしれない。
ただ、恋愛モノとして見れば、是光が母親と対峙した場面で、彼の手を握り支えてくれた相手が第一作のヒロインだった葵というのは象徴的・・・・・・というか、多分普通の恋愛モノであるならば、その描写を以て正ヒロインは葵ということになるのだろうが、このお話ではどう動くか?
他の面々が黙っているとは思えない(笑)
特に今作より、デレデレモードに突入した朝ちゃんとか、作者様が(多分)お気に入りで、是光に一番近いポジションにいると思われるパープルさんとか(笑)
で、次は「花散里」か・・・・・・
いままでは幽霊となったヒカルの未練の対象となったヒロイン達が題材だったが、次巻ではいよいよヒカルとは何の因縁も持たない少女がメインとなるのか。
お話の主軸は、いよいよヒカルから是光に移ると言うことなのかな?
四畳半神話体系(森見登美彦)←電子書籍
何というダメ青春小説(大笑)
男汁にまみれた四畳半で「私」は夢を見る。
人間、あの時こうすれば・・・・・・と様々な局面での「選択」を悔いるモノ。
そして、そうした「選択」と「決断」は、SFのテーマでもある。
ということで、これは文学性の高い、SF小説でもあるのだ・・・・・・ダメSF小説と名付けよう(笑)
舞台は京都・・・・・・だが、私、京都の地理には明るくないのだなorz
こういう小説を読むと、ちょっと行ってみたくなるな・・・・・・お金はないけど。
そして、京都の大学に籍を置く「私」とその周囲の人々は、皆本当に阿呆なことに情熱を傾けている。
阿呆な情熱・・・・・・青春って、そういうものでないかい?
先に「選択」と「決断」というテーマをあげたが、この主人公、いかなる選択をしても、ひたすらダメな青春を歩んでいく。
もう、本当にダメダメだ(w
でも、そういう愚かしさというより阿呆くささこそば、この物語の醍醐味。
そして、些細なことに幸せを感じてしまう。
「極楽」とは
夜中にラーメンを食べに行けること
この一節にはぐっときた!!・・・・・・私自身も大概ダメ人間だな(笑)
それでも、いかなる選択肢においても主人公は結局黒髪の乙女と恋仲になることに成功するのだから・・・・・・爆発しろ(笑)
まぁ、黒髪の乙女=明石さんも大概くせ者だけどな。
そして、全編を通して、「私」の青春を全力を以てダメにすることに奔走する小津。
彼こそは、作中で最も「私」を理解し、愛してくれている存在だと思うのだが(実に迷惑きわまりない愛だがw)「彼」は本当に人間なのか!?
このお話、リンクのつながりのある某氏が激しく絶賛していたのだが、読んでみてなるほど!!と納得した傑作でありました。