目は口ほどにものを言い・・・
最近、独身の(やや駄目な)大人の男が少女を引き取ったり、交流したりするお話がどうも話題作にあがるようです。
つい最近、映画にもなった「うさぎドロップ」などそうですし、以前から私も読んでいた「高杉さん家のお弁当」もそう。
そして、この「これは恋のはなし」もそのカテゴリーに入るようです。
放置されていた祖母の古い家に越してきた(かっては)売れっ子作家だった31歳の内海真一。
ハードボイルドな作風に売っていた彼も、最近はスランプ気味。
その真一の家に、森本遥(はるか)という10歳の少女が、庭で猫を飼いたいと申し出てくるところからお話は始まるのですが・・・
お話は、主に大人である真一の視点から語られることが多く、この遥というやや家庭に訳ありな女の子との何ともいいようのない不思議な交流が描かれていく、そして、遥は真一に「これは恋なのか?」、当人にももてあますような感情を抱いていく。
断っておくが、そうした感情はあくまでも遥のものであり、真一サイドは彼女に自身の過去を重ねて、やや保護者よりな姿勢を通しています。だから、いわゆるロリ路線とはちと違う。
それに、作者は女性だし・・・というか、こうしたお話って、女性作家の方の作品が多いような・・・かの紫式部しかり(ああ、これを出すとロリ路線になってしまいかねんかwww)
で、冒頭の一節。
目は口ほどにものを言う
絵と物語を同時に進行できる方の強みというのは、この言葉を実際に目で見える形で表現出来ることだなと。
私から見ると、実に「ずるい」(笑)
作中では、真一を主体にしたモノローグが多いのですが、対象的に遥自身の心象を語るモノローグは存在しない。
彼女は、あくまでも、自身の言葉とその表情、そして「目」で己の心を語ります。
最初に圧巻だったのは、二人の出会いの場面。
ここで、真一は遥の「目」に引き込まれ、自宅を訪れた彼女をむげに追い返すことを躊躇ってしまいます。
ここでの真一のモノローグ
「目を逸らせなかった。引き込まれるような・・・ガキの目つきか?ありゃ・・・」
そして、散らかりっぱなしの真一の家を見て、彼の為におにぎりを作った遥がその礼を言われるシーン
さらに、真一に自宅まで送ってもらった後、彼の背中を見送る時の表情
学校でいじめにあったものの、それを切っ掛けに真一の優しさに気づいた時の表情(但し、真一には自分が優しいと言われる理由が理解出来ないww)
極めつきは、最新三巻でのシーン。これはあちらこちらのコミック感想系サイトやブログでも取り上げられていますが・・・
途中経過は色々ありますが、ちょっと口の軽そうなお友達(元いじめっこ)に彼女が語るシーンでありますが、この時の彼女の台詞が凄い。
「真一さんはなにも悪くないの。悪いのは私だから」
「これ以上真一さんの迷惑になりたくないの。もし真一さんの迷惑になることをする人がいたら、誰であろうと絶対に許さない」
「真一さんのことは、私が守るから」
・・・いや、これ10歳の、いや小学生の台詞じゃないだろう!?
これを大人びているととるか?それとも単なる「異常な」子供ととるか?
異常だとしても、彼女にそうした言動をとらせる・・・だからタイトルは「これは恋のはなし」ということなのか・・・
このお話のもうひとつの肝は、強い少女である遥のキャラクター性とともに、作家である真一の感性かではないかと。
彼は、作家ですから、色々とだらしないとは言っても、実にセンシティブな人種でもあるんです。
だから、同級生の編集担当に「遥をモデルに恋愛小説を書け」と言われても、反発しつつも、ふとした弾みで遥の成長したビジョンを垣間見てしまう。いや、見えてしまう。
ちなみに、この遥の成長した高校生くらいのビジョン(幻影)、私の中にある13号のビジョンに近いものがあった(分る人だけが分ればいいww)
ちと脱線したが、結局、真一は遥をイメージしつつ、恋愛小説を書いてしまうのだが、この小説を(小学生なので)半分くらいしか理解出来ないまま読んだ遥に、真一が言う台詞がふるっている。
「勘違いするなよ。あれは作りもの、フィクションだ。安易に作家の願望だと思うな。全部、計算されてるんだよ」
まぁ、言わんとするところは分りますし、それはきちんとわきまえなければいけない部分。
しかし、小学生相手に言うには、いささか大人げない気もするが(笑)
最後に、少女とおっさんの交流話がいま話題作に多いというのなら・・・
川原泉先生、あなたの時代がやってきたようですよ(笑)