突発的に思いついた。
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むかしむかし、あるところにとても仕事熱心な猟師がおりました。
名前を若堀君と言います。
今日も一日猟を終え、家を帰ろうとしたら、昨晩若堀君がしかけておいた罠に一羽の鶴がかかっておりました。
「いかん、鶴なんぞ狩っていたことがばれたら、林野庁の人にライセンスを取り上げられてしまう」
仕事熱心な若堀君は、そう考え、鶴を罠から逃がしてあげました。
助けられた鶴は、罠をしかけたのが若堀君だとも知らず、何度も何度もお礼を言うように頭をさげ、その場から飛び立っていきました。
それを見送った若堀くんは、仕方なくまた罠をしかけ直しました。
翌日の夜遅く、若堀君が一人暮らししている家に、うら若い娘が尋ねてきました。
「田舎の家に泊まらせてもらう企画でロケに来ましたが、スタッフとはぐれてしまいました。今夜一晩泊めて下さいませんでしょうか」
人の家にいきなり来て田舎呼ばわりとは失礼な話だと若堀君は思いましたが、そこは根はいい人の若堀君、快く一夜の宿を提供することにしました。
「ありがとうございます。それで止めさせて頂いてこのようなことをお願いするのも厚かましいのですが、今宵一晩、部屋の中を覗いたりしないで下さいね」
娘がそう言うと、若い女性の部屋を覗くなど、そんなことは絶対にしないと若堀君はこれもまた快く受け入れました。
その晩、娘が泊まっている部屋からはひっきりなしに大きな音がしていましたが、若堀君は「随分と寝相の悪い娘さんだな」と大して気にしませんでした。
翌朝、顔を合わせた娘さんは、何だか目の下に隈をつくっていました。
さらに、娘さんは
「申し訳ありませんが、もう一晩泊めて頂けないでしょうか?いえ、機織機のマニュアルが分りにくかったもので……」
と懇願してきます。
ワケの分らないことを言う娘さんだ、と若堀君は思いましたが、これもまた大して気にせず快諾しました。
次の夜、また娘さんの部屋からは大きな音が聞こえてきます。
若堀君はこの夜も大して気にせず、ぐっすりと寝入っていましたが……
「ちょっと!ちょっと!」
夜中に突然娘に起こされてしまいました。
一体何事かと若堀君が娘に聞くと
「少しは気にして下さいよ!」
と怒った顔で言われてしまいました。
「一晩中、部屋から大きな音がしているんですよ?気にしましょうよ」
そう言われても、寝ている人の部屋を勝手に覗くのはいいことじゃないから、と若堀君が言うと
「あんな音をたてていて、寝ていると考えるなんて……それに音がしているのにぐっすり眠れる方もどうかと思います!」
とさらに抗議されてしまいました。
「それでなくても、若い……その、きれいな娘が隣の部屋に寝ているんですよ……やっぱり、気になるというものでしょう?」
「別に?」
若堀君がそう答えると、娘はその目に大粒の涙を浮かべてしまいました。
「いや、若堀さん、いいですか?わたし、自分で言うのもなんですけど、これで結構スタイルも顔も良い方だと思うんですよ。そんな子が隣の部屋にいるんですよ。覗きたいとか思わないんですか?」
「全然……大体、どうして僕があなたの部屋を覗きたいと思わないといけないんですか?」
「思うものなんです!」
娘はきっぱりとそう答えます。
「それが健全な人間の男性というものでしょう!?もうリピドーむらむらで、はぁはぁ言って、悶々ともだえて、畜生、たまんねえぜとか言って足音を忍ばせて覗こうとするのが本当でしょう?」
娘がそう言うのに、若堀君は若い娘さんがそういう物言いをするのは感心しないよ、と諭します。
「もういいです……もう、ここまで来たら、全てお話ししましょう。わたしは二日前、あなたに助けられた鶴なのです。何とか恩返しをしたいと思い、夜な夜な」と自分が泊まっていた部屋の扉を開け放ちます。
「こうして、機織をしていたのです」
そこには大きな機織機がありました。
それを見た若堀君が
「凄い、これどうやって入れたの?あとでちゃんと運び出してくれるんだろうね?」
と言うと、娘は急に怒り出しました。
「つっこむところ、そこ!?」
「そうか、道理で昨日今日と電力メーターがやたらと回っていたと思った」
「そこでもねえよ!というか、毎日、メーター見てんじゃねえよ!」
随分と口の悪い娘です。
「そして、出来上がったのがこの織物です。これを市場に持っていけば、高い値段で売れると思います……か、勘違いしないでよね、あんたの為に織ったんじゃないんだからね!」
そして、多分、娘も自分が何を言っているのか分っていません。
「本当なら、この後、恩返しの諸先輩方の例にならうと、恩人の方とその……」
言いつつ、娘はもじもじと顔を赤らめていきます。
「一夜のちぎりをかわして、仲睦まじい夫婦となるのがならいなんですけど……」
ちらりと顔を赤らめたまま、娘が若堀君を見ますが
「え、どうして、僕があなたと結婚しなくちゃいけないの?」
と若堀君が真顔で言うと……
「こんちくしょーーーー!!」
娘は鶴の姿に戻り、若堀君を口汚く罵りながら、飛び立っていきました。
翌日、若堀君のしかけた罠には若い雌の狐がかかっていたという……
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