さて、すこしでも進めておくか > 怖くない怪談(仮題)
今日は、下書き、ラストまで書ききれるかな・・・
この間、某所チャットにて、私が振った話であるが、小説の記述方式、一人称と三人称、どちらがいいのか?という話題がありまして
書きやすさについては、人それぞれではあるでしょうが、ひとつなるほどと思った意見として
・ハードボイルドを含めたミステリ、推理ものでは、主人公が知っている以上の情報を読者に与えない為、一人称を用いることがある、というもの
私の場合、というより、私の書くモノは、主人公が知り得ないところでも事態が動いていることを表現したいというものもあるので、記述方式は三人称を主体としています。
ところで前回エントリで紹介した「夢色の恋」、i-tunesで購入してしまいましたぜ♪
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「そうだったんですか?」
志賀が語ったことは、谷村にしても初めて聞いたのだろう。
「はい。歌が上手いことで有名な女の子でしたからね。それも、歌謡……いまならポップスというべきかな?そういう系統じゃなくって、本格的に声楽を志していたちょっとませていた女の子。親御さんとご一緒に旅行中に交通事故で……」
「はい……。その子が好きだったのが、あの“きらきら星”だったんです。何だか、当時の事を思い出してしまったのかしら?」
「そうだったんですか」
谷村と志賀の話を聞いて島崎が得心したように呟いた。
「本当に仲がよろしかったのですな」
「はい」
キッパリと答える谷村を見て、美月は少しだけこの目の前にいる自分たちの担任教諭のことを頼もしく、同時に少し羨ましく思った。
「でも……」とキッパリと答えた後、谷村の声が少しだけ沈む。
「事故があってから暫くして……」
「良くない噂が立ってしまってましたね」と谷村の後を継いだのは志賀。
「誰もいない音楽教室から女の子の歌声が聞こえてくるとか、根も葉もない噂がいつの間にか広まって……まぁ、子供というのは怪談話が好きだから」とちらりと美月を見やる志賀。
「はい、その声の主が、死んだその子じゃないかって……そんな噂まで流れてました。わたし、それを知って、悔しくて……いえ、幽霊話にその子を使われたことが悔しかったこともありますけど、どうせ出てくるのなら、わたしのいるところに出て欲しいなんて……いま思えば、そんな変なことも考えていましたね」
そういうものなのか……と美月は、谷村の話を聞きながら漠然と考えていた。美月は、幸い仲の良い人達との死別というものの経験はない。友達、両親は勿論、父方母方ともに祖父母に至るまで健在。
それでも、やはりこうした人達と死別することになったのなら、それはとても悲しいことだろうし、もしそうした人達のことが幽霊話にされて知らない人達におもしろがられていたとしたら……
美月は、無言のまま、谷村に向かって頭を下げた。
いまはそれくらいしか、するべき事を思いつけなかったのだ。
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