映画「白夜行」見てきました。
これ、映画化前にドラマ化されていましたが、実はドラマ版は見ていません。
子供のころの出会い、そしてある事件をきっかけに
・光を追い求めた女
・その光を支える影となることを望んだ男
ひと組の男女が、十年を超える年月に渡って重ねてきた罪のお話。
堀北真希が悪女を演じるのは珍しい。
しかし、この映画で観客である私をずっと捕えていたのは、船越英一郎演じる笹垣刑事と堀北真希演じる雪穂の影となる道を選んだ亮治(高良健吾)でありました。
フィクション相手にIFを想定するのは実におかしな話なのですが、二人が子供時代に遭遇する事件が避けられないことだったとしても
・亮治が雪穂の計画に加担することなく、薬剤師の典子とそのまま平穏に暮らしていたなら
↓
・ささやかで平凡であっただろうが、姉さん女房を持った平和な暮らしが出来ていただろうし
・(恐らくは)雪穂が計画した友人江利子のレイプがなければ
↓
・大学の先輩篠塚は江利子と結婚し、篠塚の妹美佳がレイプされることもなかっただろう。
と、ここまで書いていて思いだしたが、映画の中で観客に分かる範囲だけでも上記2件のレイプ以外にも
・雪穂の陰口をしていた同学年の女学生の拉致監禁
・過去の事件での重要人物である松崎の殺害
・亮治の犯罪を悟った典子の服毒自殺
・雪穂の過去を調査していた探偵の殺害
を、雪穂指示の元、亮治は行っていたわけで・・・
映画終盤で描かれる雪穂の過去を思えば、彼女が過去を封印し、ひたすら上を目指すのも理解できないこともないのですが、何とも凄惨な人生。
高校時代に親友となる江利子の存在も、いわゆる上流社会に接点を持つための利用手段にすぎなかったのでしょう。
劇中、雪穂が篠塚に
「江利子は本物のお嬢様、わたしは偽物だから」
と語るシーンがありますが、あれは劇中雪穂がもらした数少ない本音のひとつなのでしょう。
もうひとつは、レイプされた美佳に夜のベッドで語る話。
江利子に関しては、不遇の境遇からお嬢様学校に入った雪穂にとっては道具だったのでしょうが、篠塚という本物の上流階級の男性が自分でなく江利子に惹かれていくのが許せなかったのかも。
多分、女性としての魅力こそが、雪穂にとっては上を目指すための武器そのものだったでしょうから。
自ら「偽物」と語る雪穂には、それと亮治だけが頼りだったはず。
道具にすぎないと思っていた女が、自分よりも女性として認められるのが許せなかったか?
ただ、欲を言えば、雪穂って、もっと浮世離れしたような美人というイメージが私にはあるんだな、これが(笑)
これ以上のことは言えないが(爆)
しかし、自身、女性として最も忌まわしい行為であると嫌になるほど熟知している雪穂が、自分に近しい女性たちに(おそらくは)躊躇することなくレイプをしかけるとは・・・
雪穂の過去を思えば、実行する亮治とて、それが忌まわしいと感じるだろうとは考えなかったのだろうか?
多分、雪穂も亮治も、どこかで自らの心を殺してしまったのだろうか?
この映画で印象的だったのは、序盤で書いた通り、船越栄一郎と高良健吾。
特に船越英一郎に関しては、「本気の船越英一郎」を見せていただいたという印象。
同じ東野圭吾原作映画「容疑者Xの献身」では、本気の堤真一にやられたが、この映画に関しては船越英一郎、そして高良健吾であると。
高良健吾に関しては、映画「ハゲタカ」にて中華系ファンドに利用される派遣労働者役が印象的でしたが、今回もどこか儚げで狂気にも似た情念を持ち続ける青年の役を好演してくれていました。
フィクションであることにIFは意味がないと書きましたが、それでもあえて高良健吾演じる亮治に関しては聴いてみたいことがありますね。
「君にとって、典子は何だったのか?」
そして、笹垣刑事が長年にわたってこの事件を追いかけた結果・・・
ひょっとしたら、事件発生間もなく、真相を突き止めていたら
↓
雪穂と亮治の犯行
江利子がレイプされることも
松崎が殺されることも
美佳がレイプされることも
探偵が殺されることも
なかったのだろうなと考えると、笹垣刑事の心中はとてつもない後悔の念でいっぱいだったのであろうな。
終盤、遂に亮治に辿り着いた笹垣が切々と訴えるシーン、本気の船越英一郎の演技は最大の見どころでありますよ。