「ご近所SF さくら色旅団」(ブログ版下書きバージョン)インデックス
さて、いよいよその十三ですね。
サイエンスとテクノロジーと妖怪と天津丼を愛する男としては、妖怪パートは色々試してみたいこともあり。
閑話休題
13号ちゃんギャラリーに、APRIさんより、掲示板に投下して頂いた小野寺ひずる嬢を展示。
リアルでテンぱっていた時期だっただけに、あのギザカワユサ(*~~*)には癒されました。
ありがとうございます。
そして、再び閑話休題
「さくら色旅団」その十三であります。
登場するネコさんのビジュアルイメージは、ミシェル・ファイファー版キャットウーマン的な何か(笑)
ハル・ベリー版キャットウーマンにケチをつける気はないが、私にとってはミシェル・ファイファイーだ。
そして、カッパくんは……阿部サダヲを子供にしたバージョン(爆)
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隣のシートへと移る間、ネコさんに手を引かれるサチを見て、町内会の面々の中にはギョツとした顔をした者もいたが・・・・・・。
「まぁ、さっちゃんに本気で危害を加えられるやつなんていないだろう。」ということで、皆特に何か口を出すことなく、大人しく見送っていた。
そうして、隣のシートに移ると、
「何だ、ネコ、座敷童なんか連れてきて。」
と最初に声をあげたのは、サチ命名のところの「カッパくん」。
「いや、それが座敷童じゃないんだって。」
ネコさんは苦笑交じりにそう言うのだが
「座敷童でなければ、何なんだ?」
と逆に問い返される。
「さあ、何だろうね。サチちゃんというのが名前らしいけど。」
ネコさんの答えを聞いて、カッパくんは近づいて、サチの顔をじっと見る。目深に被った野球帽からは、大きな瞳が覗く。その大きな瞳から放たれる強い眼光を据えたまま
「おい、お前。何なんだ?」
「何なんだって?」
サチは、質問の意味が分らず問い返すが
「とぼけるな。」とカッパくん。「あいつらの――。」とサチ達の町内会のグループを指さして「仲間なら、普通のやつの筈ないだろう?宇宙から来たとかいうヤツか?」
「違うよ。」
「じゃあ、何だよ。」
「えーと……。」サチは、少し考え「改造人間。」と答える。
「改造人間?」と反芻するカッパくんであるが、彼自身、意味はよく分っていないような口ぶりだった。
「うん、改造人間。改造人間実験体十三号。少し前までは、十三号って呼ばれていたよ。」
「ふん、変な名前!」
カッパくんのこの反応に、サチはむっとして
「変じゃないもん。十三号も、サチもお母さんがつけてくれた名前だもん。」
「変だから変なんだよ。」
「変じゃない!」サチも負けじと強く言い返す。「じゃあ、自分の名前は何なの?」
「川太郎!」とふんぞり返って答えるカッパくん。
「変!」とすかさず言い返すサチ。
「変じゃねえよ!」
「変だから変!」
いまにもうなり声をあげそうな顔つきで睨み合うサチとカッパくん。
「まあまあ……。」
たまらずと言った体で、間に入ったネコさんは座の中央に並べられた器を取り、サチの前に差し出した。
「そんなにいきり立たずに……ちょっとカッパ、何、喧嘩売っているのよ!」
一方でカッパくんには釘を刺す。
「あたしが連れてきた大事なお客さんなんだからね。それにあんただって、分っているでしょう?この子はひょっとしたら……。」と言いかけたところで
「おい、ネコ。」と低い声で彼女を制す声。声の主は、サチ達からは離れたところで、一人手酌で酒をあおっている長髪の男。母綾子が、「サトリ」と呼んでいた男だった。「あまり余計な口を利くな。いまはまだその時じゃない。あのお方にもそう言われているだろう。それに……。」とサチの顔を見て凄みのある笑みを浮かべた。
「その子の母親にも約束したしな。その子には“手を出さない”と。」
「わ、分っているよ。」
渋々と言った体で答えるネコさん。
「それから、カッパ。」とサトリさん(サチ命名)
「何だよ。」
「お前もそうだぞ。あまり、つっかかるな。」
「分ったよ。」
カッパくんもまた、ネコさん同様、渋々といった体で頷いた。
瞬間、シンとなるが、
「まぁ、ちょっと変な空気になってしまったけれど……。」気を取り直すようにネコさん。「遠慮せずに、いっぱい食べて行ってよ。」と再び重箱を差し出すが。
(うっ!)
その中身を見た瞬間、サチは思わず声を上げそうになった。
重箱の中には、ぎっしりと敷き詰められたアジの干物。サチ自身は、魚類も干物も大丈夫ではあるが、さすがにそればかりの器というのは興をそぐ。
「ははは、バカだな、ネコ。」
サチの表情を読み取ったのだろう。カッパくんが高らかな笑い声をあげる。
「お前の弁当、魚だらけだからな。誰も手をつけないって。」
「何よ。」負けじとにらみ返すネコさん。「あんたの弁当なんか、キュウリしか入っていないじゃない!」
「悪いかよ。」
「悪いわよ。」
「キュウリ好きなんだからいいだろう。」
「あたしだって、魚好きなんだから。アジにヒラメにサンマに太刀魚に……。」
「アジしかないじゃないか。」
「昨日、スーパーで特売だったのよ。」
ネコさんとカッパくんが、サチをおいて言い争っている中、彼女は別の重箱に手を伸ばした。器の中にはぎっしりと敷き詰められた稲荷寿司。
それを二つとネコさんに奨められたアジの干物。
サチは、それらを口に押し込んで、二人の口げんかを見物しながら黙々と食べた。アジの干物も稲荷寿司も、彼女にとってはいささか薄味のように思えたが、それでも十分美味しいと思える味だった。
サチがそれらを食べ終わるまでの間も、ネコさんとカッパくんの口げんかは続いており、彼女は仕方なしに、三つ目の稲荷寿司に手を伸ばしていた。
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さあ、こんな文章を書いていたら小腹が減ってきたwww
お昼は、何を食べようか?