一方、シザースと組み合った敬介は……。
「カイゾーグ!スパインからはあまり手を出すなと言われていたが、こうなっては仕方ないな。相手をさせてもらうぜ。」
仕方ない、と口では言っているものの、シザースの口元は緩んでおり、彼が嬉々として闘いに臨もうとしていることが、この夜の闇の中でも改造人間たる敬介には見えた。
「俺の相手としては、深海開発用改造人間のお前はちょうどいいかもな。」
そこまで口にした途端、シザースの表情が一気にこわばり、次いでメキメキと体の各所から軋むような音が聞こえてきた。
敬介は、組み付いていた腕を咄嗟に放し、間を取ると、彼自身もその両腕を高々と上げた。
「大変身!」
かけ声とともに、敬介の姿は変わった。
全身はシルバーをベースとしたスーツに包まれ、胸は赤いプロテクターで覆われている。何よりもその顔は、銀色の仮面に覆われている。
片や、シザースの方も、その纏う衣服は破れ、赤い甲殻が全身を覆い、その腕は巨大なハサミへと変化していく。
「なるほど、カニか……。」
敬介がそう納得するまでに変化が進んだ頃には、もうシザースには人としての面影はほとんど消え失せていた。ただ、人との共通項は、二本の足で直立していることだけ。
「どうだ、深海開発用改造人間の相手としてはうってつけだろう?」
そううそぶくシザースに対し、銀の仮面の戦士はベルト部分の赤いグリップに手を掛けた。
「お前の言う通りかどうか、確かめてやろう。」
言いつつ、赤いグリップを引き抜くと、グリップの先には細身の剣が。
「このXライダーがな!……ライドルホイップ!」
叫び声とともに、先に仕掛けたのは敬介の変身した銀色の仮面、いや今はXライダーと名乗った戦士。
細身の剣がシザースの身に対し、袈裟切り気味に振るわれるが……。
「何?」
ライドルホイップ、細身の剣はシザースの甲殻に弾き返されてしまった。
「かかか……。」体を変化させたことで、声帯にも変化が生じたのだろう。シザースの笑い声は、先ほどよりも甲高くなっていた。「だから、言ったろう。お前の相手に、俺はぴったりだってな。」
「なるほど。」
対してXライダー、敬介に慌てている様子はない。こうした局面にあったことも、いままで数え切れずあったのだろう。攻撃に跳ね返されたにしては、落ち着いていた。
「それならそれで戦いようはある。」
「言うだけなら、何とでも言えるぜ。やせ我慢しているんじゃねえ!」
自信に満ちたその言いように、シザースの方が感情的になっていた。
このシザースの挑発に敬介は乗らず、代わりに手にした細身の剣、ライドルホイップのグリップを握りなおした。そして、その赤いグリップのボタンをひとつ押す。
「ライドルスティック!」
剣から棍棒状に変化したライドルと呼ばれる武器を、敬介はシザースにつき立てた。
「だから効かないって言っているだろうが。」
シザースの声を敬介は、ここでも無視。代わり指先はライドルのグリップの別のボタンに。
「ライドルロングポール!」
シザースに突き立てられた棍棒が、音もなく急激に伸び、シザースもそれに押し出される形で、グリーンリバーの店舗から通りへと飛び出した。
「野郎!」
すぐに起き上がろうとするシザースだが、その身にはまたしてもライドルがつきたてられる。そして、敬介はつきたてたところを支点として、ライドルを棒高跳びの棒のようにしならせその身を上空へと。
結果、ライドルは今度は縦方向、シザースを地面に縫い付けるように押さえつける形となり、シザース自身は立ち上がれないまま、夜空に舞う敬介、いまはXライダーと名乗る彼の姿を見上げることとなった。
「やべえ!」
シザースもこの段階になって、遂にその余裕が失われてしまったようであるが、時としてはすでに遅かったのだろう。彼は、上空から聞こえる敬介の叫びを耳にする。
「エックスキ~ック!!」
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