とりあえず、(16)改訂版です。
次のアップ分から、本当に新展開のパートとなりますね。
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暗くなり、人通りが途絶えがちな商店街に、三人の男達が集まっていた。
その視線の先には、洋菓子店グリーンリバー。
「さて、そろそろ始めるか。」
最初に口を開いたのは、スネイルと呼ばれる男。
「野次馬が湧くと色々面倒だからな。まずはスケール、お前の力で周辺環境を整えて貰う。」
このスネイルの要請に、スケールは黙って頷く。
「スケールの準備が終わったら、行動開始だが……シザース。」とスネイルは、三人の中でも一番年の若い男を呼ぶ。「あくまでも、第一優先は、ドクター岡部の身柄確保、次があの秘蔵っ子だ。交戦が目的じゃない。カイゾーグとやり合うことになっても、決して深入りするなよ。」
「分っているよ、用心深いな。」
不平気味に呟くシザースを、スネイルは鋭い視線でにらみつける。
「シザース、俺は命令しているんだ。」
「わ、分ったよ……あんたに逆らう気はないよ……。」
「ところでスネイル。」ここでちらりとシザースを一瞥した後、口を挟むのは、スケール。「その秘蔵っ子の方は、向かいの店に入っていて、あそこにはいないが?」
「構わん、言ったろう。第一優先は、ドクター岡部だと。彼女を確保してから、秘蔵っ子のことはゆっくり手を打てばいい。欲をかきすぎると、目的を間違えることになる。」
「なるほど。」
スケールが納得した様子を確認したスネイルは、再びシザースを見、そして言った。
「では始めるとするか……。」
スネイルのその声を合図に、三人の姿は通りから一瞬にして消えた。
緑川綾子と神敬介が睨み合う中、不意に店内の電灯が点滅を始めた。
「何?」
誰ともなしにそう呟く中、電灯は完全に光を失い、店内は闇に包まれた。ガラス越しに見える通りの街灯もいまは光を失っている。
その不自然さに、敬介は警戒を強め、杏子は怖さのためだろう、敬介の袖口を必死で掴んでいる。
「ドクター岡部、我々と一緒に来て貰おう。」
闇の中から声がした。
綾子と清崎、そして杏子と敬介も知らないが、それはスネイルの声。
「ドクター岡部を引き渡すのなら、他の者には手を出す気はない。」
動揺する一同をさらに追い打ちをかけるかのようなスネイルの声。しかし、敬介はその声を一蹴した。
「経験上、そう言って約束が守られているのを見たことはないんだがな。」
敬介の声には、全く動揺が感じられない。こうした局面には、何度となく遭遇しているのかもしれない。
「カイゾーグ。お前には用はない。黙っているのなら、我々としては、戦闘を望むことはないのだがな。」
「俺をカイゾーグと呼ぶお前らなら、こういう時、俺がどう動くか、どう考えるのかくらいは見当つくだろう?」
「そうだな……。では致し方ない。」
その言葉が合図となって、グリーンリバーと通りとを隔てるガラスがけたたましい音ともに砕けた。その砕けたガラスを踏みしめながら、綾子に近づく影
スネイルの声で、一同の注意は外の光景から引き離されていたのだろう。ガラスの外にいる存在に気づくのが遅れてしまった。
その影の正体はシザース、シザースに、敬介は「早く逃げろ!」と叫びつつ、躊躇することなく飛びかかった。
弾けるように動き出す清崎と綾子、杏子はそれよりもさらに遅れる。遅れた杏子の手を、一旦足を緩めた清崎が引くが、その手ごたえが急に重くなる。
(なぜ?)
清崎が不審に思って振り返ると、そこには目を閉じた杏子の姿。
意識を失っているようだ。
「ふふふ……ニンゲンどもに騒がれると色々と面倒なんでな、ちょっと特殊な薬品をばらまかせて貰った。眠っているだけだから、心配はいらん。」
杏子の意識の失われた理由。その答えは、スネイルの声が教えてくれたが、肝心の姿は相変わらず見えない。
「さあ、いま意識のあるのは、俺たち改造人間だけだ……。遠慮なく騒ごうじゃないか。しかし、ドクター、あんたは何で意識があるんだろうなぁ……。」
スネイルの声に反応して綾子の顔が青ざめていたのは、決して外が暗いせいだけではなさそうだった。
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ということで、ごめんなさい。Xキックは次回持越しです。