魔王「勇者よ、よくぞここまで来た。褒めてつかわすぞ」
勇者「魔王、お前に褒められても嬉しくはないぞ」
魔王「ふふふ、褒めるだけではないぞ。その腕前、実に惜しい。どうだ、年俸三億、複数年契約で我に仕えぬか」
勇者「何だと?」
魔王「それだけではない、ストックオプションもつけよう」
勇者「金だけで俺が動くと思うのか」
魔王「金だけではないぞ、リフレッシュ休暇は最大二週間、結婚後は育児休暇もつくし、魔王城には保育園も完備。さらに魔王軍は各医療機関とも提携して、フィジカルだけでなく、メンタル面でのケアに関しても各専門家の意見を仰いだ労務環境を目指しておる」
勇者「ふふふ、魔王よ、お前は何も分かっていない」
魔王「何だと?」
勇者「一生懸命仕事をしていれば報酬や恵まれた待遇なんかいらないと思えるんだ、俺は教会でそう学んだ。そして、過酷な環境でも休みなく働き、無理だと言われることにも取り組むことこそ大事なことなんだ」
魔王「・・・」
勇者「無理だ、無理だというのは嘘つきの言い分だ。無理だと思っていてもやり遂げれば、それは無理じゃなくなる!」
魔王「いや、勇者、お前は騙されて・・・」
勇者「だから、俺は働いて働いて死ぬまで働いてみせる。魔王、魔王軍は今日で終わりだ」
こうして、今日もまた勇者の手によって、優良企業は滅ぼされ、世界はブラック企業によって治められているのだった。