ぶつ切りで、本当に申し訳ないです。次でおわりですので。
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それからのこと。
奥方様と僕とおちびさんは、いくつもの国境を越え、いつしかずいぶんと北の方にまでやってきていた。
ここまで来てしまえば安心と奥方様は思ったのか。
立ち寄った村で、村長(むらおさ)と何やら話をし、手持ちの金銀のいくつかと引き替えに村はずれの荒れ地と小屋を買い取ったんだ。
これからは、この村で暮らしていくつもりらしい。
奥方様は、種籾を手に入れるために近場の家々を回り、ついでに畑に手を入れるための道具も調達してきたんだけれど、小屋に帰ってきた奥方様の目は涙でにじんでいたんだ。とても大きな悲しみの匂いもする。
とても酷いことを言われたり、されたりしたんだろうか?
心配して鼻を鳴らす僕を見て、そして泣き出しそうな顔をしているおちびさんを見て、奥方様はにこりと笑って、そして順番に頭を撫でてくれた。僕はその心遣いがとても嬉しくて、そして悲しかったんだ。
奥方様に分け与えられた土地は荒れ放題。小屋にしても同様で、何というか僕達犬でももう少しましなねぐらを用意できるんじゃないかと思うような有様だった。
でも、奥方様は愚痴一つこぼさず、少しずつ少しずつ手を入れて、二人と一匹のための住処を作っていった。畑の方も同様で、最初は鍬をふる仕草も頼りなかったし、ただでさえヤケドで荒れた手は血豆だらけになっていたけれども、時が経つとともにすこしずつ様になって、少しずつ仕事も早くなり、そして、三度目の秋を迎えてようやく初めてのまともな収穫を迎えた時には、奥方様は日に焼けた立派なお百姓になっていた。でも、日に焼けて真っ黒になっても奥方様は相変わらず綺麗だったし、僕やおちびさんに向ける優しさは変わらなかったんだ。
秋を三回も迎える頃には、おちびさんもずいぶんと立派になっていて、水引をしたり、肥やしをまいたりとずいぶんと奥方様の手助けが出来るようになっていた。
だから、この頃には僕もずいぶんとのんびり過ごせるようになっていたんだ。
そして、この頃から僕のお昼寝の時間がだんだんと長く、そして回数も多くなっていった。