桜庭一樹「ブルースカイ」読了
読んでいる最中思っていたこと。
「何てミスリードの多いお話なんだ」
このお話の舞台は
・1627年のドイツ
・2022年のシンガポール
・2007年の鹿児島市
の三つ。
それぞれが、この物語の第一部、第二部、第三部という構成だと思っていただければいいかと思います。
まず、ミスリードその一。
第一部のドイツのお話・・・魔女狩りの嵐が吹き荒れる中世世界が舞台であり、「魔女」や「魔法」、そして「システム」というキーワードが散見し、あたかも壮大な「魔法」を巡る物語であるかのよう、早い話が「ファンタジー」であるかのような世界の装い。
このパートでの主人公、マリーという少女の瞳がまるで「空の青」のようという表現・・・タイトルの由来はこれか?と思いきや、これはフェイク。
で、意外なキャラクターがこの世界に入り込み、その後、第二部へ
第二部は、2022年のシンガポール
青年ディッキーは、3Dグラフィックにより、中世のドイツの町並みを再現し、そこに一人の「少女」を生み出す。
え?第一部の中世世界って、ヴァーチャル世界なの?と思わせておいて、これまたフェイク。
そして、第三部へと・・・
ここまで来て、ようやく「ブルースカイ」というタイトルの意味が分かる仕掛け。
ネタバレぎりぎりで言えば、これは日常に非日常が入り込むお話。
ただし、我々が「日常」と思っているものが、物語世界では「非日常」です。
発想としては、おもしろいストーリー構成だと思いました。
個人的には、第一部の中世世界の描写がおもしろく、結構一気に読みふけってしまいました。
17世紀のドイツの田舎町、そのまた片隅で生きるマリーという少女がなかなかにいとおしいキャラクターであります。
しかし、「少女」という存在を「クリーチャー」として捉えるとは・・・