「ご近所SF さくら色旅団」(ブログ版下書きバージョン)インデックス
さて、もうそろそろ終盤戦にさしかかるかな?というところです。
本日は、3月14日。
ホワイトデーでありますが、円周率πの日でもあるのですな。
「さくら色旅団」、可能なら、本日はもうワンステップくらいは進めておきたいものですが・・・う~む・・・
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サチ達の町内会の面々やほかの花見客のグループが、時間経過とともに、思い思いの座り方や姿勢で過ごしている姿とは見事に対照的と言えた。
そうしてややぎこちないながらも、恰好を崩したネコさん、カッパくん、そしてサチの前にして、サンモトさんはニヤリと凄みのある笑みを浮かべ
「では、サチ殿、お近づきの記念にここは一献。」
とどこに隠していたのか一升瓶をドンと三人の前に出した。
「あの……サンモト様、それは……。」
出された一升瓶を見て、ネコさんが何か言いかけるが
「何かな?」
とのサンモトさんの一言にネコさん、そしてネコさんに次いで何かを言いかけていたカッパくんも黙り込む。
いままでの自分に対する態度とは対照的な二人の姿に、首を傾げるサチであるが、そのサチの背後からまた声をかける者が現れた。
「おや、これはお珍しい。サンモト様。」
振り向いたサチの視界に飛び込んだのは、和服姿の妙齢の女性。日本髪が似合う色白の顔に、真紅の唇が映える。
「それに、ネコ様にカッパ殿。あとは……。」言いつつ、その和服美人は腰を屈め、顔をぐっとサチに近づけた。「あなた、どこのお菊人形さん?」
どうやら、サチを人形か何かと思っているようだ。
「おいおい、こいつはお前のお仲間じゃないよ、羽子板。」
その和服美人の勘違いを、カッパくんが正す。
「あら、お人形の付喪神(つくもがみ)じゃないの。」
「あんたとは違うって言っているでしょう。」とこれはネコさん。「あんたは羽子板の付喪神だけど、この子はあっち。」と、自分たちの隣のグループ、サチ達の町内会の集まりをさす。「あっちのグループの子。」
「はあ、それがどうして、ここでサンモト様と?」
「かわいらしいからと、このネコめが勝手に連れてきたのだよ。」とこれはサンモトさん。
「拙者、いや私は私で、このサチ殿には前々から興味があったのでな。まぁ、よいから座れ、羽子板。」
「ではお言葉に甘えまして。」
言いつつサチの横に腰を下ろす和服美人。この時点で、サチの中で彼女の呼称は「ハゴイタさん」に決定。
そのハゴイタさん、サチにすれば、自分の隣に座ったからわかったことではあるのだが、その体躯は驚くほど細い。いや、より正確な表現を用いるのなら「薄い」というべきか。サチは自分でも気付かないうちにハゴイタさんを凝視していたのだろう。
「何、気になるの?」
不意にそのハゴイタさんが、サチに問いかけてきた。
「え、いやそういうわけじゃ……。」
あわてて目を伏せるサチに、ハゴイタさんはほほ笑み
「あなたくらいの年頃なら、まだわたしと遊んでくれるのでしょうね。」
と意味ありげに言うのにサチが戸惑っていると、ハゴイタさんはまた微笑み、サチの頭撫でた。
「あんまり考えなくてもいいんだよ。あたし自身はもう十分あんた達、人の子に遊んでもらったんだから……時が変われば、遊び相手だって変わっていくさ。」
その言い方が、サチにはとても優しく感じられる一方で、なぜだかとても物悲しくも感じられた。
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