ある日の午後、お昼時の喧騒が去った蕎麦屋さんにスーツ姿の青年が訪れました。
聞くと、10年以上前、この店で掛け蕎麦一杯しか頼まず、無銭飲食同然の真似をした家族連れの一人とか。
青年はひとしきり当時の非礼を詫び、あの時の代金と迷惑料がわりにと、お店のご主人に儲け話を持ってきました。
確実に儲かるお話だと言いますが、蕎麦屋さんは生憎と小さなお店で必要とされる大きな資金は動かせません。
それならば、僕が元金を提供いたしましょうと青年は資金面でのバックアップも約束しました。
蕎麦屋さんのご主人と青年は互いに連絡先を教えあい、固い握手を交わしました。
半年後、お蕎麦屋さんは、金融先物で多大な損失を計上し、お店も自宅も全て手放さなくてはいけなくなりました。
一方、青年は手数料で儲けた上、蕎麦屋さんに融資した分も債権回収屋に転売して全く無傷のまま、豪邸で母親と姉と暮らしているそうです。
このお話の教訓は
「儲け話には気をつけろ」
「お人よしと見られたら、骨の髄までしゃぶられる」
「人間、そう簡単に変わらない」
「悪人の改心なんか信用するな」
ということなのです。