「ご近所SF さくら色旅団」(ブログ版下書きバージョン)インデックス
さて、そろそろオチも近づいてきましたが・・・そろそろ同時並行でまとめバージョンの作成にもかかった方がいいんでしょうね。
ところで、結構前になるのですが、リンク関係にある某氏が面白いと言っていた「文学少女」シリーズの第一作に手を出す。
世間ではとっくの昔から注目を集めていたのですけどね(汗
まぁ、映画にもなるみたいだし・・・
小説に目を通した感じでは・・・シリーズの他の作品にも目を通さないと断言はできませんが、第一作を読む限りはいわゆる太宰治オマージュが目立ちますね。
これを、素直にリスペクトととるか、パロディととるか、はたまた冒涜ととるかは、人それぞれかもしれませんが・・・
私は、この作品についても太宰作品に関しても、特に熱心なファンというわけではないので、コメントは差し挟まないでおこう(笑)
で、閑話休題。
「さくら色旅団」、今回はサトリさん対松村さんです。
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「それはともかく……。」
サチの感傷に気付いているのかいないのか、ハゴイタさんは一転話し相手をサンモトさんに戻した。
「サンモト様、その瓶はいくらなんでもいささかまずいのでは?」
「そうか?」ハゴイタさんの指摘に、サンモトさんはネコさんやカッパくんに見せた凄みのある笑みを再び浮かべる。「私ほど、この瓶が似合う者はそうはいないと思うがな。」
一升瓶には、「魔王」というラベルが貼られていた。
一方、サンモトさんを座の中心とするサチ達を横目に見つつ、サチ命名のサトリさん、母親の綾子をおののかせた長身の黒衣の男は立ち上がり、サチとは反対に彼女のいたグループ、町内会の面々が集う場へと歩いて行った。
そして、ある人物の前に腰を下ろす。
松村さんとその奥さんである。
「ほう、珍しいですね。」とは松村さん。「さっきの緑川さんとの話からすると、今日は我々にはちょっかい出さないつもりだったのではないですか?」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。」とはサトリさん。「その時にも言ったはずだが、俺はこれでもTPOとかいうやつはわきまえているつもりなんだがな。それに……。」
とサトリさんは、松村さんと奥さん、この初老の域にさしかかろうとしている壮年夫婦にグイっと顔を近づけて、まるで舐めつけるように両者の顔を見ると
「普通の人間は、心の中を読まれると慌てふためいたり、ひたすら怯えたりするものだが、あんたらは違う。そういうのが全く平気みたいだ。」
と歌うような口調で言う。
「ふむ……。」松村さんは一人頷き「別に読まれても構わないものだからな。あんたが。」と顔をあげてサトリさんを見「人間だというのなら、すこしは慌てもするが、あいにくそうではない。」と柔らかな口調で答えた。
「言ってくれるな。」とはサトリさんの返し。「まぁ、お互い、人間のふりをするのなら、もう少しはそれらしく振舞ったほうがいいだろうよ。」
「考慮しておこう。ところで、わざわざ私達のところに足を運んできたんだ。何か、目的があるんだろう。」
「ああ。」とサトリさんは頷く。「よその星から来たというあんたらが、あの女の子のことをどう考えているのか、すごく興味があってね。」
「女の子……さっちゃんのことかな。」
「そう……十三号という呼び方もするのだったな。」
「その呼び方は……緑川さんはあまり好まないようだけどね。」
「改造人間……というやつだからかい?」
「そうだ。」
サトリの力、人の心を読むというその能力の前では、ぼかした言い方も無意味だと悟っているのか、松村さんはあっさりとその事実を認めた。
「で、あんた達は.あの子をどうしたいのかね?」
問いつつ、サトリさんはまたじっど松村さんの顔を舐めつけるようにしてじっと見つめる。そして、ふっと力を抜くように息を吐きだすと、「くっくっくっ……。」と小さな笑い声をあげた。
「そうか、そうか、そういうことか……。」一人納得したように頷くサトリさん。
「あんた達は、本当に面白いことを考えるなぁ……。サンモト様が興味を持つのも無理がない。いや、あのお方までもがそれに一枚かもうとしているんだからな。」
「あのお方?」とここで初めて口を開いたのは、松村さんの奥さん。
「そう、あのお方だよ……あんた達も人間のふりをするつもりなら、自分たちの住む町の氏神にくらい気を払っていなよ。」
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