Memorial Apricot Pie終幕を前にしての寄り道。
悪い癖です(笑)
ある程度長丁場のお話を集中的にこなしていると、こういう小品を作りたくなるんですね。
いや、だから、悪い癖という自覚はあるわけで・・・・・・
タイトルは、まだ考えていません。
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僕の名前はメレンゲ。
豆腐屋さんの看板犬だったお母さんの子供で、いまは洋菓子屋さんに引き取られて、母さんと同じく看板犬を任せられている。
と言っても、あまり店には出してもらえないんだけどね。
僕のご主人は、「緑川サチ」って言うんだけど、そのご主人のお母さんという人は、本当は犬が苦手らしい。
平和主義者の僕を捕まえて、「本当は怖い」だなんて言うんだよ。ひどい話だと思わないかい?
だから、たまにわざと後ろから声をかけているんだ。
ご主人のお母さんは、その度に飛び上がって喜んでくれるんだ。
僕がお世話になっている洋菓子屋さん、グリーンリバーというんだけれど、このお店というか家には、ご主人とご主人のお母さん、そして清崎というオスの人間がいる。
清崎という人間は、このお店のお菓子作りを一手に引き受けているらしいよ。
……えっと、清崎については、別に言うことはないかな……。
だって、隙がないんだもん……。
そして、もう一人、僕がこの家というかお店にお世話になってから後、もう一人人間が増えたんだ。
マリって言う、僕の愛人さ。
僕の後から入ってきた割には、態度が大きいのは引っかかるけど、まぁ愛人ということで大目に見てあげている。
僕のご主人にして、正妻の緑川サチ。
とてもきれいな人間で、僕は満足している。
おまけにとっても力が強いんだ。
僕が思いっきりリードを引っ張っても、びくともしないんだから。強いのは、なんでも子供の頃からで、ご主人は僕のお母さんの命の恩人らしい。
基本的には、彼女はやさしいご主人で、ご飯と散歩は欠かさないし、僕はとても満足しているよ。
ただ、とても強い人間だから、僕もいまのうちに体を鍛えておかないとね。発情期に間に合うように……。
ご主人は以前は友達がいなかったらしいけれど、少なくとも僕が来てから見る限りでは、何人かの人間がご主人を訪ねてくる。
その割合が一番多いのが、神崎ゆかり。
明るい性格で、グリーンリバーの面々以外では一番信用している人間じゃないのかな?そして、僕の愛人二号だ。
知り合ったのは、マリの方が後だけど、やっぱり彼女は現在僕と同居中だからね。
でも、一番気が強いかもしれない。
この間、足にしがみついたら、思いっきり頭を叩かれたよ。
でも、「いやよ、いやよもいいの内」ってどこかの酔っぱらった人間が言っていたからね。諦めずにまたチャレンジしてみるよ。
もう一人、最近になって、ご主人を訪ねてくるのが、小野坂ひずるという人間。
彼女は、愛人三号……にしたかったけれども、いまは諦めている。
神崎ゆかりにしたように、僕は彼女の足にしがみついたんだけれど、彼女は神崎ゆかりのように僕の頭をたたくようなことはしなかったんだけれど……。
ものすごく冷たい目で見つめられたんだ。
何というか、瞬間、僕が死を覚悟したほどの冷たさだった……。
最後にもう一人。
立花和也という人間がいる。
こいつには、どうも僕のご主人にして正妻の緑川サチが好意を抱いているらしい。
僕は、これでも寛大な雄犬だし、一時の気の迷いにも広い心で応じたいところだけれども、相手に対してはそうもいかない。
でも、この人間の男、ほかの愛人たちと違って、滅多にこっちには来ないんだよな。逆に「学校」というご主人が通う場所では、毎日顔を合わせているらしい。僕も「学校」という場所に行くべきなんだろうな。
まぁ、いい。奴とは近いうちに決着をつける積りだから……。
発情期前には、ケリをつけるよ。
あ、そうそう。僕の周りにいる人間以外のことにも触れないとね。
近くの豆腐屋さんには、僕のお母さんがいる。散歩の時、いつも顔を合わせるんだけれど、相変わらず元気そうで僕は安心している。あと、散歩の途中、よく顔を合わせる相手に「アンコ」っていう黒猫がいる。うちの斜め向かいにある和菓子屋さんの飼い猫で、半分看板猫みたいなものだね。
半分、なんて言い方をしたのは、いま和菓子屋さんは時々しか店を開けていないから。
でも、たまに店を開ける時は、ご主人が必ずといっていいほど、準備の手伝いをしているよ。洋菓子屋が和菓子屋を手伝うのも変な話だけれど、ご主人は子供のころ、ここのご主人、つまりアンコのご主人によくお世話になっていたらしいんだ。ご主人は子供の頃、いまよりもずっと人見知りが激しかったらしいんだけれども、ここのご主人には懐いていたんだって。
だから、僕としても和菓子屋さんとは友好的な関係をとっておきたいんだけれど、アンコのやつ、よく僕にちょっかいを出してくるんだよね。困ったものだよ、全く。
僕の周囲は、そんな感じ。
周りの人間も、立花和也を除いて、ご主人はじめいい人ばかりだし、いまの生活にはとても満足しているよ。でも、これもご主人がいてこそだよね。
そんなご主人が、たまに夜、青いスーツを着て、外に出ることがあるんだ。
思いつめた顔をしたご主人は、普段は僕相手にも見せない高いジャンプをしてどこかに飛んで行くんだけれども、その後ろ姿がとても悲しげに見えるんだ。
いつか、僕にも分らないどこかに消えて行ってしまいそうで……。
だから、そんな夜には僕はついつい遠吠えをしてしまうんだ。
それでも、翌朝になると、ご主人は僕のご飯を用意してくれる。
僕がご飯を食べている間に、ご主人は台所で自分たちの朝ごはんと「学校」とやらで食べるお弁当を作り、それが終わると、ご主人のお母さんとマリという僕の愛人を起こして回る。
三人の食事が終ると、「学校」とやらに出かける前に軽いお散歩。
このお散歩には、この頃、時々ではあるけれど、マリも付いてくるようになったんだ。
散歩をしながら、僕はいつも思うんだ。
こういう朝がいつまでも続きますように、って。
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オカザキ@外回り中(笑)
なかなか生々しいな、メレンゲ氏(笑)
tokuさんの分身は監督ではなくメレンゲ氏ではないかと勝手にほざく僕なのであります。