モノレールねこ(加納朋子) ← 電子書籍
短編集。
表題作の「モノレールねこ」は主人公の少年期における猫を介してのある甘酸っぱい思い出。
その思い出が、大人になった彼にある劇的な状況を作り上げていた。
最初から最後まで、ちょっとほっこりする短編です。
収録されているのは、トータル8篇。
特に印象深かったのは、人の心の哀しさと恐ろしさを描き抜いた「シンデレラの城」
現実と幻想、現世と幽世との境界線が曖昧になったある「家」の物語。
そしてもう一編は「バルタンの最後」
バルタンとは、主人公(!)のザリガニのこと。
少しずつずれて、でもお互いを必死に思いやる家族の姿、それを見守るバルタンの視線があったかい。
バルタンはイイヤツだし、この家のお母さんが実にいい「お母さん」なのです。
コロロギ岳から木星トロヤへ(小川一水)
割とサクッと読めるSF長編。
表紙と「帯」買い。
「帯」については、実際に「書店」でご確認下さい。
時間軸を自在に動き回る超次元生物「カイアク」と21世紀の天文台観測員、そして23世紀木星の二人の少年の物語。
時間軸に捕らわれ、21世紀と23世紀の間で身動きがとれなくなった「カイアク」、そしてその「カイアク」の為に生命の危機にある二人の少年を救え!!
時間と空間を超えた救出ミッション!!
よくこんなこと考えついたな、と感心しきり。とにかくアイディアとスピーディな展開が魅力。
割と想像力は駆使されることを要求はされるが、これこそがSFの醍醐味。
しかし、お話の題材として「腐女子」ネタは必要だったのか?(笑)
ペンギンハイウェイ(森見登美彦) ← 電子書籍
狸でもない、京都でもない、腐れ大学生でもない森見作品。
地理的な場所は明記されていない、どこかの地方都市。
主人公は小学生のアオヤマ少年。
いずこともなく現れたペンギンたちの謎を追う彼は、謎めいたお姉さんと出会い、友達のウチダくんやハマモトさんと親交を深めていく。
そして、お姉さんに敵愾心を燃やしたり、いじめっこのスズキくんにくってかかるハマモトさんの強気な態度に見え隠れするアオヤマくんへの幼い恋心がかわいい(笑)
ジャンル的にはSFということになるのだろうが、子供の視点からながら世界の深淵を描き、同時に心地よいジュブナイルの世界を描いた本作は、森見作品とは思えないキレイさだ。
なにげにニコニコ動画で森見登美彦関係で検索をかけると、こういうものを見つけた。ペンギン・ハイウェイのPV風アニメーション。