小説三編感想なり。
読書メーターの「読んだ本」リストを見ながら思い出しつつ書いているのですが、冊数にすると存外読んでいないものですね。
大抵、病院の待ち時間や通勤の電車内で読んでいることが多いんですけどね。
ハルさん(藤野恵美) ← 電子書籍
作者様はどうやら児童文学出身のよう。
その為か、文体も展開も優しげ。
ジャンル的に言えば日常系ミステリといっていいのでしょう。もう少し突っ込むと米澤穂信の古典部シリーズを緩くした感じといったところか。
もっと突っ込めば、加納朋子のささらさや (幻冬舎文庫)かと最初は思ったくらいだが(笑)
ささらさやと違うのは、主人公が男であること。
妻である瑠璃子さんを亡くした主人公晴彦ことハルさんが、悪戦苦闘しながらも一人娘の風里(ふうり)ことふうちゃんを育てる中で遭遇する「事件」を綴った作品集、それが「ハルさん」です。
そのひとつひとつの「事件」を、瑠璃子さんの魂に導かれながらハルさんは解いていくのですが、実は最大の謎解きは物語の終盤、ふうちゃんの結婚式でのこと。
ふうちゃんが結婚相手に選んだ男性、なぜ彼女は彼を愛するようになったのか?
その答えが、そこに到る彼女の成長の物語と見事に符合するのは見事。
そして、その答えはハルさんという一人の父親の生き様は決して間違っていなかったのだと、読者に教えてくれます。
こうして彼は屋上を燃やすことにした(カミツキ・レイニー) ← 電子書籍
ラノベです。
モチーフは「オズの魔法使い」
ただし、ファンタジーに非ず。
やや、というよりかなり歪んだ青春小説です。
ある日、屋上から飛び降りようとした女子高生、後にドロシーと呼ばれることになる加奈。
その屋上で彼女は、ライオン、カカシ、ブリキと出会う。
以後、彼女は
勇気のないライオン
知恵のないカカシ
心のないブリキ
三人の物語に付き合っていくことになる。
そして、三人の物語のつながりをドロシーが知った時・・・・・・タイトルの意味が明らかになるという仕掛けであります。
空の向こうの虹を追いかけて、原点のドロシー達は旅をしていきますが、この作品のドロシー達は「空」を追いかけていく中で虹を捕まえることが出来たのでしょうか?
その答えは「空」とドロシー達4人だけが知ることになるのでしょう。
夏の水の半魚人(前田司郎)
純文学です。
柄ではないのですが、タイトル買いです。
主人公は小学5年生。
帯で町田康が「小五脳」と言っていますが、まさにその通り(笑)
小五男子としての行動に「ああ、あるある」と思いつつ読み進めておりましたが、私いまひとつ理解していません(爆)
ただ、ヒロイン(?)の海子と主人公との関わり方を見ていると、転校生+女の子ということでちょっと意識してしまう主人公魚彦・・・・・・分かる、分かるぞお(笑)
小学生の時点で感じるエロティズムとか(初恋とはちょっと違う)色々と懐かしい感じを味わいましたよ。