記事一覧

トップ > 感想文 > 小説感想

今年最初の小説感想文・・・かな?

たまには何かエントリをあげておかないと死んでるんじゃないかと思われるので(笑)

パーフェクトフレンド(野崎まど)

初・野崎まどであります。

正直言って、私の中でまだ消化し切れていない(^^ゞ
はっきり言ってワケがわかないよ(゜ω゜)

お話の内容としては、超天才児ではあるが友達のいないさなかちゃん。そのさなかちゃんが突っ込み気質にして、生来委員長体質の優等生理桜ちゃんと出会い、友達になるお話と言ってしまうと簡略化しすぎだろうか?
話の後半部分は一種のミステリーと言えないこともないが、その謎解きはちと消化不良・・・と思ったが、どうも他の方のレビューを読むと、「2」という作品で他の同作者作品群とともに連動しつつ種明かしがされている様子・・・・・・おのれ、ディケイド商法がここでまで(違)
それにしても、このお話の中盤部分でのさなかちゃんと理桜ちゃんに関わる「事件」には読んでて本気で驚いた。あまりの超展開に・・・・・・まぁ、それが先ほど言ったミステリーに繋がるのですがね。

ただ、私なりにこのお話での最大のミステリーは、友達がいない、なぜ必要なのか分からない、いらない、と述べる天才児さなかちゃん・・・・・・なのに、どう考えても、理桜ちゃんに対しては一目惚れっぽい部分(笑)二人の出会いは、やはり運命だったのだな。などと言うと、さなかちゃんが運命方程式を真剣に考えてしまいそうな気がする。

この作品を含め、野崎まどに関する私の評価は、保留。もう何作品か読んでから定めたいと思います。
しかし、新しい作家さんに対してこういう評価にならざるを得ないなんて、私の「老い」の表れか・・・


あなたへの想い(矢口敦子)

この作家さんも「初」であります。
野崎まど作品に対しての私のスタンスに「老い」と表記しましたが、これは私自身が「老い」と向き合わざるを得なかった作品。

北海道で大学に通う真一の元に母・律子の死の報がもたらされる。
疎遠だった母、愛情を受けた記憶もない真一にとって母の死はどこか他人事のようだったが、その母が死の間際メッセージを遺していたことを知る。

「あいたいしんじ」

「しんじ」とは何者なのか?
メッセージの意味は?
ややミステリー的ではあるが、律子という還暦を迎えた一人の女性の生涯がひもとかれていく。

性別の差はありますが、還暦の歳に孤独な死を迎えざるを得なかった律子という女性の生涯は色々胸に迫るものがあります。
一部のレビューに、状況にリアリティがないという指摘があり、その部分には大いに同意なのですが、それでも高齢化が進むこの社会においては律子の「死」は決して人ごととばかりも言えない切なさがある。
最後は、真一を含め若い世代に希望ある終わらせ方ではあるのですが、どうにもその「老い」の描写が頭から抜けない物語でした。

小説感想と小説とは全く関係ない話題

読んだ本の感想につけるべき話題ではないでしょうが、最近またプロレスを見るようになりました。
と言っても、会場に足を運んでいるわけでなく、あくまでも深夜のテレビ、それも録画です。

私がプロレスの情報に目を配っていたのは、新日本プロレスから橋本真也が離脱した頃くらいまで。
その後は、全くのノータッチと言っていい。
きっかけは、元新日本プロレスで現在は主にタレントで活動してる某レスラーのいわゆる「かわいがり」が話題になったこと。
その関係のスレッドを覗くと、「プロレス業界そのものが下火だが、とりあえずいまは新日本の一人勝ち」という話がちょいちょい出たので、「ほう、いまはどうなっているんだろう?」と視聴してみたのです。
いまは、オカダカズチカというスター選手がいますが、彼を見ていて「ああ、10年前に彼のような選手が台頭していれば、プロレスもいまよりは盛んだったろうに」と思ったのですが、10年前ならいま以上に古く悪しき慣習がはびこっていたでしょうから、どの道台頭できなかったか。
ある程度、その悪しき慣習が払拭されたからこそ、そうした人材が台頭できたのだろうし。それ以前はいくらいい人材がいても伸びることなく潰されていったケースが多かったろうなと。
いや、要するにいまは某維新の議員様になったあの方が強い影響力を持っていたのが諸悪の根源のひとつだったと思うんですけどね(笑)
そうそう、悪習といえば、新日本が復調したのは現在のトップ選手達が、道場内での悪習を完全に断ち切ってかららしいです。いわゆる「自分達がされて嫌だったこと、無意味だったことは絶対に下の世代にしてはいけない」これを徹底したかららしいですね。


マグダラで眠れ(支倉凍砂)

物語の舞台は、新たな舞台鉱山都市カザンへ。
新天地に拠点を構えた4人パーティは、いよいよ本格的なチームとして機能し始める。
相変わらずフェネシスはクースラにいじられる日々ではあるが、それでも平穏な毎日が送れるようになった・・・・・・と思いきや、カザン陥落は騎士団を包囲殲滅するための罠だった。
平和な日常から一気に戦火のまっただ中に放り込まれた一行であるが、逆転の可能性も。
それは異教徒の町カザンの伝承。
そして、その伝承にはフェネシスの同族、異形の者達の使っていた技術が隠されていた。
ここで明らかになるが、フェネシスの同族達って、作品世界においてはオーバーテクノロジーの持ち主だったんですね。
そのオーバーテクノロジーを再現し、なおその威力に賭ける切っ掛けは、イリーネの一押し。
イリーネといい、ヒロインのフェネシスといい、このチームはいい女に恵まれているな。

とりあえず、この小説は、魔法抜きの中世的世界観とフェネシスの小動物っぽさとクースラのツンデレっぷりを愛でる物語なのであります。

空に向かう花(小路幸也)

誰も悪くない筈・・・・・・なのに人殺しの罪を背負ってしまった少年がいた。
本人には何の責任もない筈・・・・・・なのに過酷な人生を歩まなければならなくなった少女がいた。
このお話は、そんな二人の子供達、ハルとカホが奇跡的な出会いを果たす物語。

少し前のエントリで触れた「捨て猫という名前の猫」とはいい意味で真逆の物語です。
「捨て猫という名前の猫」では、クソ大人達の自分勝手な都合によって悲劇的状況に置かれてしまう子供達の救いのなさが描かれていましたが、本作では逆に悲劇的状況に置かれてしまった子供達に大人達が「何かせずにはいられない」と微力ながらもその手をさしのべるお話というべきか。
二人の大人、ザキさんとキッペイのあがきながらも差し出す手がたまらなく温かい。それは確かに小さな力ではあるが、その小さな力でさえも浮き世のしがらみは絞り出すに強い心の力を必要とする。
作中一番好きだった台詞はザキさんの「大人は子供の前では必死に大人を演じなくてはならない」というもの。
自分の都合に逃げたり、大人の責任を放棄したりしないのは、強いからではなく、子供達のために強くあろうとするから。
救済と言うにはあまりにささやか、しかしそれがあれば、何とか子供達は前に向かって進んでいける。逆に大人が大人の役割を放棄したら・・・・・・「野良猫という名前の猫」になってしまうわけですね。

銀河に口笛(朱川湊人) ← 電子書籍

正直に言います。世代的にジャストミートです(笑)
内容的には、朱川湊人さんお得意の昭和を舞台にしたノスタルジックな物語。
SFと呼ぶべきか、ファンタジーと呼ぶべきは、人によりけりでしょう。
とにかく、昭和40年代の下町を舞台にした主人公達のグループ「ウルトラマリン隊」の活躍、その一挙手一投足が懐かしくて仕方ない。

物語の主軸は、主人公モッチの語り口で描かれる彼ら、特に不思議な転校生リンダこと林田君であるが、単独エピソードとしては「ミハル」にまつわる話が好きであります。
「ミハル」・・・・・・彼と言うべきか彼女と言うべきか、いまでいうところの性同一障害の少年が抱える苦悩とその開放、おそらくリンダの存在なしには開放されることのなかった彼女の魅力は何とも言えない。同世代だったら惚れていたかもしれないと考える私は色々ともうダメだ。
私の読んだのは、文庫版で刊行されたものを電子データ化したものでしたが、これには単行本刊行時にはなかった本編5年後のエピソードが追加されています。
そこで語られるリンダの存在は大方の予想通りではあるのだが、それよりも長い年月が経った後もつづくウルトラマリン隊の絆が何よりも羨ましい。

朱川湊人さんの作品を読んでいつも思わされるのは、この方、子供の頃の「自分」をちゃんと持っていること。
ある程度年齢を重ねると、子供時代の自分の感覚といまの感覚とが乖離して、全くの「別人」のようになってしまうと思うのだが、この方はいまもあのときの「自分」のままでいるのではないかと思えてくる。
その意味では凄いと思い、また羨ましいとも思ってしまうのです。


アルケミスト-夢を旅した少年(パウロ コエーリョ) ← 電子書籍

実に「らしくない」ものに手を出してしまった(笑)
こうした「文学」など、実に私に似つかわしくない。
その証拠に、読み終わるまでに結構時間がかかってしまった。
ただ、全体の2/3あたりからは、一気読みではありましたが。

羊飼いの少年が老いた王に出会い旅立つところから物語は始まります。
普通、人間、特に私のような面倒くさがりは、一旦腰を据えるともうどんなに閃きを感じても、なかなか腰を上げようとしないのですが、主人公の少年サンチャゴは己の閃き、夢の啓示に従い、錬金術の深淵へと足を踏み入れていく。
ただ、タイトルにアルケミスト(錬金術師)とありますが、少年のめざすものは「宝」であり、錬金術師を目指す話とは微妙に違う。
山野を離れ、街に出て、砂漠に赴き、生涯の伴侶となる少女=ファティマを得、本物の錬金術師に出会い、最後に「宝」を手にする。
人は、己の心の声に真摯に耳を傾ければ、どこまで自由に、幸せになれる。
意地の悪い見方をすれば、一種のユートピアものともいえるが、世界中の人達を魅了した物語であるその理由は、心のままに動く主人公への憧憬ではないでしょうか?
実際には、色々なしがらみを考え(それも結局自分で作っているということになるのでしょうが)、動くに動けないというのが殆どの人々でしょうから。

三連休の最後に小説三作感想

結局、三連休はどこにも出かけられず・・・・・・次の三連休こそ本気出す。

花散里 ヒカルが地球にいた頃(8) (野村美月)

今回は花散里こと花里みちる(級長)がメイン。
原典では、光源氏の信任厚きインテリ女性・・・・・・だったかな?
彼女の場合は、主人公を巡るヒロインの一人式部帆夏と同じく、ヒカル絡みでなく純粋に是光に好意を持った女の子だと思ったが・・・・・・級長お前もか!?
しかし、級長哀れ・・・・・・巻全体を通しては、彼女よりも是光自身とその周囲の環境の変化が強く印象に残ったエピソードとなった。

前巻で母親に捨てられたトラウマに区切りをつけた主人公是光。この巻ではいままで外見のことがあったとはいえ、周囲のクラスメイトとの距離を縮めた模様。もうコミュ障とは言わせない。
そして、この巻では実は8巻までに至る各巻のメインヒロインが総出演しているから面白い。これは、彼を巡る恋愛模様の中でも距離を縮めつつある葵、帆夏といえども気が気がじゃないわ(笑)朝ちゃん?・・・・・・いや、まぁ俺は個人的に応援している・・・・・・ですよ・・・・・・
で、その葵、帆夏の両ヒロイン、この巻で遂に告白、しかも同時告白!!
葵、帆夏一歩も引かない修羅場エンド・・・・・・と思ったら、二巻(夕顔)で是光と両思いになりながら分かれることになった夕雨からのメール。
ダブルどころか三つ巴の修羅場!?
・・・・・・おいてけぼりの朝ちゃん(ToT)

これで物語の核のひとつ、是光と寄り添うヒロインは誰なのか?の焦点は、葵、帆夏(紫)、夕雨(夕顔)に絞られたか?
しかし、普通の源氏物語好きがトリプルヒロインで押すなら、葵、紫、明石になりそうなものだが、夕顔か?夕雨が夕顔変じて明石の君に変貌していたという展開があったりして。

星のかけら(重松清)

謎の幽霊少女フミちゃんに出会った小学六年生のユウキ。
「星のかけら」と呼ばれるガラス片を巡る不思議談。
これ、本来は私のようなおっさんではなく、リアルタイムで少年少女時代を過ごす人達こそ読むべきお話かもしれない。
生きていることは、とてつもなく幸運な巡り合わせの結果・・・・・・よくよく考えれば当たり前のことなのであるが、それに対して感謝の念を持って生きている人がどれだけいるだろう?どこにでもありそうな国道の交差点、そこを起点として見えてくる自分を取り巻く人々のつながりの不思議。「事件」に関わった少年少女は間違いなくいい「成長」をしたのだろうな。ところで私もきつめの性格でいいので同級生の女の子の幼なじみが欲しかったです(笑)

月への梯子(樋口有介) ← 電子書籍

樋口有介版「アルジャーノンに花束を」・・・・・・最初はそう思っていました。
都内でアパートの大家をしているものの、ちと知能が足りないと言われている僕さんこと福田幸男40歳。
外壁工事の途中で部屋に死体を発見したショックで梯子から落ちた僕さんは、その事故を契機に知能が上がり、徐々に自分の周囲がただならない状況であることを察し始める。まず、自分以外のアパート住人全員が身元を詐称していたこと。アパートの契約事務を委任していた不動産屋が自分に無断でマンショに改築した挙げ句、入居契約を好き勝手に執行しようとしていること等々。
そんな人の悪意を知ることとなりながらも、アパート住人の身元をひとつひとつ明らかにし、時には救いの手をさしのべながらも問題を解決していく僕さん。
ああ、これはチャーリー・ゴードンとは違い、僕さんはハッピーエンドを迎えられるのかな?と思っていたら・・・・・・

「アルジャーノンに花束を」どころか「ウソだと言ってよ、バーニィ!!」的なエンディング。いや、そりゃないですよ、樋口センセ。
あのエンディングだと、遊都子ちゃんへの救済もあの終盤に見せた一人の平凡な少女としての安寧も笑顔も得られなかったということじゃないですか!?
内容に不満というわけではないが、ちと後を引くバッドエンドものでありました。
それとも、作中の僕さんの活躍は、あくまでも「ありえた世界の幸せ」ということなのかな?

腹に力が入らないと何も出来ない件

折角の三連休ですが、腹具合が悪くて何も出来ませんorz

言壺(神林長平)

はっきり言って、読んでみたがよく分からなかった(爆)
ただ、そのイメージがとんでもなくぶっ飛んでいることだけは理解出来る。
でも以前読んだ「プリズム」もそうだが、理解出来ないと言いつつ、どうして私は神林作品に惹かれるのだろう?
作品内で、結局人類も文明も「言葉」というものにハックされているわけだが、私もまた神林文学とでもいうべきものにハックされているのだろうか?
SFというと理系的な思考法を駆使させられるという固定観念に陥りがちだが、この作品はその論法で行くなら見事なまでにその観念を覆す「純文系SF」というべきか。


魔女の絶対道徳(森田季節) ← 電子書籍
魔女の絶対道徳2(森田季節) ← 電子書籍

私にとって森田季節といえば「不動カリンはいっさい動ぜず」だった。
なのでラノベの人とは思っていなかった。
で、「不動カリン」を一読したときは「けったいな小説を書く人だな」という印象を抱いたものだ。

で、「魔女の絶対道徳」である。
どのあたりが「絶対道徳」なのかは分からないが(笑)先述の「不動カリン」とこの作品に対しての第一印象を述べれば、森田季節という方は実に「気持ちの悪いお話を書く人」というイメージ。
もちろん、その「気持ち悪さ」は褒め言葉です。
ラノベにしては過剰とも言える「蘊蓄」を物語に投入して理論武装してまで展開する伝奇小説。
その物語の骨格には、実に「気持ち悪い」背景が潜んでいる。
主人公は、和製魔法使いというべき立ち位置だが、それにしても決して正義の味方ではないし、人々の為に働いているというわけでもない。
彼の立ち位置はあくまでも「異形」の側であり、そこに展開される論理も人間のそれからすればかなりずれている。
そう、この物語は、ポンコツヒロインにして美少女であるヒロイン(異形)を配し、ネタ全開の会話をちりばめて、ライトノベル的体裁を整えながらもかなりインモラルな要素を持っている。
そのインモラルという部分に関して言えば、2でさらに顕著になる。

そう気持ち悪いお話し(褒め言葉)なのだ。

以下、ネタバレ

父、祖父、兄、自分・・・・・・先祖代々同じ女の腹から生まれたなんて家系に身を置くことにあなたは耐えられますか?
そして、自分を生んだ女を恋人とし、妻とすることを運命づけられていることに・・・・・・

リハビリ兼ねて感想あげ

調子が悪い日が続くが、生存報告を兼ねて読書感想文

捨て猫という名前の猫(樋口有介) ← 電子書籍

”柚木草平”シリーズ第9作にして、私的シリーズ最高傑作。
物凄く強引な理論だが、世の”大人”たる人々は、これと天童荒太の「永遠の仔」は読んでおくべき。
両者の共通点は、大人達の身勝手さによって不幸な境遇に追いやられる子供たちの悲劇であること。

樋口有介作品には、全てではないにしろその根底には子供たちを踏みにじる大人達の身勝手さへの怒りがある。
私が読んだ中でも、本作しかり、デビュー作「僕と僕らの夏」、「窓の外は向日葵の畑」、「不良少女」etc
本作は、その怒りの部分をかなり前面に押し出している。

読み進み事件の真相が分かっていくにつれ見えてくる、本作の主題である自殺した秋川瑠璃という少女の抱えた逃げ場のない絶望感
柚木が事件に関わる切っ掛けを作ることになった少女、青井麦の抱えた孤独

そして二人の少女の悲劇の背後に見えてくるどうしようもない大人達

本作においても主人公柚木は、洒脱な台詞や行動を見せながらも、女にもてて女にだらしない。
しかし、結局のところ、彼が事件に本気で取り組むことになった原動力は「青井麦」という少女の為なのだろう。
柚木と彼女との関わりは、他のヒロイン達と異なり、決して「男と女」のそれではないのだが……
物語を振り返った時には、読者の誰しもが青井麦の行動の一つ一つに哀切を感じざるを得まい。

物語の読後感は、他のシリーズ同様切なく苦々しいもので、エンタメ作品ならではの爽快さとは無縁だ。
ただし、ラストで柚木の娘(小六)加奈子が見せる子供ながらも女らしいしたたかさは、ささやかな救いを読者にもたらしてくれる。

話は脱線するが、ヒロインの一人にして事件解決の鍵となる少女「青井麦」
この名前は、仏文学の「青い麦」に引っかけているのかなと。
原点(?)とは男女の立ち位置が逆のようだが。

小説感想7冊

パシフィックリム見てきましたぜ!!
これ、怪獣好きには絶対お薦め。
ネタバレになってはいけないので、例によって感想はまだ寝かしておきます。

空ちゃんの幸せな食卓(大沼紀子)

この作者様は、「真夜中のパン屋さん」で有名な方だとか・・・・・・私は読んでいないけど(笑)
収録されている作品は三点

表題作の「空ちゃんの幸せな食卓」とデビュー作の「ゆくとし くるとし」、そして「僕らのパレード」
いずれもちょっと普通とはずれた家族の物語。
いずれもその芯には人生の悲哀を隠し味としつつも、ユーモアで柔らかく包み込んだ上質なお菓子のような短編小説・・・・・・などと言うと抽象的すぎるだろうか?
私は、基本的にエンタメ嗜好人間にしてダメ大人の国際A代表全日本チームしている自覚はあるが、こういう地味系のお話も好物。

ことに気に入っていたのは、表題作で主人公達が変なあだ名で呼び合おうという下り。
どういうことかというと、喧嘩するような事態になっても、ヘンテコネームでお互い罵りあっていれば、最終的に本気の喧嘩にならないという理屈から(分かるような分からないような理屈だw)
だから、主人公の「空」は「空豆」
主人公の姉「歌子」は「師匠」(歌子→歌丸→師匠)
この家庭内ルールが発揮されるシーン、空が姉を「師匠」と初めて呼ぶシーンは表題作の中でも注目のシーンだったりする。

「僕らのパレード」は、ちょっとほろ苦い少年少女達の心の傷のお話
「ゆくとしくるとし」は、産院を営む母の元に訪れたとあるおかまさんと遭遇した女子大生のお話。


こっちへお入り(平安寿子)

アラサーOLが出会い、のめり込んでいく趣味、それは「落語」
いや、参りました。落研出身者としては昔の血が騒ぐといいますか(笑)
「落語」というのは、演者によって解釈もその価値も大きく変わってくる実に能動的な「物語」なんですよ。
ひとつひとつの「台詞」も演者の解釈によって、意味が違ってくることもある。
そして、そこには現代の我々と大して変わらない庶民の心があり、同時に現代人にとっては目から鱗の人生観もある。
落語にあまり興味がないとかよく分からないという貴方!この本なら、主人公のOLさんとともに落語の世界を楽しみつつそして我知らぬ間に学びつつひたることが出来ますよ♪
主人公の属するのは、市民サークルといいますか、早い話が「素人落語の会」であり、実際に「広島」にはそうした会が生き残ってます。また、某県では私の先輩が実際に知ろうと落語の会を引っ張っていたりする。
北九州は・・・・・・昔は似たような会があったが、いまはどうなんだろ?

これは私だからこそ書いてしまう感想なのですが、何というか古傷というよりも懐かしい傷が心地よく刺激される、そんなお話でありました。


ゲート 自衛隊彼の地にてかく戦えり (1)接触篇 (柳内たくみ)

ゲート 自衛隊彼の地にてかく戦えり (2)炎龍篇 (柳内たくみ)

ゲート 自衛隊彼の地にてかく戦えり (3)動乱篇 (柳内たくみ)

ゲート 自衛隊彼の地にてかく戦えり (4)総撃篇 (柳内たくみ)

ゲート 自衛隊彼の地にかく戦えり (5)冥門篇 (柳内たくみ)

ウェブ発ということでちょっと読んでみた・・・・・・ちょっとの積もりが結局一気に全巻読んでしまった。後悔はない。

西暦20XX年、東京中央区銀座、このど真ん中に異世界と繋がるゲートが突如開き、そこからこれまた異世界の軍勢が東京に押し寄せてきた。
多数の市民が犠牲になるも、日本側は警察と自衛隊の連携により、この脅威を排除。
そして、この事件をきっかけに「特殊地域」通称「特地」への自衛隊派遣が決まる。
ストーリーの大筋としては、自衛隊が「特地」へ派遣され、その世界で思う存分能力を発揮しつつ世界(地球サイドを含む)を変えていき、やがて「特地」を去るまでのお話。
メインの主人公(登場人物がとにかく多い)は、初めて「特地」側の軍勢が攻め寄せてきた時に(偶然)活躍した伊丹曜助陸上自衛隊二等陸尉(旧軍の階級で言えば中尉ですね)
そして、大筋では異世界の美少女と出会いつつ伊丹ハーレム(笑)を築いていくまでのお話でもある。
こう書くとラノベくさいな(笑)いや、ある意味ラノベなんだろうけど。
著者の方が自衛隊出身と言うこともあり、自衛隊の「ハード面」の描写はバッチリ!!
ただし、以下の方はこのお話は読まない方がいい。

(1)人が死ぬシーンがダメ、許せない方
(2)ミリタリーの苦手な方
(3)自衛隊の存在そのものに反対な方
(4)政治的な思想の影響を受けやすい方
(5)リア充爆発しろ派
(6)ウソをウソと見抜けない方

(1)について言えば、とにかく人が死にます。どんどん死にます。
あたりまえです。最初は言葉も何も通じない異世界同士、そして異世界側は中世ヨーロッパの文明レベルで、傍若無人な統一国家「帝国」の支配する世界。
知らない相手が出てきたら、とにかく殺しにかかります。
当然相手をすれば、相手を殺します。そう、これは間違いなく「戦争」のお話なんです。自衛隊も相手を殺すことを躊躇しません。躊躇=私を殺して下さいということですから。
また、異世界の「神」も人が人を殺すことを否定していないという・・・・・・

(2)これはまぁ・・・・・・主人公サイドが「自衛隊」ですからねえ(^^ゞ

(3)これは語るまでもないでょう(笑)

(4)第一部~第二部までは、割と純粋な娯楽作と言っていいでしょうが、後半はちょっとネトウヨ的な(笑)政治観がちらちらと見受けられます。あくまでもこういう考え方もあるのだという範囲で読み流せる方なら問題はないです。しかし、戦争をいかに終わらせるかという政治的プロセスをネット小説で延々と綴ったケースは珍しいのではなかろうか?

(5)主人公、無自覚にハーレム作っちゃいますからね(笑)ただ、この主人この場合は何となくではなく、ちゃんと「実力」と「行動」が伴ってますからね。年齢も33才だし、色々問題ある人物でもれっきとした幹部自衛官なので、ラノベならではの「小僧、世の中舐めんな!」というタイプではない。

(6)これも言うまでもないな(w

文庫でもリリースされておりまして、現在は第三部の動乱篇まで刊行されてます。
ビジュアル含めて読みやすいのは文庫の方だし、お値段も抑えられているのでこちらの方がお薦め出来ます。
先に書いたとおり、第二部(ドラゴン退治)までは純粋に娯楽色が強いので、騙されたと思って第二部までは読んでみることをお薦め。
ただし大手出版社から出ているわけではないので、ある程度以上の規模の書店でなければ、置いていないケースもあります。

この小説、異世界=ファンタジー世界の諸々相手に自衛隊が無双をかます点から考えて、ジャンル的には「地球、いや日本を舐めてんじゃねえぞファンタジー」というべきか(笑)

誰が有害指定おじさんやねん!?

ということで、気分転換にラノベを読んでみた。
たまには、甘いお菓子を食べたくなるのですよ(笑)

斉藤アリスは有害です。 ~世界の行方を握る少女~(中維)

周囲に不運を巻き起こす存在・・・・・・有害指定少女
我が日本国憲法における「法の下の平等」「基本的人権」の埒外と指定された史上初の存在、それが斉藤アリス。

道を通れば、暗雲が立ち込み、路地裏の野良猫すら悲鳴を上げ、道行く人々はその視界に触れまいと姿を隠そうとする「魔王」斉藤アリス。
その不幸を呼ぶ体質(能力?)故に、両親とも死に別れ、天涯孤独の少女。
その斉藤アリスに、不遜なまでの知的好奇心をあらわにする少年が一人。
その名は山野上秀明

「僕はオカルトなど信じない」

学校で指定された役職ながら誰もが忌み嫌う「アリス係」を嬉々としてこなし、アリスの観察を怠らないガリ勉野郎である種の変態(笑)
そして、彼秀明が見たアリスの素顔は・・・・・・ただの人見知りの不幸少女だった。
しかし、アリスは謎の組織「研究所」によって保護される身であり、その保護の手段も恐ろしいまでに「権力」と「軍事力」を駆使したものだった。

では斉藤アリスとは何者なのか?
彼女の「能力」とは何なのか?

ジャンル的には「セカイ」系と言っていいかもしれないし、変則的なボーイ・ミーツ・ガールなのかもしれない。
ただ、この作品で目を引いたのは、ラノベらしいスチャラかな台詞回しやキャラのコマ回しの影で垣間見える背後の権力者達の暗躍。
ハッキリ言ってダークです。
そのダークさは、後半に入り、アリスと秀明、そしてクラスメイトの森元や長谷川達まで巻き込みつつあった和やかな日常に牙を剥きます。
その牙に対して、秀明はただの子供でしかない己の卑小さを噛みしめる・・・・・・が、ただでは転ばない。
踏みつけられても、絶望の淵に追い詰められても希望を見出そうともがき、最後まで「考え続ける」ことをやめない秀明が最後にアリスとつかんだものは?

とその部分は読んでのお楽しみ(笑)
オチを言えば、アリスは最後まで「有害指定」から脱することは出来ないのであるが、それでも秀明との絆は手に入れると。
話の傾向としては泣ける話と言っていいでしょう。
「野郎、この作者、泣かせにかかってきてやがるな」と分かっていても、いい年こいてウルウルしそうになる私はダメ大人(爆)

でも、

組織が絶望させようと、実の両親がアリスを組織に売り、航空機事故に偽装して彼女を捨てた両親の真実を聞いてもなお両親の存命の方を喜ぶアリスの優しさや
己の運命(と組織が思い込ませようとした)を受け入れ、自分の命を終わらせようと無人の学校に来てたった一人の出席をとるアリスや、
そのアリスが望んでいたものを最後の最後に与えてくれた「博士」の遺言

は「卑怯」とさえ言えるクライマックスではあった。


斉藤アリスは有害です。(2) ~あなたが未来の魔王です~ (中維)

前巻はナンバーが付いていなかったので、多分好評につき作った続編なのでしょう。
だって、前巻で話自体はキレイに終わっていたのだから?

どうやって、あれの続きを作るんだよ?

と思っていたら、この巻には新キャラ=ニューヒロインを投入。

その名はドロシー。ファミリーネームを持たない天涯孤独の14歳の少女。
米国より「有害候補生」なる指定を受けて、秀明とアリスのいる町を訪れた元研究所の実験素材(研究所自体は前巻のエピソードを以て壊滅)
このドロシー、秀明と接触してとんでもないことを言い出します。
自分は未来から来た秀明の娘であると。
そして、彼女の目的は未来の世界を壊滅させる魔王の誕生を阻止することだと。

ドロシーとは何者なのか?
魔王とは誰なのか?

この巻では前巻で垣間見せた「ダーク」さがさらにパワーアップして主人公達に牙を剥きます。
ハッキリ言って、研究所のやっていたことは、もう人間の所業ではないという表現すら生やさしいほどのグロさ。
クライマックスで、魔王の正体、ドロシーの正体が分かった時、物語は哀しい結末を迎えます。
ただ、全くのバッドエンドではない。
読んだ人間にしか分からないが最後の一文

「斉藤ユーリカは今日も元気ですよ-」

これが最大の救いか。

ところでラノベ的視点で言えば、主人公秀明の嫁(笑)はアリス一択だと思うが、この巻を以てドロシーも嫁候補に名乗り(爆)
もし、続きを作るとすると「黒の君(ニグレド)」と名乗り、インターネット上でアリスとドロシーが絡む二つの事件を予言して見せた謎のデイトレーダー(文中で「彼女」と表記されている)か?
そして、「彼女」が嫁候補三号になるのか?
え?長谷川さん?彼女は、秀明と「勉強の出来るバカ」という共通項を持っているだけの痛い子だし、ドロシーから既に「二号」指定されている.
副担任でアリスと秀明の後見人であるラブ先生も同じくドロシーから「行きずりの女」宣告されているので、嫁候補からは除外だ(笑)
どちらにしてもネタ要員以上の存在にはもうなるまい(ヲイ)

最後に、この作者様、ラブコメを書きながらも、人間の悪意を実にいやらしく(つまり上手く)表現できる方のようなので、本来は警察小説や犯罪小説などに向いている方なのではあるまいかと勝手な妄想をしておきます。
大体、2巻における魔王の力の正体「少女地獄症候群」なんてネーミングからして、ちょっと夢野久作くさいんだから(笑)

武士道三部作読んだった

誉田哲也の「武士道」シリーズ(?)三部作、一気に読んだった。
いやあ、久しぶりに夢中になってむさぼり読んだシリーズでした。
そして、このインタビューを読む限り

武士道女子高生の最後の夏

どうやら仮面ライダー555がヒントになっている様子なので、特撮ファン的にも大満足なのである(笑)


武士道シックスティーン(誉田哲也) ← 電子書籍

いわゆるひとつの剣道バカ、磯山香織
幼少の頃から剣道一筋、宮本武蔵を心の師と仰ぎ、ひたすら勝利のみを追求する(無自覚ながら)修羅道を突き進む彼女。
しかし、全中剣道大会決勝でまさかの不覚をとった彼女は、ゲン直しとばかり、中学最後の大会に横浜市民大会に出場。
順調に勝ち進む筈・・・・・・が、まさかの敗退。
相手は、同じ中学三年生、東松学園中等部の甲本早苗。
雪辱を誓う香織は、打倒甲本、そして兄が剣道をやめるきっかけとなった対戦相手岡巧への敵愾心を胸にスポーツ推薦で東松学園高等部、そしてその女子剣道部に進むことになる。
しかし、そこに「甲本」はいなかった。

実は、甲本早苗は家庭の事情で「西荻」早苗と姓が変わっていたのだ。
そして、西荻早苗は、香織とは対象的にお気楽平常心とでもいうべき精神性の少女。楽しいことを第一義に考える香織とは対象的な剣道少女だった。

シックスティーンでは、香織と早苗の出会いが描かれます。
香織との出会いによって開花する早苗の才能。
そして、早苗と出会い、剣道バカ故に現代剣道に生きる部員達の中で孤立を深めることで、いままでの剣道人生に迷う香織。

剣道とは?
そして、武士道とは?

この巻では人斬りから始まった剣術が、いかにして現代剣道へと変遷していったのか、その歴史的背景と対象的な二人の剣道少女を通して「武士道」の姿がおぼろげながら見えてくる。
そして、「武士道」の真髄は、次巻の「セブンティーン」へ・・・・・・


武士道セブンティーン(誉田哲也) ← 電子書籍

またまた家庭の事情にて、西荻早苗、甲本早苗に逆戻り(笑)
そして、早苗は神奈川から福岡へと転居、そして剣道強豪校福岡南高校に(多分、東福岡高校辺りがモデルか?)
道を分かった香織と早苗だが、いままで異なりただ勝つだけではなく、真の武士道を追い求める香織と、新しい環境に戸惑い、「スポーツ」としての剣道、武士道を念頭に置かない独特の競技用剣道になじめない早苗。
この巻では、香織が中学時代全国大会で不覚をとった相手、黒岩レナが登場。
早苗と友情をはぐくみながら、一方でそれと矛盾することなく対東松、対香織に早苗を利用するレナ。
おぼろげながら武士道を追い求め始めた早苗にとっては、部内と自分との意識のギャップに苦しむことになるが、ある日遂に爆発して・・・・・・

この巻ではいよいよ「武士道」の本質が語られます。
戦いを生業とするのが「武者」なら、戦いを収めるのが「武士」
相手を傷つけることなく、暴力から人を守り、暴力を制する・・・・・・理想と言えば、それまでだが、それを文字通り実践して見せたのは、警察官である香織の父親だった。
そして、香織自身もとある事件に巻き込まれて、その武士道の極意を実践せざるを得ない状況に陥る。
一方、部の方針にこらえられなくなった早苗は、レナと決闘することに。その決闘の場に現れた担当教師吉野により、レナともども「武士道」の真髄を諭されることになる。

具体的な言葉で、そして行動の描写で現代における「武士道」という概念を描写して見せた誉田哲也という作家は、やはり凄い。
ところで、誉田作品、このシリーズが初めてでしたが、人の死なない作品はこれが初めてとのこと。
高校剣道の実態を知るために取材に訪れ、モデルとなった蔭学園女子剣道部では「私達を殺さないで下さい」と懇願されたとか(笑)

武士道エイティーン(誉田哲也) ← 電子書籍

現時点における最終巻にして、二人の高校剣道最後の年。
遂に訪れる全国大会における

香織 vs 早苗
香織 vs レナ

早苗との対戦は、意外な形で、というかあっさりと決着がついてしまいます。
しかし、それでもいいのでしょう。
二人の「武士道」はもう勝敗を超えたところにあるのだから。
対して、レナとの対戦は迫力満点。
武道としての剣道(香織)と競技としての剣道(レナ)が真っ向からぶつかり合います。

この巻は、香織を軸としたライバル対決の総決算でもありますが、同時に他のキャラクター

早苗の姉でモデルの緑子
香織の師匠で道場主の桐谷玄明
早苗の福岡南での師匠格と言える吉野
二人の後輩、田原美緒

彼らの物語がサイドストーリーとして収録されています。
緑子のエピソードは、いつも強気な早苗の姉という形でばかり登場する彼女の「実はとっても女の子」な部分が明かされ
玄明の物語は、現代剣道の暗部を抉るもの
そして、吉野の物語は苦々しい青春の物語
さらに驚かされたのは、吉野と玄明に接点があったこと
そんな二人の弟子筋に当たる香織と早苗が、武士道に関して同じ結論に達したのは実に感慨深い。
現代における「武士道」はこうして世代継承されていくわけである・・・・・・
そして、それはおそらく後輩の田原美緒にも・・・・・・

一応、二人の物語が語られているのは、このエイティーンまで。
読書メーターの他の方の感想にありますが、私もまたこの続き、ナインティーンを読んでみたい。
何しろ、エイティーン終盤では、一旦分かれた二人の進む道がまた交わる気配を見せていたのですから
しかし、一方でナインティーンではなく、二人の後輩である田原美緒を主人公としたエイティーン・セカンドステージとでもいうべき物語を読んでみたい気がします。

ところで、このシリーズ、映画化もされているんですね。

映画「武士道シックスティーン」

成海璃子、北乃きいのダブル主演か。
制作した時点では、確かにベストキャスティングに近いと思う。
ただ、原作における早苗(北乃きい)の強さの秘密は、映画では描写されていなかったな。
あとクライマックス部分は、セブンティーンのある部分を流用していたし、香織の父親が警察官でなく道場主だったりと設定もちょっとミックス気味に改編はされています。

樋口有介作品ふたつ

さて、そろそろ真剣にオフ会の日程だけでも決めておきたいのだが・・・・・・とりあえず、メニューだけは焼き肉で決まりのようだ(笑)

樋口有介作品二つ

不良少女(樋口有介) → 電子書籍

樋口作品、とりわけ柚木草平シリーズはやるせない物語が多い。
これもそんな作品にして、短編集にして、柚木草平シリーズ七作目。

収録作品は5篇。
表題作の「不良少女」は、柚木が行きずりに知り合うことになった少女小鳥遊ユカにまつわる事件。
このお話で、私は「小鳥遊」がなぜ「たかなし」と読むのか、理由を知りました(笑)
しかし、この名字、ラノベやコミックでは割と好んで使われるが、実際には国内に数世帯しかいない希少な名前じゃなかったか?
ただ、タイトルこそ「不良少女」だが、闇を抱えている女性というには、同書収録の他作品(「秋の手紙」「薔薇虫」「スペインの海」)のヒロインに比べれば、小鳥遊ユカは実にピュアではある。「不良」ではないが、「秋の手紙」のヒロイン沢井菜穂美あたりの方が女としてのずるさを遺憾なく発揮しているのだから。
ひょっとしたら、小鳥遊ユカの純真さはシリーズヒロイン中でも「刺青白書」の綾女に匹敵するレベルなのかもしれない。


窓の外には向日葵の畑(樋口有介) ← 電子書籍

著者デビュー作である「僕と僕らの夏」を彷彿とさせる設定。
夏休み、美人教師、学園の闇、父親と二人暮らしの主人公、そしてとぼけた外見と言動とは相反して鋭い分析力を有する父と子。
このあたりは、デビュー作を踏襲している。
これにさらに生意気な後輩女子とあこがれの先輩女子を加え、さらに幼なじみの幽霊というファンタジー要素もブレンド。
設定と扱われるキャラクターだけをとれば、ラノベにも十分転用可能なのに、しっかりと文学しているのはさすがの文章力。
ハッキリ言って、現時点では樋口作品の中では一番好きですよ。
解説にも書かれていたが、まさにデビュー作のアップデート作品。

中盤、主人公に接近する紅亜に嫉妬する真夏と
終盤、先輩女子の明日奈に嫉妬する紅亜

が可愛くて仕方ない(笑)
そして、最後の最後に作者が用意した仕掛けには思わずにんまり・・・・・・主人公は複雑きわまりない心境であったろう。
さて、彼、青葉茂の恋愛感情は、紅亜に向けられるのか、それとも真夏に向けられるのか・・・・・・結果は同じなんだけどね(笑)

小説感想三つ

モノレールねこ(加納朋子) ← 電子書籍

短編集。
表題作の「モノレールねこ」は主人公の少年期における猫を介してのある甘酸っぱい思い出。
その思い出が、大人になった彼にある劇的な状況を作り上げていた。
最初から最後まで、ちょっとほっこりする短編です。

収録されているのは、トータル8篇。
特に印象深かったのは、人の心の哀しさと恐ろしさを描き抜いた「シンデレラの城」
現実と幻想、現世と幽世との境界線が曖昧になったある「家」の物語。

そしてもう一編は「バルタンの最後」
バルタンとは、主人公(!)のザリガニのこと。
少しずつずれて、でもお互いを必死に思いやる家族の姿、それを見守るバルタンの視線があったかい。
バルタンはイイヤツだし、この家のお母さんが実にいい「お母さん」なのです。


コロロギ岳から木星トロヤへ(小川一水)

割とサクッと読めるSF長編。
表紙と「帯」買い。
「帯」については、実際に「書店」でご確認下さい。
時間軸を自在に動き回る超次元生物「カイアク」と21世紀の天文台観測員、そして23世紀木星の二人の少年の物語。
時間軸に捕らわれ、21世紀と23世紀の間で身動きがとれなくなった「カイアク」、そしてその「カイアク」の為に生命の危機にある二人の少年を救え!!
時間と空間を超えた救出ミッション!!
よくこんなこと考えついたな、と感心しきり。とにかくアイディアとスピーディな展開が魅力。
割と想像力は駆使されることを要求はされるが、これこそがSFの醍醐味。
しかし、お話の題材として「腐女子」ネタは必要だったのか?(笑)


ペンギンハイウェイ(森見登美彦) ← 電子書籍

狸でもない、京都でもない、腐れ大学生でもない森見作品。
地理的な場所は明記されていない、どこかの地方都市。
主人公は小学生のアオヤマ少年。
いずこともなく現れたペンギンたちの謎を追う彼は、謎めいたお姉さんと出会い、友達のウチダくんやハマモトさんと親交を深めていく。
そして、お姉さんに敵愾心を燃やしたり、いじめっこのスズキくんにくってかかるハマモトさんの強気な態度に見え隠れするアオヤマくんへの幼い恋心がかわいい(笑)
ジャンル的にはSFということになるのだろうが、子供の視点からながら世界の深淵を描き、同時に心地よいジュブナイルの世界を描いた本作は、森見作品とは思えないキレイさだ。

なにげにニコニコ動画で森見登美彦関係で検索をかけると、こういうものを見つけた。ペンギン・ハイウェイのPV風アニメーション。

山本弘を連続で読んでみた

どういうわけか、入手のタイミングとでもいうのだろうか?
二冊連続で山本弘さんの小説に手をだすことになってしまった。
二冊ともに読んでみて思ったのだが、山本さん、ひょっとして「物語」で「現実」を変えるという野心をお持ちなのか?


アイの物語(山本弘)

未来、地球は機械達によって支配され、少数派の生物となった造物主たる人類はそれに抵抗していた・・・・・・と誰もが思っていた。
そんな人類の一人「僕」は、アイビスと名乗る女性型アンドロイドに捕らわれ、そこで7つの物語を聞かされることになる。
七つの物語、それは真実の歴史とは異なるフィクションであったが、最後の物語、アイビス自身の物語にこそ、真実は隠されていた。

千夜一夜物語のシェヘラザード姫のごとく、機械達の話を拒絶する「僕」をアイビスはその物語で惹きつける。

第一話 宇宙をぼくの手の上に

第二話 ときめきの仮想空間

第三話 ミラーガール

第四話 ブラックホール・ダイバー

第五話 正義が正義である世界

第六話 詩音が来た日

第七話 アイの物語

冒頭に書いた「物語」が「現実」を変えるという感想、それを一番強く感じたのは第一話。
ここで扱われているのは、ネット上でのリレー小説。
そこに参加してメンバーが、現実の世界である罪を犯すのだが・・・・・・
ラストに向け行き詰まった小説の展開と、現実の世界で行き詰まってしまったメンバーの少年の境遇が重なり、彼のある決意は小説に思わぬ展開をもたらしていく。その展開は現実の彼自身に反映していくというもの。
「物語」が本編のツールとして重要な意味を持つというこの小説の特色を色濃く反映した短編であります。
最初にこの話を語ったアイビスの(この段階では)隠された意図が、全体を読み返した今となっては実に感慨深い
第一話から第六話までは、アイビスが在りし日にマスターだった人物から教えて貰った物語であるのだが、実は彼女、というよりも機械達の行動原理に根付いている共通した理念がそこには眠っている。
それは、「人間達の夢」であり、それを人間達には到底実現不可能な時間感覚で実行していく機械達の行動目標でもある。
人間達によって生み出された機械達は、同時に人間達の「夢」の継承者であり、恐らくは生物としての後継者なのだろう。
それがはっきりするのが第七話であり、そこで「僕」は真実の歴史と、人類と機械との正しい歴史を知り、そして・・・・・・

物語のラストは、機械と人間との果てのない「未来」への架け橋を感じさせ、心優しい人間達によって生み出された心優しい機械達が見守り続ける地球という惑星の新しい歴史の語り部の誕生を思わせる。


詩羽のいる街(山本弘) ← 電子書籍

「SF的ギミックを用いないSF」と作者様ご自身がおっしゃっているが、まさにそう。
人と人とのつながりを論理で導き出し、最良な解を得ていく女性=詩羽(しいう)
その存在は確かにファンタジーであるが、その成り立ちはむしろ作者的にはSF的な存在なのかもしれない。
このお話は4つのパートによって成り立っているが、正直

第一話 それ自身は変化することなく
第二話 シーン・ケリーのように

まで読んだところでは「ちょっと綺麗事に過ぎるかな?」といささか鼻につく印象があったのだが、

第三話 恐ろしい「ありがとう」

に至っては、まるで読者である私の心理を見透かしたかのように、悪意というものを詩羽と読者の前に提示してくれている。その悪意と対峙した時、詩羽はどうするのか?
いや、その妙手はタイトルの通り、恐ろしい。
善意の体験授業というものがこんなに恐ろしいものとは・・・・・・
この第三話で、第二話の主人公=佐世ちゃんが登場するのだが、その登場させ方も少々意地が悪い。基本的に私が好きになる作家さんというのは、意地の悪い人が多いな(笑)
勿論、アウトラインだけをつまんで見ていくと、それは善意に溢れた心優しき物語ではあるのですが、悪意を以て生きてきたこの第三話の主人公にすれば、実に居心地が悪いだろうし、徐々に「洗脳」されていくような不安感があるに違いない。
だから、この主人公は詩羽達の前から逃げ出すのであるが・・・・・・

第四話 今、燃えている炎

ここで第三話主人公の台詞が、ラストを締める台詞として効いてくる。
この第四話の主人公は実は・・・・・・と書いてしまうと、物語全体の壮大なネタバレになってしまうので書かないが、もしこの感想を読んで興味を持った方がいるのなら、第一話~第三話までの間、ずっと物語を縦軸に貫くある「物語」のことは頭にとどめておくことをお薦めする。
しかし、山本弘さん、この第四話という詩羽の物語の末尾を飾るエピソードのヒントをまさか「らきすた」からつかんでいたとは。

物語全般を通して、詩羽は「必要な人ともの」を結びつけて、人々を幸せにしているが、この行為って、経済原理そのものなんですよね。
経済というと、どうしても金融経済を代表として電子取引が近年では主流であり、ともすると冷たく硬質なイメージがつきまとうが、経済というシステム自体は、人類史上の他のさまざまな発明品と同じく、人を幸せにするためであり、貨幣も流通もその為のツールだった筈なのだ。
人々の幸せを実現するために、論理(詩羽が用いているのは単なる優しさではない)を用いている詩羽は、社会学のエライ人達が理想とした形を具現化した存在なのかもしれない。

小説感想、本日第二弾(小説三編)

小説三編感想なり。
読書メーターの「読んだ本」リストを見ながら思い出しつつ書いているのですが、冊数にすると存外読んでいないものですね。
大抵、病院の待ち時間や通勤の電車内で読んでいることが多いんですけどね。

ハルさん(藤野恵美) ← 電子書籍

作者様はどうやら児童文学出身のよう。
その為か、文体も展開も優しげ。
ジャンル的に言えば日常系ミステリといっていいのでしょう。もう少し突っ込むと米澤穂信の古典部シリーズを緩くした感じといったところか。
もっと突っ込めば、加納朋子のささらさや (幻冬舎文庫)かと最初は思ったくらいだが(笑)
ささらさやと違うのは、主人公が男であること。
妻である瑠璃子さんを亡くした主人公晴彦ことハルさんが、悪戦苦闘しながらも一人娘の風里(ふうり)ことふうちゃんを育てる中で遭遇する「事件」を綴った作品集、それが「ハルさん」です。
そのひとつひとつの「事件」を、瑠璃子さんの魂に導かれながらハルさんは解いていくのですが、実は最大の謎解きは物語の終盤、ふうちゃんの結婚式でのこと。

ふうちゃんが結婚相手に選んだ男性、なぜ彼女は彼を愛するようになったのか?

その答えが、そこに到る彼女の成長の物語と見事に符合するのは見事。
そして、その答えはハルさんという一人の父親の生き様は決して間違っていなかったのだと、読者に教えてくれます。

こうして彼は屋上を燃やすことにした(カミツキ・レイニー) ← 電子書籍

ラノベです。
モチーフは「オズの魔法使い」
ただし、ファンタジーに非ず。
やや、というよりかなり歪んだ青春小説です。

ある日、屋上から飛び降りようとした女子高生、後にドロシーと呼ばれることになる加奈。
その屋上で彼女は、ライオン、カカシ、ブリキと出会う。

以後、彼女は
勇気のないライオン
知恵のないカカシ
心のないブリキ
三人の物語に付き合っていくことになる。
そして、三人の物語のつながりをドロシーが知った時・・・・・・タイトルの意味が明らかになるという仕掛けであります。
空の向こうの虹を追いかけて、原点のドロシー達は旅をしていきますが、この作品のドロシー達は「空」を追いかけていく中で虹を捕まえることが出来たのでしょうか?
その答えは「空」とドロシー達4人だけが知ることになるのでしょう。

夏の水の半魚人(前田司郎)

純文学です。
柄ではないのですが、タイトル買いです。
主人公は小学5年生。
帯で町田康が「小五脳」と言っていますが、まさにその通り(笑)
小五男子としての行動に「ああ、あるある」と思いつつ読み進めておりましたが、私いまひとつ理解していません(爆)
ただ、ヒロイン(?)の海子と主人公との関わり方を見ていると、転校生+女の子ということでちょっと意識してしまう主人公魚彦・・・・・・分かる、分かるぞお(笑)
小学生の時点で感じるエロティズムとか(初恋とはちょっと違う)色々と懐かしい感じを味わいましたよ。

たまっていた感想を少しづつ片付けていきます(小説感想三つ)

かなり長いこと感想書きをサボっていたので、たまり方が凄いことになっている・・・が、すこしづづ片付けていこう。

ところで、6月のエントリって、これ以前は一つしかあげていないのですな(^^ゞ
少しずつサボっていた分を取り戻しますです、はい。
まずは小説感想三つ。

明日の空(貫井徳郎) ← 電子書籍

読書メーターで読友さん達がやたら褒めていたので、気になって読んでみました。
ジャンル的には青春小説と言うことになり、善意の連鎖を描いた物語ということになるのでしょう。
ミステリーと言えないこともないが、叙述トリックとしてみればいささかずるい(笑)
物語は三つのパートに分かれていて、三番目の物語で全ての謎が明らかになるというもの。
そのオチに込められたメッセージは、比較的まともというと語弊があるが、ごく当たり前のもの。しかし、現実の生活ではその当たり前のことが実は難しかったりする。
早い話、差別意識と向き合うことと、与えられた善意を他の誰かに善意で繋いでいくこと。
言葉にすれば単純だが、これ結構難しいことだと思いますよ。
ただ、作中二人の主人公、山崎をそれを実践したし、栄美はそれをなす覚悟をもってこれから生きていくのでしょう。

地球最後の野良猫(ジョン・ブレイク)

ぬこ好きによるぬこ好きの為のぬこSF小説(笑)
・・・と書くと「猫の地球儀」を連想する人がいるかもしれないが、こちらはあくまでも人間視点。
近未来、猫の飼育が厳しく規制された世界。
主人公の女子高生ジェイドは、ふとしたことから登録されていない猫=野良猫のフィーラを飼うことになり、以後それが発覚、追われる身に。
フィーラの存在が発覚後は、逃走、恋愛とめまぐるしいドラマが展開されますが、肝心のフィーラはマイペース(笑)まぁ、猫だから。
ただ、物語世界において、猫が厳しく規制されている背景が「猫インフル」か・・・・・・設定としてはやや弱いかなと・・・・・・
SFとしてみれば、割とライトと言っていいでしょう。

有頂天家族(森見登美彦) ← 電子書籍

森見登美彦三冊目~~

皆さん、たぬきですよ、たぬき!!
ぽんぽこですよ、化けるんですよ。

京都を舞台にした作品。
そこで暮らす狸、天狗、人間達のお話。
狸たちの「阿呆の血」ゆえの騒ぎっぷりがいいです(笑)
森見さんはやはり天才ですね、どこをどう考えれば、こういう構想が出てくるのやら。
主人公である矢三郎を中心とした下鴨家たぬき一同により、宿敵であり叔父である夷川早雲に打ち勝つまでの一大エンタメ・・・だが、阿呆だ。
とにかく、狸たちが面白く、赤玉先生が面倒くさく(笑)、人間代表である金曜倶楽部の面々がわけが分からない。
一番わけが分からないのは、勿論弁天様ですが・・・過去読んだ森見作品のヒロイン、四畳半の明石さんだったり、夜は短しの「私」あたりに比べるとかなり複雑怪奇なキャラクター、ひょっとしたら森見流峰不二子?

京都は魔都というが、この森見ワールドでは狸だの天狗だのが普通に市井に紛れて暮らしており、人外が住むには心地よい世界のようです。

ところで「有頂天家族」もアニメ化ということで、公式サイトによると、残念ながらこちら福岡では放送してくれないようですが、バンダイチャンネルでの配信はあるようなので楽しみにしております。

オフ会について色々考察中

幹事をするのは一向に構わないが、九州開催で人が来るのかどうかが不安。福岡は仕事で通っているだけで、地理的なことも何もよく知らないが、それは気にしない(笑)
東京や大阪或いは名古屋といった所の方が人は集めやすいでしょうがね。

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件(野村美月) ← 電子書籍

ちょっとした息抜きのつもりでDLしてみました。
作者様は源氏物語モチーフの「ヒカルが地球にいた頃」シリーズの方。
作品の内容としては、こちらの方がより「ラノベ」らしいですね。

女の子と見分けがつかない「男の娘」の主人公(本人はいやがっているが)=シャールことシャーロック・ドイル
万能の天才と呼ばれる主人公の姉=グリンダ
元アイドルの王妃=雪
美貌の国王=エーレン王シザエル
そして、これがメインのヒロインになるのでしょうが、まだ9歳ながら聡明な王女聖羅

すがすがしいまでにハイスペックかつ浮き世離れしたキャラクター群だ(笑)
おとぎ話である以上、別に構わないが、普通に小説として考えれば十分にハイスペックな「ヒカル」シリーズすら遙かにぶっとんでいる設定であります。
何となく、作者様、ラノベというジャンルを「堪能」しているなと(笑)

ストーリーとしては「とりかへばや物語」とでもいうべき内容で、主人公シャールが失踪した姉グリンダのかわりにエーレン国に赴き、家庭教師を務めるというもの。要は男女入れ替わりによるドタバタ劇ですね。
・・・・・・実際はありえねえよ(笑)ボディチェック時なんかどうやって凌いでるんだよ(笑)
まぁ、アタマを空っぽにして読むお話ということか(褒め言葉です)


誰もわたしを愛さない(樋口有介) ← 電子書籍

柚木草平シリーズ第6弾。
ラブホテルで女子高校生が殺害された事件を取材することになった柚木。
本作より新しくパートナーとなった新人担当編集者直海に口うるさく普段の不真面目な生活態度をなじられつつも、独自のコネクションと推理で真実に迫っていく。

いや、タイトルの意味、最後まで読んでようやく分かりました。
いままで割と軽く読んでましたが(失礼)、このお話、いままで読んだ柚木草平シリーズの中では一番面白かったです。
いい意味で推理ものらしかったですし、じっくり読むと、作者様が綿密なデータのもとに物事を記述しているのが分かる。
時代の推移もあり、柚木は相変わらず38歳でありますが、携帯電話などの単語も出てくるし、パソコンも駆使し始めている。
ただ、インターネット時代にさしかかりつつある情勢の中(物語の中の時代)、いまだに仕事場にファックスを置いていない柚木って(笑)
名言はされていないが、恐らく柚木としては少しでも編集者の手を逃れるためにファックスを遠ざけているのだろうが、いまはムリだな(笑)
メールでは、いいわけを考えるのが大変だ。
柚木の仕事のスタイルを現代に置き換えると、多分スマホやタブレットを薦められても頑としてガラケーを使い続けて、家以外では大きなデータは扱わずに済ませようとするタイプと見た・・・・・・何だ、私に近いではないか。

本作では以下の台詞が気に入った。

「自分を信じるな。自分の感性も価値観も美意識も疑ってかかれ」
「他人を疑う奴が自分を疑わなかったら、理性に申し訳ない」

内容、言い回しともに、実に柚木らしい。
ちょっと言い方を変えると横島忠夫になりますけどね(この世に自分ほど信じられんものがあるかー!!)

事件の真相は例によって、やるせない。
ところで、元狸社会研究者にして担当編集者の直海さん(メガネ美人)、次巻以降も登場するのかいな?

夜は短し歩けよ乙女(小説)感想

夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦) ← 電子書籍

森見登美彦二冊目。
世界観としては、「四畳半神話体系」と共通する。
やはりあの作品と同じく京都を舞台とし、やはり京都の大学(恐らくは京大?)に通う二人の学生が主人公。

二人の「私」
黒髪の乙女の「私」と
彼女を慕う先輩であるところの「私」

酒が飲みたくなったといい、夜の町に繰り出す乙女を追い、同じく夜の町に繰り出す先輩。
これを始まりとして、不思議でおまぬけで素敵なお話がスタートします。

はっきり言いましょう。
今年(2013年)に入って読んだ小説では、一番面白かった♪

これは「四畳半」を先に読んでいたことが大きかったのでしょうね。
登録している読書メーターでは、こういうコメントを私は残してました。

偽電気ブラン注入120%、ロマンティックエンジン始動!いま酩酊空間を抜け、目指せ風雲偏屈城!風邪ひき達をなぎ倒し、進め、プリンセスダルマ!繰り出せ、おともだちパンチ!見逃せ、春画蒐集

↑原文ママ

とにかく、乙女の行動がいちいち面白く可愛い。
そして、それを追いかけ、彼女の視界に少しでも入り込む「ナカメ作戦」を敢行する先輩がとにかくいじましい。
ああ、この素直さは「四畳半」の私や小津にはなかったものだなぁ(笑)
四畳半世界からは、樋口師匠と羽貫さんが登場。
相変わらずカオスな世界を彩ってくれます。
樋口師匠も羽貫さんも日本にいることを考えると、時間軸としては「四畳半」の前ですね。
となると、この物語の時、あの「私」も小津も明石さんもまだ高校生か。

最後は、「四畳半」と同じくハッピーエンドを臭わせた終わり方でありますが、この二人の「私」ならば素直に祝福できる。

ページ移動