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怖くない怪談(20110630)

怖くない怪談(仮題)、これにて閉幕。
あとは、細部を修正して、HTML化しておしまい!
あ!!タイトルもつけないと!!
さて、この作業、日付が変わらないうちに出来るのかイナバウアー
それは、こういうことですな。

神のみそ汁セカイ

さらに話は変わって・・・

オリックスのマスコットがマジで可愛いとネット上で話題に

私はツバ九郎を許さない!絶対に、だwwww

###########
 周の演奏が終わり、担任の谷村を含めた教員達に説教込みの話を聞かされ、やや疲れた顔で職員室を後にした美月は、その足を音楽室へと向けていた。
 周と友人の優子、そして先程の歌声の主である女の子がいるであろう音楽室。
 その前まで辿り着いた美月であったが、いざ音楽室の扉を眼前にした時、彼女には、その扉を開けようという気は起こらなかった。
 正確には、開けることが出来なかったというべきか。
 美月自身、自覚はないものの、そこに言いようのない怖さを感じてしまっていたからだ。
 その理由はただひとつ。
 (周と優子以外、さっき歌っていた女の子がいたらどうしよう……)
 もし、その少女がいたのなら、彼女は必ず周の側に寄り添っているということになる。
 それを目にすることに抵抗を感じていたのだった。
 美月は、数瞬の迷いを見せつつも、音楽室の扉を前にきびすを返し、自分の教室へと向かっていった。


 教室に戻ると、さすがにもう生徒は誰もいなかった。
 気になったのは、優子の机にも周の机にもカバンは残っていないこと。
 どうやら、美月が行った頃には、二人とも音楽室を出て行った後だったようだ。
 (だったら、少しくらい待ってくれても良いのに……でも、すぐに出ていったと言うことは、特に何もなかったということなのかな?)
 そんな憤りと安堵がない交ぜになった感情をもてあました美月は、机の中の荷物を乱暴にカバンに詰めると、もう生徒は誰一人いない教室を後にした。


 ほぼ無人と言っていい状態の廊下を抜け、上履きから通学用の靴に履き替え、校門に向かって歩き出すと
 「あ、やっと出てきた!」
 美月の姿を見つけて声を上げる優子。
 「職員室で捕まっているんじゃないっての!全く、普段の行いが悪いから……」
 そう言う優子を恨みがましい目で見つめた美月は
 「うるっさい!」と一言文句を言いつつ「だったら、教室で待ってくれていてもよかったじゃない」
 と抗議するが
 「やだ。下手に近くにいたら、巻き添え喰らうじゃない?」
 と悪びれることなく言い放たれてしまった。
 「周、あんたもなの?」
 「僕は南さんにつきあっただけだよ」
 美月の恨み節は周にも矛先が向けられるが、当の周は涼しい顔。こうしたことには慣れっこになってしまっているらしい。
 「うう……まぁ、いいわ……」
 渋々と呟く美月は、まるで振り上げた腕のおろしどころに困ったように顔を伏せ、歩き出し、その後ろを苦笑しつつも周がついていく。
 このいつもの光景を目の当たりにして、優子はその口元に笑みを浮かべると
 「じゃあ、真田君、美月、また週明けに」
 と言い置いて、校門を出たところで二人とは別方向に向かって歩き出す。
 美月と周は、お互いに家が近所同士だが、優子だけは二人とは別の方角に家があるのだった。
 そうした理由で優子と別れた二人は、しばらくの間黙って歩いていたのだが……
 「なぁ、美月」
 「何」
 音楽室の時と違い、今度は下の名前で呼んでも怒られずに済んだ周。
 「職員室で何か収穫あった?」
 「収穫って?」
 「ほら、学校の怪談でネタ探しをするって言っていたじゃないか」
 ああ、そのことかと思った美月の脳裏を掠めたのは、目の前で見た担任教師谷村の涙。
 「別に……何も……」
 その答えの歯切れの悪さに、周は一瞬顔をしかめる。彼なりに、何かを感じたようではあった。
 「何も、これといった話はなかった。それに」
 「それに?」
 「もう、“学校の怪談”ねたはやめたから」
 「そうなの?」
 「そうなの!」
 最後は怒ったように言い放つ美月だったが、対象的に周は安堵した表情。ただ、前を歩く美月にはその表情は見えなかったのだが。
 「怪談話ってさ……あたしも気がつかなかったけれど、その話を聞いて悲しい思いを擦る人もいるんだなって」
 「そうか……」
 美月がそう思った切っ掛けを知らない周ではあるが、彼なりに思うところがあったのだろう。静かに頷きつつも、その表情は柔らかい笑顔で包まれていた。
 「なぁ、美月」
 「何?」
 「帰り、“かめや”に寄らないか。何かおごるよ」
 “かめや”というのは、二人の帰り道にある甘味処である。
 「へえ、珍しい。あんたが寄り道、それも買い食い。しかもおごり」
 「本当に珍しいことみたいに言うなよ……この間もおごっただろう?それともいらない?」
 「そうじゃないけれど……それはいいんだけれど」
 ここで不意に声のトーンは落ち、美月の歩く速度も僅かではあるが落ちた。
 「けれど……何?」
 「周……あの女の子って・・…結局、何なの?」
 「何なのって?何が?」
 「だから、あの“きらきら星”を歌っていた女の子は誰なの?ってこと!」
 声のトーンが再び上がる美月に、最初は驚く周だったが
 「ああ、そのことか……教えてもいいけど……」
 「勿体ぶらずに教えなさいよ」
 「うん、教えるのはいいんだけど……美月、怖い話系は全然ダメだろう?」
 「はぁ?何を言って……」
 と問い詰めようとした美月だったが、ふと何かに気づき
 「ちょっと待って、あんた、それ一体どういう意味?」
 「うん……まぁ、うまく言えないんだけど…・・まぁ、もう“怪談話”のネタにされることもないだろうし……いいや、何だか勘違いされているみたいだから、“かめや”でゆっくり話すよ」
 「ちょっと、“怪談話”って……まさか……」
 いままでの強気な物言いとは対象的なか細い声で呟きつつ、その足が止まる美月。
 「美月、どうしたの?」
 訝しげに聞く周に
 「うるっさい……」
 と言っていることはいつもどおりだが、いつもに比べれば勢いのない答え方をする美月。
 「やっぱり、聞かせてくれなくて良い」
 「えー、聞きたいと言ったのは、美月じゃないか?あー、でも、美月の場合、聞かない方がいいかもね」
 「だから、そういう思わせぶりな言い方、やめなさいよ!わざとよね?わざとやっているのよね?あたしをからかっているのよね?」
 「やだなぁ……こういう時には、本当の話しか僕はしないってこと、美月は知っているだろう?」
 「だから、タチが悪いんじゃない!もういいよ、聞かなくても良い!」
 「自分から聞いてきて……」
 不満そうに言う周の口ぶりを見ていると、美月の中で、聞きたい気持ちと何だか聞いてはいけない気持ちがない交ぜになってせめぎ合う。
 そうした複雑な感情を抱えた美月が押し黙っていると……
 「あ、分った!」
 不意に周が声を上げた。
 「美月、あれだろ?また、夜トイレに行けなくなるのが怖いんだろう?」
 この周の発言により、美月の抱えた複雑な感情に、目の前の幼なじみの鈍感さに対する苛立ちと、さらには気恥ずかしさが混ざり込み、結果として美月は今日という日の中で一番大きな声を上げることになってしまった。


 「うるっさい!」


 二人きりの帰り道、秋の夕暮れ時の中、一番星がきらきらと輝き始めていた。
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怖くない怪談(20110628)

今日のこのエントリでお話に決着がつくと思っていましたが、どうもあと一回は必要なようです。
ここでネタバレをひとつ(笑)

二人の主人公の内、柏崎美月の名前だが、種を明かせば、「美咲シークレット」から
「美咲シークレット」の構想を練っているとき、主人公の名前を美咲にするか美月にするのか、迷ったんですね。
結局、あちらの主人公の名前は美咲となり、美月に関しては、もったいない(?)のでこちらのお話に使わせてもらった次第。
周(あまね)君に関しては、お話の中身は美月をメインに据えると言うことで、「美しい月の周り」ということです。
早い話が美月のおま(自粛)
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 その問いは、周が自分自身に対してしたものであったが、それにも優子は無言で頷く。
 「ねえ、南さん。何があったのか、あの子がなんなのか、僕に分る範囲で教えてもいいけれど、ひとつ約束してくれないかな?」
 唐突に約束を突きつけられ戸惑った優子であるが
 「頼めるよね?」
 静かで、それでいて有無を言わせない周の強い言いように、つい頷いてしまった。
 「頼み事は簡単だよ。いま見たことを誰にも言わないこと。特に美月には、ね」
 黙って頷く優子。
 「美月、あれでかなり怖がりだから、いま南さんが見たことを知ったら、音楽室に入るのも嫌がるようになってしまうから」
 これにも優子は黙って頷くのみ。
 「あいつが音楽室に来るのを嫌がったら、もうあいつに僕のピアノを聞いてもらえなくなるだろ?」
 優子は、これにも頷こうとしたが……
 「え、真田君、ひょっとして、学校でピアノの練習をしているのって、美月に聞いてもらいたいから?」
 周の話を聞いていて、ふと閃いた内容を優子が口にすると
 「だって……」と周は顔を伏せ「僕があいつにいいところ見せられるのって、ピアノくらいなものじゃないか……」と呟いた。
 それを聞いた優子は、暫し呆然とした後
 「ひょっとして、美月と同じピアノ教室で一生懸命練習していたのって、美月にいいところ見せたかったから?いままで頑張っていたのも?」
 と問うと
 「だから、僕にはそれくらいしかいいところ見せられるものってないし……音楽やピアノが好きなのも本当だけれど……」
 とこれまた顔を伏せたまま小声で答える周。
 「何というか……凄いと感心するというか、呆れるというか……でも、やっぱり、それって凄いことなんじゃない?」
 呆れつつも、優子はこの目の前の真田周という少年、周囲からは勝手に天才扱いされている少年を見直していた。勿論、好意を以てのことである。
 「真田君って、ある意味、美月とちょっと似ているところがあるよね」
 「そうかな?」
 「うん。それにちょっと美月が羨ましいかな?」
 「それは……」
 ここで周は何か言いかけて顔を上げたが、すぐにその顔を赤く染めて、また黙り込んでしまった。
 その様子がおかしくて、優子はくすりと小さな笑いをその口元に浮かべた。
 「いいわ。さっきの約束、守ってあげる。勿論、美月にも言わない。あたしは何も見なかった。これでいいんでしょう?」
 「うん、そうしてもらえると助かるよ。変な噂になったりしたらイヤだからね」
 「それはそうでしょうけど……でも、結局さっきの女の子って、何なの?」
 「あの子は……ある意味、僕と同類かな?」
 「同類?」
 「うん、音楽が好きで、歌が好きな女の子。そんな女の子がいたら、ちょっと手助けしてあげたくなるじゃないか?」 
 「それで伴奏をしたというわけ……」
 その問いに頷く周を見て
 (だからといって、幽霊相手に伴奏するというのも凄い話だと思うけど)
 と思ったが、それは口にしないでおく優子である。
 「あの子の得意な歌で、僕が演奏できるのって、さっきの“きらきら星”くらいなものだからね。結局、その伴奏も一回限り。多分、もうあの子は現れないよ」
 「どうして?どうして、そう思うの?」
 「どうしてだろう?」
 言いつつ首を傾げる周であるが
 「どうしてだか、そう思えるんだ」
 そう言う彼の表情は確信に満ちていた。
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怖くない怪談(20110627)

昨日さぼったせいであまり進んでいないぜ(爆)
とりあえず、あと一回くらいのエントリで完結まで持っていきたいが・・・
怖くない怪談(仮題)、いまだにタイトル決まらずorz

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 一方、音楽室……
 勢いよく職員室を飛び出た優子が音楽室に辿り着いた時、周の演奏はもう終わりを迎えようとしていた。
 最後の一音が周の指によって奏でられたその瞬間と、優子が音楽室の扉を静かに開ける動作はほぼ同時。
 だから、優子の視線はまっすぐに周を捉えていたはずだったのだが……
 その視界の中には、彼女の知らない少女の姿があった。
 年齢は美月や優子と同じくらい、おそらくは五年生か六年生の高学年。
 細身の儚げな印象の少女だったが、綺麗に切りそろえられたおかっぱ頭のその顔は、同性の優子をして魅了するほどの晴れやかな笑顔に包まれていた。
 (誰?綺麗な子だけど……)
 疑問に思うと同時に、この少女が先程の歌声の主なのだろうと優子は確信し、音楽室へと一歩を踏み出したのであるが……
 演奏が終わり、静寂に包まれた音楽室に優子の足跡が響いたその瞬間
 周の傍らに笑顔で立っていた少女の姿が、蜃気楼が消えるかのように霧散し、かき消えてしまった。
 晴れやかな笑顔のまま。
 「あ」と優子は思わず声をあげ、その声によって、ようやく周も優子の存在に気づいたのだろう。
 「あれ、南さん?」
 優子の名前を口にした後、周の目に入ったのは優子の大きく口を開けた驚きの表情。
 彼女のその表情と視線の向かう先、その意味に気づいた周は少し困った顔をしていたが……
 「南さん……美月は?」
 「いない……」周の問いにか細い声で答える優子。「まだ職員室……あたし一人……」
 「そうか、それは良かった……」
 ほっとする周はさらに
 「南さん、ひょっとして……見た?」
 と問いかけると、優子は黙って首を縦にふる。
 「その……彼女を?」
 さらに問いを重ねても、優子は首を振って答えるのみ。
 「そうか……まぁ、美月がいなかっただけでも良かったということかな?」
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怖くない怪談(20110625)

さて、すこしでも進めておくか > 怖くない怪談(仮題)
今日は、下書き、ラストまで書ききれるかな・・・

この間、某所チャットにて、私が振った話であるが、小説の記述方式、一人称と三人称、どちらがいいのか?という話題がありまして
書きやすさについては、人それぞれではあるでしょうが、ひとつなるほどと思った意見として

・ハードボイルドを含めたミステリ、推理ものでは、主人公が知っている以上の情報を読者に与えない為、一人称を用いることがある、というもの

私の場合、というより、私の書くモノは、主人公が知り得ないところでも事態が動いていることを表現したいというものもあるので、記述方式は三人称を主体としています。

ところで前回エントリで紹介した「夢色の恋」、i-tunesで購入してしまいましたぜ♪

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 「そうだったんですか?」
 志賀が語ったことは、谷村にしても初めて聞いたのだろう。
 「はい。歌が上手いことで有名な女の子でしたからね。それも、歌謡……いまならポップスというべきかな?そういう系統じゃなくって、本格的に声楽を志していたちょっとませていた女の子。親御さんとご一緒に旅行中に交通事故で……」
 「はい……。その子が好きだったのが、あの“きらきら星”だったんです。何だか、当時の事を思い出してしまったのかしら?」
 「そうだったんですか」
 谷村と志賀の話を聞いて島崎が得心したように呟いた。
 「本当に仲がよろしかったのですな」
 「はい」
 キッパリと答える谷村を見て、美月は少しだけこの目の前にいる自分たちの担任教諭のことを頼もしく、同時に少し羨ましく思った。
 「でも……」とキッパリと答えた後、谷村の声が少しだけ沈む。
 「事故があってから暫くして……」
 「良くない噂が立ってしまってましたね」と谷村の後を継いだのは志賀。
 「誰もいない音楽教室から女の子の歌声が聞こえてくるとか、根も葉もない噂がいつの間にか広まって……まぁ、子供というのは怪談話が好きだから」とちらりと美月を見やる志賀。
 「はい、その声の主が、死んだその子じゃないかって……そんな噂まで流れてました。わたし、それを知って、悔しくて……いえ、幽霊話にその子を使われたことが悔しかったこともありますけど、どうせ出てくるのなら、わたしのいるところに出て欲しいなんて……いま思えば、そんな変なことも考えていましたね」
 そういうものなのか……と美月は、谷村の話を聞きながら漠然と考えていた。美月は、幸い仲の良い人達との死別というものの経験はない。友達、両親は勿論、父方母方ともに祖父母に至るまで健在。
 それでも、やはりこうした人達と死別することになったのなら、それはとても悲しいことだろうし、もしそうした人達のことが幽霊話にされて知らない人達におもしろがられていたとしたら……
 美月は、無言のまま、谷村に向かって頭を下げた。
 いまはそれくらいしか、するべき事を思いつけなかったのだ。
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怖くない怪談(2011/06/22)

うむ、今日はあまり進められなかったorz
それでも、エンディングに向かってかなり近づいてきてはいる……いるといいな……

最近、周回遅れの人生に相応しく、いまさらながら「みつどもえ」を配信で見たんですよ。
いや、石川県某氏の言う通り、単純に「ギャグマンガ」としてみれば、「侵略!イカ娘」よりも「みつどもえ」の方が上だわい。
あの下品さとくだらなさは貴重だ。
ということで、その下品さとくだらなさには似つかわしくない(笑)ED曲。
この曲を歌っている方って、「侵略!イカ娘」EDの「メタメリズム」を作った人なんですね。
製作会社は違えど、秋田書店系のアニメ作品に連続して関わるというのは珍しいのでは?

さて、それではそれほど下品ではない(と思うww)小学生主人公のお話の続きです。

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 「先生……」
 思わず口を開いたものの、あとに続く言葉が出てこない。
 「先生?」
 オウムのように同じ言葉を繰り返す美月の様子とその視線の向かう先に気づき、つられて谷村の異変を目の当たりにした志賀は、慌てて谷村に駆け寄り
 「谷村先生!」
 と大声で呼びかけながら、その細い肩を揺すると、谷村はハッとしたように
 「志賀先生」
 と自分の目の前にいる先輩教諭の名を呼び、次いで目の前にいる美月の顔を見た。
 「先生……」
 その谷村に美月は三度目の呼びかけ。
 「先生、泣いているの?」
 そして、四度目でようやく言うべき言葉を紡ぐことが出来た。
 「泣いている?私が?」
 美月に言われて、自分の頬が濡れていることにようやく気づく谷村。
 「本当……私、泣いていたのね……」
 「谷村先生、どうしたんですか?」
 志賀にやや遅れて、島崎が谷村に近づき、椅子を引いて座るように促した。
 「とにかく、落ち着いて下さい」
 「はい……」
 言われるまま椅子に腰掛ける。
 「まさか、三十過ぎて、学校で泣くことになるなんて思いませんでしたよ」
 照れたような笑いを浮かべつつ、ハンカチで涙を拭う谷村の机の上から、志賀は無言のままマグカップをとる。コーヒーかお茶を入れるつもりなのだろう。
 「いま聞こえた歌……あの歌を聴いていたら、昔のことを思い出してしまって……」
 「昔のこと?」
 島崎が問うのに、谷村は頷き
 「ええ、私……ご存じですよね?私がこの小学校の出身だということ」
 と応じると、島崎は黙ってそれに頷いた。
 「もう二十年前になるけれど……そうね、柏崎さん」
 突然、谷村に名前を呼ばれて驚いた美月は
 「はい?」
 と思わず声を出して応じる。
 「ちょうど、あなたと南さん……真田君でもいいかな?あなた達みたいに、私にもすごく仲の良い子がいたの。声の綺麗な女の子で、歌も凄く上手くって……でも……」
 そこまで言いかけて、言葉につまる谷村だが
 「知ってますよ」
 後を引き継いだのは、コーヒーを淹れたマグカップを持ってきた志賀。
 「事故で亡くなったんですよね……当時、私、この学校にいたんですよ。まだ新前でしたし、谷村先生……当時……旧姓は川崎さん……でしたね。違う学年の、それも副担任という立場でしたから、谷村先生はご存じなかったでしょうが」
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怖くない怪談(20110620)

よし、すこしでも進めておこう。

ところで、きらきら星についてだが・・・
比較的メジャーな曲だと思うが、どういう曲か分るよう、動画を貼り付けておく。

モーツアルトの「きらきら星変奏曲」

歌詞つき

ところで、いまだに正式なタイトルを思いつかない(爆)
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 「“天才”ってことだけで済まされたら……あいつの頑張りが可哀想すぎます!」
 その美月の声が合図になったかのように、先程よりも一際高く、ピアノの音が職員室に飛び込んできた。
 「何だか……」
 飛び込んできた音色に、優子の口がおぼつかないながらも動く。それは彼女の意思からすら離れた反射的な行為だったのかもしれない。
 「さっきとまでとは何か違う」
 彼女の言葉を裏付けるかのように、教師三人を含めたその場にいた者たちはみな一様に押し黙ってしまっていた。
 その束の間の沈黙を支配しているのは、ピアノの音と……


 きらきらひかる おそらのほしよ
 まばたきしては みんなをみてる
 きらきらひかる おそらのほしよ

 「歌?女の子の声?」
 美月を含めその場にいた者達が皆一様に顔を見合わせる。
 「誰の声?きれいな歌声だが……四組の原田……いや、違うな。あの子も歌声が綺麗だが、違う」
 島崎など、必死に記憶をまさぐっているようだったが、このベテラン教師の記憶の中にもいま聞こえている歌声の主は存在しないようだ。そして、そうした戸惑いに一同が包まれている間にも、歌とそれに追随する周のピアノは続いていく。


 きらきらひかる おそらのほしよ
 みんなのうたが とどくといいな
 きらきらひかる おそらのほしよ


 ほんの短い歌詞と歌声。
 それでも、一同はその歌声に聞き入ってしまっていた。
 歌声とピアノの音がやんでからもしばらくは……。
 「知らない女の子の歌……周が……あいつが、女の子の伴奏を?したの?」
 その沈黙の中、最初に声を発したのは美月。
 いつも強気な彼女には似合わない不安な表情を隠さないその姿を目の当たりにして、優子は跳ねるように振り向くと、スライド式の職員室の戸を勢いよく開けた。
 「あたし、見てくる!」
 そう言いおくと、優子の姿はあっという間に一同の視界の外に。
 取り残された美月は、一瞬だけその後を追いかけるような仕草を見せたが、すぐにその動きを止めた。
 怖かったのだ。
 「周が……あたしの知らない女の子といる……の?」
 何よりも、そうした光景を目にするのが怖かったのだ。
 「柏崎?」
 美月の異変に気づいて、担任の谷村ではなく志賀が声をかけてきた。
 「どうした?」
 その声で、はっと我に返った美月が顔をあげると……
 担任の谷村が、呆然と立ち尽くして、大粒の涙を流していた。
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怖くない怪談(20110618)

さて、怖くない怪談、ようやく最終局面に近づいてきました。
で、その前にブログらしく日常の話など・・・

本日、クリーニングの受取りついでに書店にて「乙嫁語り」三巻を入手

中央アジアを舞台にした物語。
執拗なまでに描写し尽くされた背景と装飾の数々・・・何よりもキャラクターが愛すべき人物揃い。
創作者を自認する以上、愛されるキャラを何とか生み出したいものですね。

一方で最近「Zガンダム」を見直しまして・・・
いや、お付き合いのある某氏と、シャア=ダメ人間説で盛り上がったことがあったのですが(笑)
あのシリーズの主役級キャラ、特にパイロット組って、結構「有能なダメ人間」が多いのでは?とか
ただ、アムロやシャアは、自分がダメ人間であることを自覚している節があるのですがね。
実際、シャアはシリーズ通して「道化を演じている」といった台詞をよく呟いていますし。
で、ここまで語ったわけはですね・・・・・・

パプティマス・シロッコって、極めつけに自分が道化である自覚がないなと(笑)

アムロやシャアに迷いが多いように見えるのは、見方を変えれば、自分が矢面に立つことは道化を演じることにしかならない。
だから、彼らは「逆襲のシャア」まで表舞台からは身を退いていたという見方をすればですよ・・・

彼らよりも(恐らくは)能力の劣るシロッコが無自覚に道化を演じている様は、哀れを誘うものがあるなと・・・

かなり暴走気味に妄想を働かせつつ見ていると、シロッコが哀れなキャラにも思えてくる不思議。
で、ちょっと興味を持ったのは・・・

Zのあの世界で、アムロとシャアが本気になったとしたら、シロッコはどういうポジションに落ち着くのだろうかと

ダラダラした話が続きましたが、「怖くない怪談」続きです。
13号や美咲は無論のこと、今作の美月や周のこと、少しでもかわいがって頂けると、とても嬉しい♪
##############
 「じゃあ、何で、怪談なんか?」
 と島崎、志賀、谷村の三人が声を揃えるのに、美月は顔を真っ赤にしてうつむく。
 「いや、その……たまには、ちょっと違う内容で記事を組もうかなって……」
 美月がそう言うのに、
 「だからって、自分が駄目なものを……柏崎さん、また、思いつきだけで突っ走ったでしょう?」
 谷村の詩的はあまりにも図星過ぎて、美月は何も言い返せない。
 「あなたって、行動力はあるけれど……もう少し、考えてから動く習慣を身につけなさい」
 「はい……」
 思いもよらぬ形で説教を受けることになった美月は、素直に頭を下げつつも納得がいかない顔。幸い、その表情は顔を伏せていたために、教師達からは見えなかったが……
 そうしたやりとりが美月と谷村の間でかわされている間に、先程まで流れていたピアノの音がぴたりとやんだ。
 「おや?」と島崎。「さすがに今日はもう練習は打ち止めかな?」
 「天才は気まぐれということですかね?」
 志賀がそう軽口を叩くのに、美月だけは顔をしかめる。そして、彼女は音楽室から聞こえるピアノの音、周が奏でるピアノが最後に響かせた一音にイヤと言うほど、聞き覚えがあったのだった。
 「そうですね。打ち止めです……」
 誰に問われることもなく美月は呟く。
 「練習はもう終わり。多分、これから本気の演奏が始まります」
 美月の言う意味が一瞬理解出来なかったのだろう。教師達は一様に顔を見合わせる。
 「それと志賀先生」
 唖然とする一同の中、美月は教師の一人、志賀を見据え
 「あいつを……周を……真田君のことを“天才”の一言で済ませるのはやめて下さい」
 「え?」
 再度呆然とする一同。
 「ちょっと、美月、やめなさいってば」
 異変を察した優子が後ろから腕を引くが、それを振り払い、美月は顔を上げ、意を決して声を上げた。
 「“天才”ってことだけで済まされたら……あいつの頑張りが可哀想すぎます!」
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怖くない怪談(20110616)

今日は仕事帰りに、こんなものを買ってしまいました。

ジェリー・アンダースン特撮SF DVDコレクション

サンダーバードは至る所で見かけるが、「謎の円盤UFO」って存外見かけないので(汗

さて、行き当たりばったりで書いてきた「怖くない怪談(仮題」
ようやく、オチが見え始めてきた(見切り発車だったんですw)

###########
 一方、職員室では濃いお茶をすすりながら呟いたのは、教員の一人島崎。
 「おっ?三組の真田、今日は気合いが入ってますな」
 「まったくです。」と頷くのは、同じく教員の志賀。
 どちらも、五十代半ば過ぎの男性教諭である。
 「谷村先生、真田、最近同じ曲ばかり弾いているようですが、近々コンテストでもあるんですか?」
 と志賀が問うた相手は、女性教師、谷村。
 美月や優子、周の担任で、年齢的には三十代に差し掛かったばかりで、職員室の中では比較的若い教師だ。
 「さあ、私は何も……。彼、割と好き勝手にやってますよ。手がかからないといえばかからないんですけど。この前コンテストに出た時もいきなりでしたし」
 「天才故の気まぐれというヤツですかね?」
 湯飲みを持ったまま、島崎が笑うのに、谷村はお付き合いの曖昧な愛想笑い。実際、谷村は周に対して、特別指導のようなことはしていない為、彼の功績が職員室で話題になることには、若干忸怩たる思いもあるのだ。
 「失礼します!」
 そんな三人が歓談する場に、一際大きな声。
 美月である。
 「何だ、柏崎、まだ残っていたのか?」
 志賀がそういぶかしげに尋ねるのに
 「学校新聞ですよ。柏崎さん、新聞部ですから」
 と谷村が助け船を出す。
 「そうよね、柏崎さん」
 「はい」
 別に嘘でも何でもないので、美月はこれまた元気に答える。
 「だから、今日は取材に来ました」
 「取材?何だ、イケメン教師とかで俺を取材に来たのか?」
 と軽口を叩くのはこれまた志賀だったが
 「いいえ、違います」
 あっさりと否定する美月。
 その美月の肘を優子が軽くつつきつつ小声で
 「バカ、少しは気を遣いなさいよ」
 というが、美月はきょとんとした顔。
 「柏崎……」
 そんな二人を見つつ、志賀は苦笑。
 「お前、少しは取材対象に気を遣うと言うこと、憶えておいた方がいいぞ」
 その志賀の言葉に、谷村はさらに苦笑。
 「小学生に無茶なこと、言わないで下さい」
 志賀に一言言うと、谷村は美月に向き直し
 「それで、取材って……何を聞きたいの?」
 「学校の怪談です?」
 この美月の言に、三人は一瞬呆然となるが……
 「柏崎……そのカイダンというのは、あれか?ラフカディオ・ハーンの怪談の怪談か?」
 「ラフカディオ・ハーンって誰ですか?」
 島崎が問うたのに、美月は意味が分らず聞き直すが
 「ハーンで分らなければ……小泉八雲で分らないか?」
 さらに言い直されても、美月には意味が通じず、彼女はただ首を傾げるばかり。
 「お岩さんとかお菊さんとかの話を書いた人だよ」
 ここで先程と同じくまた優子が小声で囁くが
 「南、番長皿屋敷も四谷怪談も小泉八雲の作ではないぞ」
 呆れた顔で訂正を入れる島崎。
 「まったく……お前ら、新聞部だというなら、もう少し本を読んでおけ」
 「ははは……」
 美月も優子も笑って誤魔化すのが精一杯。その二人に助け船を出したのは、またしても谷村。
 「まぁまぁ、島崎先生……でも、二人とも怪談を新聞でどう扱いたいのか知らないけれど、小泉八雲の“怪談”くらいは目を通しておいて方がいいわよ」
 但し、一言釘を刺すのは忘れない。
 「あー、先生、それ、あたしはともかく、美月……柏崎さんは無理だと思います」
 「あら、南さん、どうしてそう思うの?」
 「だって、柏崎さん」と優子はちらりと美月を見て
 「怖い話、全然ダメな人なんです」
#############

怖くない怪談(20110615)

さて、続けられる内に・・・

この下書き、一応カテゴリー編集したので

下書きもどき > 怖くない怪談1

というサイドメニューリンクを使えば、(アップしている限りで)まとめ読みが可能です。

########
 問題は第四変奏。
 真田周は、その細い指を慎重に動かしていく。
 以前、演奏した時はここで引っかかったのだ。
 (これじゃ、“彼女”も満足してくれないよな)
 今日は徹底的にこの部分を克服しようと決めていた。いや、今日こそは最後まで上手に弾けそうな気がする。
 (よし!うまくクリアした!)
 ピアノの奏でる音と自らの指の動きに神経を集中させつつも、周は会心の笑みをこぼす。そのまま第五変奏へとなだれ込もうとしたその時
 「周!」
 見知った声が彼の名前を呼ぶ。
 周は振り返り、その見知った声の主の姿を視界に捉えると、ふっと口元を緩めた。
 「美月。どうした?居残りか?」
 「なんでそう思う?っていうか、下の名前で呼ぶな」
 抗議する美月に
 「あんたが先に下の名前で呼んでるじゃない……」
 と同行した優子は呆れ顔。
 「じゃあ、柏崎さんってことで……南さんも色々苦労しているな」
 美月の態度に苦笑しつつ、周は傍らの優子に話しかける。
 「真田君がピアノに夢中なんで、色々とご機嫌斜めなのよ。何とかして」
 「あんた何言ってんの!?」
 拝むような手ぶりを交えつつもからかうような口調の優子に、美月はかみつくかのような勢いで抗議。
 「だって~、本当のことでしょ?」
 その抗議にわざとらしく語尾を伸ばして抗弁する優子を見て、周は「ははは」と屈託のない笑い声をたてる。
 「もう!あんたまで、何笑ってんの!?あんたもからかわれているんだってば!」
 「え、そうなの?」
 「もういい!!」
 本気で驚いている周を見て、頬を膨らませた美月はぷいっと横を向くと、横で優子がこれまた困ったように頬をかく。
 (しまった、やりすぎた……)
 言葉以上に優子の表情がそう物語っているのを読み取り、周は苦笑しつつも、
 「ところで二人とも学校に残ってどうしたの?学校新聞の準備か何か?」
 と出した助け船に
 「そうそう、そうなの!」
 と飛びつく優子は、一歩前に出て
 「真田君、誰よりも音楽室には出入りするでしょ?だから、聞いてみたいことがあったの?」
 と本題の用件を口に出す。
 「聞きたいこと?僕に?学校新聞に関係することなんだよね?何だろ」
 「うん、まぁ、これは美月のアイディアなんだけど……」
 と美月の顔を立てるように話を進めようとするが、肝心の美月はまだ横を向いたまま。
 「学校の怪談とか七不思議とかよく言うじゃない?そういう話が、この学校にもないかなって、それで音楽室のことなら真田君が詳しいから、何か聞き出せないかなって……」
 「ああ、そういうことか」
 優子の説明に周は納得した表情を浮かべたが、
 「でも、困ったな……」
 その表情はすぐに曇った。本当に困っているようだった。
 「え、何が?」
 と食いつくのは優子。横を向いたままの美月も、ちらりと周に視線を注ぐ。
 「困ったって、どういうこと?」
 「う~ん……何というか……」
 言いよどむ周の視線は、ピアノの脇に一旦注がれるが
 「ははは……」
 すぐに誤魔化すような笑い声をたてる。
 「何?」
 「いや、南さん……その……正直に言って……」
 「正直に言って?」
 「……何もないんだ」
 「あれ?」
 拍子抜けして思わず声をあげる優子。
 「何も?」
 「そう何も……」
 「全然?」
 「全然」
 三人の間に沈黙がおりる。
 その間、周の視線はちらちらとピアノの脇に。
 「あー、もう!」
 最初にその沈黙を破ったのは、美月。
 「こんなことだろうと思った。周に聞いたって、ろくな話、聞き出せるわけないんだから!最初に言ったとおりでしょ?さぁ、さっさと本命の職員室に行くよ、優子!」
 そう言い放つと、本当にくるりと周に背を向けて、一人早歩きで音楽室を去ろうとする。
 「ちょっと待ってよ、美月」
 慌てて後を追う優子。
 「大体、真田君に話を聞こうと言い出したのは、美月じゃない!」
 「うるっさい!」


 美月と優子が出て行ったことで一気に静かになった音楽室。
 「全く、美月のやつ、相変わらずだな……」
 二人がいた時には見せなかった柔らかい笑みを浮かべ、その視線をピアノの脇へと移す。
 「でも、これでやっと静かになったね」
 言いつつ、周は一旦ピアノの鍵盤に向き合うが、またすぐにその視線はピアノの脇に。
 「ごめんね、でも……美月、本当はいい子なんだよ……それに……」
 言いかけて、周はくすりとまた小さな笑いをその口元に浮かべた。
 「あいつ、あんなだけど、本当は凄い恐がりなんだ。本当の事なんて言えないよ」
 今度こそ本当にその指先はピアノの鍵盤に。
「さあ、途中で止まったけれど、第5変奏からまた……そうしたら、一息入れて、今度こそ通しで行ってみようか。今日こそ、“君”が満足するような演奏が出来る気がするんだ」
 そして、その指はしなやかな曲線を描きつつ、ピアノの鍵盤に。
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怖くない怪談(20110614)

ところでこのお話の登場人物の名前、美月と周だけは意味があったりなかったり……

あと、私はやっぱり「会話劇」という進め方が好きなんだなと再認識。これも若い頃、落語に関わったせいかいな?(笑)
落語といえば、最近志ん朝師匠のDVDを見まして、やっぱり良いですな♪

しかし、最近
・落語
・ほむほむ
・イカちゃん
・小説
etc
と我ながら手を広げすぎだ(笑)
仕事が忙しくなってくると、逃避する先が増えて困るぜ(爆)

この「怖くない怪談(目標)」も、クラシックの「きらきら星変奏曲」をモチーフにしているが、クラシック曲をモチーフに江戸時代の長屋を舞台にした話って作れないかな?とも・・・
分る人だけ分ればいいが(最近、この種の書き方多いなw)落語の「たらちね」みたいなやつ♪
「たらちね」を知らない人は、ぐぐ(略

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 「そういえば……」
 ただし、その沈黙も長くは続かず、再び優子が口を開く。
 「真田君、いま音楽室、一人なのかな?」
 「そうじゃない?あいつくらいになると、いちいち先生がついていること、逆に少ないし……」
 「よく一人で音楽室に籠もっていられるよね」
 「あいつの場合は、音楽やピアノが好きだから……」
 「そうじゃなくて!」
 「?」
 「音楽室に一人で居て、怖くないのかな?ってこと」
 「どういうこと?」
 「音楽室ってさ、よく学校の怪談とか、七不思議とかあるじゃない?」
 「あー!」
 優子の意図を察し、美月は声をあげた。
 「あるね。ベートーヴェンの肖像画の視線が変わっているとか、夜中になったらピアノの音がするとか……」
 「でしょう?あたし、そういうの、すぐ想像しちゃうんだ」
 「あーあ、おもしろ半分の噂に振り回されおって……」
 「あんたが言うか……」
 「でも、そういうのを追いかけるのも面白いかもね。みんな興味を持つかも」
 「ちょっと待て!あんた、さっき何て言った?」
 優子の抗議を聞き流しつつ、美月はノートを広げると白紙のページに、三人ほどの人の名前を列記する。
 「谷村、志賀、島崎……何、これ先生の名前じゃない?」
 「志賀先生と島崎先生は、この学校に長くいる先生。で、谷村先生はこの小学校の卒業生」
 「谷村先生って、そうなんだ」
 「担任でもあるし、聞きやすいのは谷村先生かな?この中じゃ一番若いし、何しろ女の先生だし」
 「聞くって……まさか……」
 「そう、学校の怪談」
 「本気なの?」
 「勿論」
 美月の返答を聞くや、優子は大きくため息をつく。
 「まぁ、あんた、行動力だけはあるから本当に何か聞き出しちゃうんでしょうけど……よくやるよね」
 「何が?」
 「あんた、怖い話全然ダメじゃない。へたれの癖に、そういう話が好きなんて……」
 「ヘタレって言うな!」
 「あたしが言いたいのは、性格が面倒くさいってこと……」
 「うるっさい!とにかく行くよ」
 「職員室に?」
 「ほかにどこに?……あ、ついでに音楽室にも行ってみるか?周のやつ、音楽室に入り浸っているから、あんたがさっき言っていた音楽室にまつわる話、何か知っているかも」
 「それだけ?」
 周の名前を自分から出した美月に優子は興味深げな視線を投げる。
 「そ・れ・だ・け!行くよ!」
 「はい、はい」
 一人早歩きで先を行こうとする美月の後を、優子は仕方ないといった体で頷きながらついて行った。
#######

怖くない怪談

美咲シークレットを正式にスタートさせたことで、13号ちゃんプロジェクトにおける主人公に対してのネクストジェネレーション三人の内、秋月志乃と一条美咲のお披露目は終わり。あとは予告していた最後の一人、村雨未来の登場・・・ただし、彼女の場合は本当に最終局面での登場となるため、彼女が姿を現す時は本篇が終焉を迎える時・・・
さて、いつその状況に辿り着くのやら。

一方でこういうものにも手をつけている。

某所チャットで、某氏が怪談嫌いなのを知り、ふと思いついた(何でだ)
ゆえに、某所向けのクラシックテーマ作品に仕上げられないか試行錯誤。
コンセプトとしては、「怖くない怪談」
タイトルは例によって、未定(笑)
始まりはこんな感じか?

###########
 「ネタがない……」
 柏崎美月は悩んでいた。
 「来月のネタがない……」
 それは美月にとってはとても深刻な悩みだった。
 美月は、小学六年生。学校新聞を発行する新聞クラブに所属している。
 その彼女の頭を悩ませているのは、来月発行する新聞記事の内容だった。
 「正直、先生の紹介とか、他のクラブの活動報告とか……そういうのって、もう飽き飽きなのよね」
 蝉の鳴き声が聞こえる窓を背にして身振り手振りで主張する美月に、友人の南優子は嘆息する。
 「美月……“そういうもの”を取り上げるのが、学校新聞というものじゃないの?」
 「はっ!」
 優子の意見を美月は鼻息荒く一蹴。
 「そんなの、知った事じゃない!」
 「じゃあ、あんた、何で学校新聞に関わってんのよ……」
 「何か、面白いネタが拾えるかと思って」
 「あんた、新聞と女性週刊誌、ごちゃまぜにしているんじゃないの?」
 優子の次なる意見に対しては
 「あーあ、何か面白いネタ、転がっていないかな?」
 とまるで聞いていないようなそぶり。
 「結局、あんたって、人の話なんか聞いていないのよね」
 いつもの美月の態度に、優子が二度目の嘆息を漏らした時、


 ピアノの音が聞こえてきた。


 「あれ?これ、弾いているのって……」
 優子がそう呟いた瞬間、美月の顔が曇った。
 「真田君じゃない?土曜日だから、音楽室のピアノ、午後から使わせてもらっているのかしら?」
 「あいつ以外にはいないでしょ?」
 真田という名前を聞いた途端、美月は苦々しく「あいつ」と呼んだ。
 「そういえば、美月って、真田君とはずっと一緒だったんだよね?」
 「そう」
 美月の憮然とした表情は変わらない。
 「周(あまね)とは幼稚園からずっと……小学校に上がってからもずっと同じクラス」
 「だよね。真田君って、ピアノ上手だし、今度コンテストに出るんだっけ?いいよね、ピアノ弾ける人って」
 「あたしだって……」
 「あたしだって、何?」
 「あたしだって、小さい頃は周と一緒のピアノ教室に通ってたんだから。というより、あいつ、あたしの後で教室に入ってきたし」
 「でも、いまは?」
 「うるっさい!」
 「ははは……美月は、周君が自分よりずっと上手くなったのがお気に召さないんだ。ついでに言うと、密かにクラスの女子に人気があるのも気に入らないんじゃないの?」
 優子の軽口に美月はつきあわず、ぷいっと横を向く。
 これには優子も苦笑。また、美月が静かになったこともあって、少しの間、音楽室から漏れ聞こえるピアノの音に耳を澄ませていたのだが、ふと首を傾げる。
 「真田君、何を弾いているのかな?何だか、聞いたことのある曲なんだけど……彼、こんな曲弾くの、初めてじゃない?」
 「“きらきら星変奏曲”、モーツアルトだよ」
 「よく、すぐに曲名が出てくるね」
 「あいつ、本当はバロックやクラシックより現代音楽に近い方が好きな筈なんだけど……多分、コンテストの課題曲じゃないかな?」
 「あーっ!モーツアルトって言われると、そんな感じ(コンテスト)がする!」
 「昔から、こつこつと一人で練習するのが好きなやつだったしね」
 「さすがによくご存じで……」
 「うるっさい!」
 「あんた、答えにつまったら、いつもそれじゃん」
 美月は、これに対し何か言い返そうとしたようだったが、返す言葉が見つからず、ぐっと黙り込んだ。
 その間、沈黙した二人の耳に入ってくるのは、グラウンドで遊んでいるらしい生徒達の歓声とまたしてもピアノの音だけ。
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