怪談話の習作です。
言ってみれば、前回のサイト更新でアップした「若堀くん番外編(1)」のダークサイド。
相変わらず中身がないのはご愛嬌だwwww
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恩返しの機織りを始めて何日経ったのだろう?
彼は、わたしの部屋を覗いてくれない。
だから、わたしは織り続ける。
そうして、機織りが終わり、自分で言うのも変な話だが、見事な機が織れたと思う。
彼は大層喜んでくれたし、実際、市場に持っていくと、高い値段で商人に引き取ってもらえた。
それが切っ掛けで、わたしは仮の宿でなく、正式に妻として彼の元に嫁ぐことになった。
平凡で退屈な日々。
最初に抱いていた僅かばかりの彼に対するわたしの愛情も冷めていき、同時に彼のわたしに対する愛情もそうなっていった。
働き者の夫婦連れ……そうした周囲の評判も同じようにして崩れていく。
彼は、いつしか私の機織りの稼ぎを当てに寝て暮らすようになり、わたしもただ生活の為、二人の間に出来た子供たちの為だけに機を織り、市場に通う日々。
そうして、わたしも彼も年老いていった。
先に息を引き取ったのは彼の方。
そして、その数年後にはわたし。
恩返しの為に若い娘に姿を変えた鶴が、老夫婦に機織りの姿を覗かれ、正体を明かした後、飛び去ったのはよく知られた昔話。
では、最後まで正体を明かすことがなかった場合、機織りの姿を覗かれることが最後までなかった場合、どうなるのだろう?
息を引き取った筈のわたしは、足に激痛を感じて目を覚ます。
鶴の姿で泣き叫ぶわたしを見ているのは、あの男。
わたしの足を挟み、激痛を与えているのは、猟師の仕掛けた罠。
あの男、死別した筈の夫であるあの男は、若い姿でわたしを見ると、その罠を外してくれた。
ああ、これでまた恩返しに赴かなくては行けなくなった。
完成しない昔話は、完成するまで繰り返される。
何度、この繰り返しを続ければいい?
何度、繰り返せば、彼はわたしの機織り姿を覗いてくれるのだろう?
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