美咲シークレットを正式にスタートさせたことで、13号ちゃんプロジェクトにおける主人公に対してのネクストジェネレーション三人の内、秋月志乃と一条美咲のお披露目は終わり。あとは予告していた最後の一人、村雨未来の登場・・・ただし、彼女の場合は本当に最終局面での登場となるため、彼女が姿を現す時は本篇が終焉を迎える時・・・
さて、いつその状況に辿り着くのやら。
一方でこういうものにも手をつけている。
某所チャットで、某氏が怪談嫌いなのを知り、ふと思いついた(何でだ)
ゆえに、某所向けのクラシックテーマ作品に仕上げられないか試行錯誤。
コンセプトとしては、「怖くない怪談」
タイトルは例によって、未定(笑)
始まりはこんな感じか?
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「ネタがない……」
柏崎美月は悩んでいた。
「来月のネタがない……」
それは美月にとってはとても深刻な悩みだった。
美月は、小学六年生。学校新聞を発行する新聞クラブに所属している。
その彼女の頭を悩ませているのは、来月発行する新聞記事の内容だった。
「正直、先生の紹介とか、他のクラブの活動報告とか……そういうのって、もう飽き飽きなのよね」
蝉の鳴き声が聞こえる窓を背にして身振り手振りで主張する美月に、友人の南優子は嘆息する。
「美月……“そういうもの”を取り上げるのが、学校新聞というものじゃないの?」
「はっ!」
優子の意見を美月は鼻息荒く一蹴。
「そんなの、知った事じゃない!」
「じゃあ、あんた、何で学校新聞に関わってんのよ……」
「何か、面白いネタが拾えるかと思って」
「あんた、新聞と女性週刊誌、ごちゃまぜにしているんじゃないの?」
優子の次なる意見に対しては
「あーあ、何か面白いネタ、転がっていないかな?」
とまるで聞いていないようなそぶり。
「結局、あんたって、人の話なんか聞いていないのよね」
いつもの美月の態度に、優子が二度目の嘆息を漏らした時、
ピアノの音が聞こえてきた。
「あれ?これ、弾いているのって……」
優子がそう呟いた瞬間、美月の顔が曇った。
「真田君じゃない?土曜日だから、音楽室のピアノ、午後から使わせてもらっているのかしら?」
「あいつ以外にはいないでしょ?」
真田という名前を聞いた途端、美月は苦々しく「あいつ」と呼んだ。
「そういえば、美月って、真田君とはずっと一緒だったんだよね?」
「そう」
美月の憮然とした表情は変わらない。
「周(あまね)とは幼稚園からずっと……小学校に上がってからもずっと同じクラス」
「だよね。真田君って、ピアノ上手だし、今度コンテストに出るんだっけ?いいよね、ピアノ弾ける人って」
「あたしだって……」
「あたしだって、何?」
「あたしだって、小さい頃は周と一緒のピアノ教室に通ってたんだから。というより、あいつ、あたしの後で教室に入ってきたし」
「でも、いまは?」
「うるっさい!」
「ははは……美月は、周君が自分よりずっと上手くなったのがお気に召さないんだ。ついでに言うと、密かにクラスの女子に人気があるのも気に入らないんじゃないの?」
優子の軽口に美月はつきあわず、ぷいっと横を向く。
これには優子も苦笑。また、美月が静かになったこともあって、少しの間、音楽室から漏れ聞こえるピアノの音に耳を澄ませていたのだが、ふと首を傾げる。
「真田君、何を弾いているのかな?何だか、聞いたことのある曲なんだけど……彼、こんな曲弾くの、初めてじゃない?」
「“きらきら星変奏曲”、モーツアルトだよ」
「よく、すぐに曲名が出てくるね」
「あいつ、本当はバロックやクラシックより現代音楽に近い方が好きな筈なんだけど……多分、コンテストの課題曲じゃないかな?」
「あーっ!モーツアルトって言われると、そんな感じ(コンテスト)がする!」
「昔から、こつこつと一人で練習するのが好きなやつだったしね」
「さすがによくご存じで……」
「うるっさい!」
「あんた、答えにつまったら、いつもそれじゃん」
美月は、これに対し何か言い返そうとしたようだったが、返す言葉が見つからず、ぐっと黙り込んだ。
その間、沈黙した二人の耳に入ってくるのは、グラウンドで遊んでいるらしい生徒達の歓声とまたしてもピアノの音だけ。
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